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41. 浮気の基準
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朝、通知音で起きて目が開かないまま手だけでスマホを探る。手を無造作に動かす間、葉大がいないだとか俺はいつ寝たんだとか回らない頭で考える。やっと探り当てたスマホをつけると、自分のものではないロック画面と見慣れないアイコンで自分のものではないことがすぐに分かった。本来ならすぐに画面を伏して二度寝したいところだが、知らない名前に女のアイコン、その内容に視線が釘付けになる。
『全然平気だった!笑こちらこそこないだはありがとう!葉大くんいないとしんどいから治ったんならよかったよ~。また来週からよろしくね』
…こないだ。こないだってなんだ?葉大くんて距離近くないか。よろしくすんな。ていうか誰だ。内容からして一方的に送られたものでないことくらいわかる。何をして何を言ったらこんな連絡くんの?モヤモヤとした感情が湧き上がってくる。
愛されている自覚はある。中学から好きとか本当だと思うし、俺が一番なことは節々から伝わる。葉大が浮気をするとは思えないし、思わない。…でも、これはわからない。こういうのは変に思考する前に本人に確認したほうがいい。葉大が浮気なんてするわけない。
「…ッつう…」
起き上がろうとすると腰も痛いし体も重い。こんな時に限ってと腹が立つ。無様に転がっている間にどんどんと不快な考えが浮かび上がってくる。
そもそもあいつの浮気の基準ってなんだ?デートしたら?肉体関係を持ったら?…あいつセフレいたくらいだしその辺緩そうなのが怖い。「女は抱いたけど好きなのは久だけだから浮気じゃない。オナニーと一緒って言ったじゃん」とか言いかねない。全然別じゃない。そんなことを言われたら手が出そうだ。ていうか今も女を抱きたくなるのか?いい店を知っていてデート慣れることにもムカついてきた。
このままベッドの上でダンゴムシになっているわけにはいかないと意を決して起き上がる。大丈夫。葉大が俺の嫌がることをするわけがない。深呼吸し、頭の中で何度もその言葉を繰り返す。ドアノブに手をかけようと腕を伸ばしたところで勝手に扉が開いて葉大と鉢合わせる形になった。
「久、おはよ。体は……?」
「お前、これ何」
葉大にスマホの画面を向ける。自分でも思っていたより強い語気になってしまって口から出た声音にひやりとする。でも、もう言葉は戻せない。フォローするようなことを言える余裕もないことにその時はじめて気づいた。
「ああ、バイトの人。シフト代わってもらってたからその連絡して…。これは紛らわしいな、ごめん」
開かれたトーク画面には聞いた通りの内容の会話のやりとりがあった。スクロールして見せてくれた過去のやりとりもバイトに関することだけだった。
「他も見る?久が思ったような関係のはもうとっくに消してるよ」
「いや、いい。疑ったわけじゃ……ごめん動揺した」
なんてことないようにスマホの画面を向けてくるそのあっけなさにぞわぞわとした不快感が抜けていく。
「…お前の浮気の基準ってどこ?」
「んー、他の人と二人きりの時に俺のこと考えなかったり俺以外と特別を感じたりしたら浮気…かな。あんまり制限したくないし二人で出掛けるとかは流石に知りたいけど」
なんだその曖昧な答えは。極論、女とあれやそれやしても「ずっと久のこと考えてたし久だけが特別だから浮気じゃないよ?これはなんだって?オナニーオナニー!」が通用するってことか?なんて屁理屈が頭の中を駆け巡る。
「言っとくけど!俺からしたら他の奴とデートしたり、えっちなことしたりは完全アウトだからな。忘れんなよ…」
「んなの当たり前。久以外としたいと思わないし、久こそ俺以外とするとか絶対だめ」
「……。……俺のこと好きな間も遊んでたくせに」
また余計なことを言った。我ながら面倒くさすぎる。過去は過去だ。わかっているのに、今更変えられないことは言わないように気を付けていたのに今日はなぜか抑えが利かない。一言謝って言葉を取り下げることすらできなくてどうしようもないまま視線を逸らす。
「ッ……、ごめん久、本当あの時は血迷ってて。もう二度と久以外としない。もう逆に久以外無理だし久としたことしか思い出さないよ。めちゃくちゃ好きです。久以外興味ない。俺もう久のこと抱けるのに今更他なんて抱けない、俺が無理。…ごめん、久怒ってたのに…真剣なのに、やきもち焼いてると思うと…ごめ………好き。大好き、ちゅっ…ちゅーしていい?」
申し訳なさそうな顔からの百面相に言葉にならなかったヤキモキした感情も馬鹿馬鹿しくなってくる。
「いいよ、好きなだけ抱けよ、俺だけをな」
「はい…。その、遠慮なく」
唇を重ねるうちにすっと背後にまわった手に腰が跳ねる。跳ねて鈍い痛みが全身に響いた。
「いっ…!…っ」
「え?何、イクの?」
「イかねーよ!真顔でボケんな!お前のせいで腰痛いの!」
突然のボケに思わずツッコミをしてしまった。きょとんとしていた顔がみるみる眉尻を下げていく。
「ごめん、湿布持ってくるから待ってて。俺のせいで…」
