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はじめに:平穏な生活の終わり
しおりを挟む目が覚めると冷たく暗い場所にいた。しんとした部屋の中、どこからか母に助けを求める子どもの泣き喚く声が響いている。
おかしい。僕は日向ぼっこをしていたはずだ。その上、暗くてなにも見えない。なにか動物に捕まってしまったのだろうか?
ここがどこかもわからず、その悲痛な叫びにつられて胸がざわざわする。
…でも僕は皆を救うような強い男になるんだ、昔、僕を助けてくれた彼のように。だから泣き喚くわけにはいかない。強い心を持たなくちゃ、と深呼吸をした。
「今助けに行くから待ってろっ!」
声を頼りに暗闇を進む。しかし、反響していて方向がよくわからない。それでも諦めてはいけないと進み続ける。
「へぶっ」
何かに格子状のものに顔からぶつかった。傷む鼻を押さえて手を伸ばす。フェンスがある場所なのか。ますます見当がつかなくない。フェンスに手を添え、切れ目を探しながらゆっくりと横に進む。
少しずつ進んでいくと角へと辿り着いた。嫌な感じがして「まさか…」と息をのんだところで突如、カラカラと音が聞こえて、周囲が明るくなった。突然の眩しい光に強く目を瞑る。
ゆっくりと開くと、目の前のフェンス…檻の通路を挟んだ向かい側にも自分と同じ小人がいた。彼は身を縮めて体育座りし、虚ろな目でぼんやりと地面を見つめたまま動かない。先程から聞こえている叫び声は一層激しさを増している。
嫌な予感は次の瞬間に確信に変わった。自分と同じ形をしているのに、自分より数百倍も大きい人間が目の前の通路に現れた。
小人狩りだ…。
状況を理解した途端、どっと汗が噴き出た。僕たち小人は年間何百人もの仲間が人間に捕らわれ攫われて帰ってこなくなる。だから子供の頃から人間には見つかってはならないと厳しく教わる。それなのに…僕は捕まってしまったんだ。
血の気が引いて、肩で浅い呼吸を繰り返す。力が抜けてヘタリとその場に座りこむと、檻の南京錠が解錠され、人間の巨大な手が僕へと伸びてきた。
抵抗もできず、巨大な手に掴まれて檻から出される。呆然と見下ろすと数十人の同志が檻の中に捕らえられていた。
ある者は泣き、ある者は人間を睨みつけ、またある者は虚空を見つめて絶望している。その姿に仄暗い絶望と悲しみ、疑問が浮かび上がってきた。
どうして?僕は穏やかな陽の光を浴びながらいつものように昼寝をしていただけなのに…。
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