俺と部長をカップリングしないでください!

イツキカズラ

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 飲み会の店では俺は無事、部長から遠く離れた席に座ることができていた。

 別に部長が嫌いなわけではないが、淵上さんの目があると思うと過度な接触は避けたい。

 淵上さんとも心の声が聞こえない程度には遠い。

(今日は楽しめそうだ…!)


 これを機に色んな人と仲を深めるぞ、と気合いを入れ、俺は意気揚々とビールで乾杯した。



 だんだんと席移動をする人も増えてきた。はじめは緊張したが、普段あまり会話する機会のない人との話もなかなか楽しい。

 酒がまわってきてより陽気な気持ちになってくる。


 淵上さんの妄想を聞くこともなく、順調に俺は飲み会を楽しんでいた。


「ここ、座っていいかな?」

 ふいに耳に飛び込んできた渋い柔らかな声にドキリと心臓が跳ねる。

「あっ、部長…!もちろん!」

 バッと顔を部長のほうに向けると、柔らかな笑みが視界いっぱいに広がる。

 ー水沢部長は優しげな笑みを浮かべ、進を見つめた。まるでその愛を伝えるかのように…。

 ふいに頭の中で再生された声に自分で驚く。思わず淵上さんの位置を確かめる。しかし、彼女は間違っても聞こえないような距離に座っている。

 今、淵上さんの声が聞こえるはずなんてないのに…。


 動転して、気を取り直そうとジョッキに手を伸ばすと今度はジョッキを持つ部長の手ごと掴んでしまった。

「…っ!?」

「はは、これは私のだよ。小野寺くんのはこっち」

「す、すすすみません!」

 思わず重ねてしまった手へと視線を向ける。挙動不審にワタワタとし始めた俺にも部長は「大丈夫、お酒はあまり飲まないのかい」なんて優しく話しかけてくれる。
 
 それなのに…

 ー手と手が絡み、進はゴクリと唾をのみ込んだ。いつもは自身をイイトコロをトントンと刺激するその指先が今は形を確かめるようにスルスルと進の手を優しくなぞる。


「顔が赤いけど大丈夫かい?水飲んだほうがいいよ」

 部長の端正な顔が俺を覗き込む。その距離に俺の顔は更に赤く、熱くなっていく。

「あっ、ありがとうございます…」


 いけない、このままでは淵上さんの妄想に飲み込まれてしまう。

 

 そう自身を律したはずなのに、その後も部長が笑うと、肩に手が触れると…、なにかあるたびにイマジナリー淵上さんの妄想が頭の中をめぐって、いやでも部長を意識させてくる。
 

 結局その日、俺は淵上さんの妄想に翻弄され続けた。

「二次会だって。小野寺くんも行くかい?」

「…はいっ、その…水沢部長ともっと話したいです」


 部長にそんな気がないのは心の声からもわかる。


 それなのに、こんなに意識してしまうのは酒の……いや、淵上さんのせいだ。
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