そこまで言ってからしょんぼりと下がっていた眉や口元がじわりと緩む。考えていることなんてすぐにわかった。余計なことを言うなよという視線を送る。じぃっと見つめ返される目が微かに熱を帯びている。
「いや…本当に昨日は久から来てくれたのがめちゃくちゃ嬉しくて、…次はちゃんと抑えるからまたして?お願い、久」
「…お前次第」
「頑張る」
『全然平気だった!笑こちらこそこないだはありがとう!葉大くんいないとしんどいから治ったんならよかったよ~。また来週からよろしくね』
…こないだ。こないだってなんだ?葉大くんて距離近くないか。よろしくすんな。ていうか誰だ。内容からして一方的に送られたものでないことくらいわかる。何をして何を言ったらこんな連絡くんの?モヤモヤとした感情が湧き上がってくる。
愛されている自覚はある。中学から好きとか本当だと思うし、俺が一番なことは節々から伝わる。葉大が浮気をするとは思えないし、思わない。…でも、これはわからない。こういうのは変に思考する前に本人に確認したほうがいい。葉大が浮気なんてするわけない。
「…ッつう…」
起き上がろうとすると腰も痛いし体も重い。こんな時に限ってと腹が立つ。無様に転がっている間にどんどんと不快な考えが浮かび上がってくる。
そもそもあいつの浮気の基準ってなんだ?デートしたら?肉体関係を持ったら?…あいつセフレいたくらいだしその辺緩そうなのが怖い。「女は抱いたけど好きなのは久だけだから浮気じゃない。オナニーと一緒って言ったじゃん」とか言いかねない。全然別じゃない。そんなことを言われたら手が出そうだ。ていうか今も女を抱きたくなるのか?いい店を知っていてデート慣れることにもムカついてきた。
このままベッドの上でダンゴムシになっているわけにはいかないと意を決して起き上がる。大丈夫。葉大が俺の嫌がることをするわけがない。深呼吸し、頭の中で何度もその言葉を繰り返す。ドアノブに手をかけようと腕を伸ばしたところで勝手に扉が開いて葉大と鉢合わせる形になった。
「久、おはよ。体は……?」
「お前、これ何」
葉大にスマホの画面を向ける。自分でも思っていたより強い語気になってしまって口から出た声音にひやりとする。でも、もう言葉は戻せない。フォローするようなことを言える余裕もないことにその時はじめて気づいた。
「ああ、バイトの人。シフト代わってもらってたからその連絡して…。これは紛らわしいな、ごめん」
開かれたトーク画面には聞いた通りの内容の会話のやりとりがあった。スクロールして見せてくれた過去のやりとりもバイトに関することだけだった。
「他も見る?久が思ったような関係のはもうとっくに消してるよ」
「いや、いい。疑ったわけじゃ……ごめん動揺した」
なんてことないようにスマホの画面を向けてくるそのあっけなさにぞわぞわとした不快感が抜けていく。
「…お前の浮気の基準ってどこ?」
「んー、他の人と二人きりの時に俺のこと考えなかったり俺以外と特別を感じたりしたら浮気…かな。あんまり制限したくないし二人で出掛けるとかは流石に知りたいけど」
なんだその曖昧な答えは。極論、女とあれやそれやしても「ずっと久のこと考えてたし久だけが特別だから浮気じゃないよ?これはなんだって?オナニーオナニー!」が通用するってことか?なんて屁理屈が頭の中を駆け巡る。
「言っとくけど!俺からしたら他の奴とデートしたり、えっちなことしたりは完全アウトだからな。忘れんなよ…」
「んなの当たり前。久以外としたいと思わないし、久こそ俺以外とするとか絶対だめ」
「……。……俺のこと好きな間も遊んでたくせに」
また余計なことを言った。我ながら面倒くさすぎる。過去は過去だ。わかっているのに、今更変えられないことは言わないように気を付けていたのに今日はなぜか抑えが利かない。一言謝って言葉を取り下げることすらできなくてどうしようもないまま視線を逸らす。
「ッ……、ごめん久、本当あの時は血迷ってて。もう二度と久以外としない。もう逆に久以外無理だし久としたことしか思い出さないよ。めちゃくちゃ好きです。久以外興味ない。俺もう久のこと抱けるのに今更他なんて抱けない、俺が無理。…ごめん、久怒ってたのに…真剣なのに、やきもち焼いてると思うと…ごめ………好き。大好き、ちゅっ…ちゅーしていい?」
申し訳なさそうな顔からの百面相に言葉にならなかったヤキモキした感情も馬鹿馬鹿しくなってくる。
「いいよ、好きなだけ抱けよ、俺だけをな」
「はい…。その、遠慮なく」
唇を重ねるうちにすっと背後にまわった手に腰が跳ねる。跳ねて鈍い痛みが全身に響いた。
「いっ…!…っ」
「え?何、イクの?」
「イかねーよ!真顔でボケんな!お前のせいで腰痛いの!」
突然のボケに思わずツッコミをしてしまった。きょとんとしていた顔がみるみる眉尻を下げていく。
「ごめん、湿布持ってくるから待ってて。俺のせいで…」
そこまで言ってからしょんぼりと下がっていた眉や口元がじわりと緩む。考えていることなんてすぐにわかった。余計なことを言うなよという視線を送る。じぃっと見つめ返される目が微かに熱を帯びている。
「いや…本当に昨日は久から来てくれたのがめちゃくちゃ嬉しくて、…次はちゃんと抑えるからまたして?お願い、久」
「…お前次第」
「頑張る」
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