触れる唇(短編詰め合わせ)

イツキカズラ

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触れる唇(物語中盤)

触れる唇⑤

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 ※時空飛びます。

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ー付き合ってから1週間後ー



 葉大宅。ソファでだらりと怠惰を謳歌していると左横に座っていた葉大が膝立ちになって俺の右側にあるリモコンに手を伸ばす。支えを失った俺は背もたれへと体重をかけ直した。

「番組違うのにしていい?」

「ん。俺観てない」

 葉大が前を遮切ったことで俺に影が落ちる。見覚えのある景色に数週間前の記憶が甦った。あの日のことを思い出すとじわりと体に熱がたまる気がする。

「葉」

「ん?」

「お前がめちゃくちゃしつこかった日あったじゃん」

「しつこかった…?」

 葉大がピンときていない顔で首をかしげる。

「や、お前はいつもしつこいけど。…ここで触ってきた日あっただろ」
 
「あぁ、あの時。ごめん」

 俺は背もたれに預けていた体を動かし、申し訳無さそうに眉を下げた葉大に寄りかかった。

「別に嫌じゃねーけど…あん時、お前いじわるだった。止めてきたり…やめてくんなかったり。でも普段そういうことしないだろ」

「まあ」 

 何か言おうと言葉を紡いだところに小さく問いかける。

「本当はああいうプレイが好きなわけ?」

 一瞬向けた視線の先で目が合ってしまってすぐに前を向き直した。数秒の沈黙の後、ふっと葉大が笑った。正確には笑ったかなんてわからない。ただ、そんな気配がした。

「いや、あの時は久が俺から離れようとするからつい…」

「んなことしてない」

「好きな人いるって言ったでしょ」

「…お前のことだろ。離れようとしてない」

 断固として言い返すと、パチパチと瞬きをした葉大が溢すように可愛い、と呟いて唇を啄んだ。ほんの数センチ先に近づけたままの目は熱を孕んでいるように見える。

「俺は久のこと気持ちよくするのが好き。だから無理させたり嫌がることしたりはしたくないよ、あの時はごめん」

「別に、嫌だったなんて言ってないだろ。…本当に全然…嫌じゃない」

 しどろもどろになって、なんて言葉を紡げばいいかわからなくて視線が泳ぐ。

 嫌じゃなかった。あの時はただそれ以上好きになるのが怖かった。終わりの見えない快感に落ちていく自分が怖かった。無事付き合えた今では、葉大に愛されるのは心地良い。俺を求める唇も、愛でる言葉も、触れる手も自分じゃどうしようもないほど蕩かされるのだって好きだ。

「だから……その………んっ」

 言葉選びにまごついていると顎を支えられて唇が触れる。その甘い感触を受け入れる。ぴちゃぴちゃと響く音となぞられる耳の感覚、絡む舌の動きに何も考えられなくなる。柔らかい葉大の舌を夢中で追いかけた。

「…風呂入ろっか」
 
「ん」

 一足先に立ち上がった葉大に手を伸ばす。

「久がもうだめって言うまでしていい?」

「わざわざ聞いてくんな」

 好きにしろよ、と口元で呟いて握られた手に力を込めた。

 
 
 

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