俺と部長をカップリングしないでください!

イツキカズラ

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 翌日。

 オフィスに入ると俺のデスクの前で淵上さんと見たことのない男性が談笑しているのが見えた。

 きっとあの人が田山さんの言っていた俺の教育係に違いない。

 あんなイケメン、関わりがなくても同じ職場にいれば気がつくだろう。


 すらりとした長身で甘いマスクの爽やかイケメン。淵上さんと話しているのを見るに人当たりもよさそうだ。…加えて俺の教育係。


 まずい、どう考えても淵上さんの餌食だ。

 もう予想はできる。

 今日、淵上さんの脳内で俺は教育という名のエロいことをあのイケメンにされているのだろう…。


 (できることなら近づかずこのまま帰りたい…)


 そう思ってノロノロと歩いていると、イケメンが俺に気付いた。

「小野寺くん?」

 イケメンは声帯までイケてるのか。
 部長も渋くて良い声をしているし…。これはもう淵上さんの妄想は確定で始まっている。

「はい、はじめまして。小野寺進です。よろしくお願いします。……えっと」
 (名前、なんだったっけ…)


 昨日聞いたはずだけれど、淵上さんの妄想があまりにも強烈でそれしか覚えていない。

「瀬野です。小野寺君の教育担当です。風邪こじらせて出遅れちゃったけどこれからよろしく」

 差し出された手を握って握手をした。

 そのにこやかな笑みには裏もない。よかった。


「瀬川さん。よろしくお願いします」

 (教育は瀬野くんに任せたけど、君の調教は私以外にはさせない)
 (あっ…部長…っ、どこ触って…っ!)
 (ほら、視界を奪うと他の感覚が敏感になるだろう…?)

 聞こえてきた心の声に、ちらりと淵上さんへ視線をやる。

 (この人、平然とした顔でまた俺と部長を…!!)

「まだ始まったばかりだけど会社どう?もうほとんど挨拶とかした感じ?」

 瀬野さんの声に一瞬逸れた意識を戻す。

 (んっ、部長…っ!おれぇ…っ)

「…みなさん優しいですし、少しずつ慣れてきました。仕事はまだまだ覚えていかないといけないので頑張ります」

 また俺と部長なのかと多少驚いたが、流石にこうも連日聞いていれば多少慣れてくる。

 というか、スルーできなければ俺が変なやつ扱いされて終わりだ。

 



 どうにか平静を保って瀬野さんとの会話を終えることができた。

 淵上さんの心の声の主張が強すぎて瀬野さんの心の声はまともに聞こえなかったが優しい人だったのは間違いない。
 今度こそ本当にまともな人だと安堵する。

 瀬野さんも心の声ではとんでもないことを言っているタイプだったら俺はもうここでやっていけなかったかもしれない。

 でも、あの人もどこかで淵上さんのネタになっていると思うと恐ろしい。

「教育係、瀬野さんなんだ。よかったね。彼優秀だし学べることも多いと思う」
(ち、違います…っ、あの人はただの教育係でえっちなこと教えてくれるのは部長だけ…ですから…)

「はい」
(この人よく妄想しながら喋れんな…)

 俺はなんとか笑顔を取り繕って答えた。
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