【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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61. 思い出

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 何事もなくあっという間に地元に着き、俺は葉大の家の玄関で葉大父と対峙していた。

「おお、久君!久しぶりだな。最後に会った時こんな小っちゃかったけどでっかくなったなー。俺のこと覚えてる?」

 ああ、優しそうだ。助かった。
 葉大の父さんの手の位置からして思っていたより会ったのは久しぶりらしい。

「お久しぶりです。その、…覚えてます。」
「お父さん。立ち話もなんだし、あがってもらいましょうよ」
「ああっ、そうだな」

 「どうぞどうぞ」と慣れた家の中を通される。いつもと同じ部屋、同じ椅子なのにバクバクと跳ねる心臓の音がおさえられなかった。だが、そんな俺の緊張とは裏腹に穏やかな時間が流れていく。


 はじめはガチガチに緊張して変なことも言った気がするが、ごく自然に流れていく空気が心地よくて少しずつ力が抜けていった。隣で嬉しそうにしている葉大に俺まで嬉しくなってこの光景はずっと忘れないのだろうと思った。

「ほら見て~。ふたりが帰ってくる前にお父さんと見てたの。久くんも結構写ってるのよ」
「ふたり揃ってるのがたしかこの辺だったか」

 そう言って見せられたのは、広げられたページいっぱいに写真が入っているアルバムだった。パラパラめくられた先には、甚平を着てカメラに向かってピースをしている幼い俺たちの写真があった。園児の時のだ。この日のことは断片的にぼんやりと覚えている。同じ園の子どもたちと集まって線香花火をしたんだったか。

 次のページにはお遊戯会で王様の冠をかぶる子供たちが5人ほど写っていた。右から2番目が葉大で写真の左端に魔法使いの俺が写り込んでいる。

 めくるたび微かに記憶が蘇ったり見たことのない写真に笑みがこぼれたり、たまにはこうしてわいわいと思い出を振り返るのも悪くない。

 最後のページは中学修学旅行の晩飯の時に撮られたであろう俺とのツーショットで締めくくられていた。後半になるにつれ俺の出現率が異様に高かった気がするし、半ば自分のアルバムを見ていた気分だ。

「高校以降のは?」
「あー…あんまある気しないけど、叔母さんちにあるかも」
「ねえ、こっち向いてみてちょうだい。…あ!いい!ちょっとそのまま!そのままにしていて!」

 その声にアルバムへと落としていた視線をあげると、ハッとした顔をして葉大母がスマホのカメラを構えた。

「あっ、俺もわかったぞ。ほら葉、ピースしてみなさい」
「なに?」

 そう言いつつピースする葉大に釣られて俺もピースをすると「久くんはそのまま」と言われてしまった。そっと手をもとの位置に戻す。パシャリとシャッター音がするとふたりは顔を見合わせてうんうんと頷くと、得意げにスマホをアルバムの横に並べる。

「ほら見て!場所は違うけど再現写真みたいじゃない~?」
「まさにじゃないか?」

 表情や置いてあるものに違いはあるものの、位置や角度はほとんど同じで思わず「おお」と呟くと葉大の声とかぶって、横からふっと息の抜けるような笑い声が聞こえた。

「これ印刷して隣に並べとこう」
「他にもできそうなの探して今度やろうぜ」
「いいわね、楽しそう!…そうだ。私もふたりと写真が撮りたいんだけどいいかしら」

 「もちろん」と頷くと葉大とよく似た笑みを浮かべながらそわそわと俺たちの横へと並んだ。

「俺が撮ろうか」
「何言ってるの!あなたも入るの!ほら、せっかくなんだから」

 撮った写真は葉大に共有してもらった。写真の中の俺は緊張であまりうまく笑えていなかったけど、そんなこと気にならないくらいにはこの写真が好きだと思った。
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