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しおりを挟む「今日からお世話になります。小野寺進です!よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします。淵上です。デスク隣だし困ったことがあれば遠慮なく相談してね」
(まともそうな子でよかった~)
(俺もまともそうな人が隣でよかった~)
にこやかに微笑む女性に俺はほっと安堵して席に着く。
物心ついた時から近くにいる人の心が読めてしまうので、どんな人が働いているのかと心配で昨夜は眠れなかったほどだが、蓋を開けてみれば穏やかな人ばかりだった。
たまに初対面から内心悪口のオンパレードの人もいて、そういう人といるのはかなり疲れる。
距離をとればいいとわかっていても会社ではそうはいかないだろう。
だけど、ここに来るまでにたくさんの人とすれ違ったが妙な言葉は聞こえてこなかった。
せっかく第一志望の会社に入れたんだし、ここで頑張っていきたい。
(あ、部長)
渡されたマニュアルに目を通していると、ふと淵上さんの心の声が聞こえた。
先程まで誰もいなかった部長席のほうに視線を向ける。
綺麗に整えられた髪、スマートでオーダーメイドらしきスーツがよく似合っていて、表情までが成熟した大人の魅力に溢れた、いかにも仕事ができそうなおじさん…、いわゆるイケオジが俺を見ていた。
席まで案内してくれた田山さんに呼ばれてあわてて俺は席を立った。
目の前に立つとなんだかいい香りまでして、イケオジという言葉はこの人のためにあるんじゃないかとすら思えてくる。
「こちら、今日から出社の小野寺くんです。そしてこちらは水沢部長。この部屋で一場偉い人です」
「小野寺進です!よろしくお願いします!」
「うちの部へようこそ、小野寺君。初日で緊張してるだろうけど、あまり肩の力を入れすぎないようにね」
(今年ももうそんな時期か、早いなぁ)
「はい!ありがとうございます」
部長も優しそうだ。
「そういえば小野寺君はA大出身なんだって?実は私もそこの出身でね…」
話を聞いてみると、大学だけではなくサークルまで同じだったらしい。
ちょっとした挨拶だったはずが話が弾んでそこそこ話し込んでしまった。
「いやぁ、君を迎えられて嬉しいよ」
部長は大層俺を気に入ってくれたらしい。緊張で張り裂けそうだった心臓も部長の心からの言葉に明るくなる。
「こちらこそ、ここで働けて本当に嬉しいです。俺、精一杯頑張ります!」
「ははっ、無理は禁物だ。まずは初日頑張ってね」
トントンと背中を叩いて水沢部長は仕事へと戻っていった。
俺も自分の席に戻ろうと、踵を返すと淵上さんと目が合う。
この距離では心の声は聞こえない。
それでもニコリと笑ってくれたのを見て、俺は客観的に見ても上手くやれていたのだと嬉しくなった。
この会社でなら俺は平穏を保てる!
…そう思ったのに、
俺の平穏はこの初日で幕を閉じた。
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