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第十一章「信康切腹」
第五十四話「傅役」
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織田信長の狂気の炎・・・此度も、その炎が徳川を襲ったのか。
拙者が瞼を閉じ過去を振り返っておると、七之助が口を開く。
「儂は、この手で信元殿を殺したのじゃ。殿の、殿の伯父に当たる方じゃぞ。そして、今度は信康様までもが・・・」
七之助は涙ながらに語る。
「半蔵、儂は許せんのだ。儂には実の子がおらん。故に、儂は信康様を我が子同然大切に育ててきた。子のおるお主なら、その気持ちわかるであろう?」
拙者は七之助の意見に同意するも、その表情は思わしくない。
「わからぬでもない。しかし、七之助。織田信長が言い掛かりをつけたという確証はあるのか?」
拙者の問いに七之助は俯く。
「確証は、ない・・・だが、そうとしか考えられんだろ。此度の一件、不審な事が多過ぎる。何が本当なのか儂には見当もつかん」
そして、七之助は拙者の方に視線を向ける。
「・・・なあ、半蔵。そこで折り入って、お主に頼みがある」
「ん?」
「此度の真相、探って来てはもらえぬか?」
七之助の突然の申し出に拙者は驚く。
「何?」
「傅役であった儂が探っては、いらぬ嫌疑をかけられるだけじゃ。しかし、此度の件に関わりのないお主ならば・・・」
「うまく探れる、と」
拙者の言葉に七之助は頷く。
「此度の件、儂は納得ができんのじゃ。何故、信康様は命を落とさなければならなかったのか。儂は事の真相が知りたいのじゃ。半蔵、頼む。此度の真相を突き止めてくれ」
頭を下げてそう頼む七之助に、拙者は落ち着いた口調で答える。
「・・・わかった」
「本当か!?」
顔を上げて喜ぶ七之助。しかし、それとは裏腹に拙者は険しい表情を浮かべる。
「だが、真相を知ってどうする。仇討ちでもするのか?」
拙者の問いに、七之助は苦悶の表情を浮かべる。
「・・・」
しばしの沈黙の後、七之助がゆっくりと口を開く。
「・・・わからん。それが、儂の正直な気持ちじゃ」
拙者の目を見てそう語る七之助。拙者は、その悲壮な姿に心を決める。
「・・・わかった。ほだら、やれるだけやってみる」
拙者の答えに口元を緩ませる七之助。
「すまんな、半蔵」
「構わんさ」
冬の冷たい風が草庵の隙間から屋内に流れ込む。
拙者が瞼を閉じ過去を振り返っておると、七之助が口を開く。
「儂は、この手で信元殿を殺したのじゃ。殿の、殿の伯父に当たる方じゃぞ。そして、今度は信康様までもが・・・」
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「半蔵、儂は許せんのだ。儂には実の子がおらん。故に、儂は信康様を我が子同然大切に育ててきた。子のおるお主なら、その気持ちわかるであろう?」
拙者は七之助の意見に同意するも、その表情は思わしくない。
「わからぬでもない。しかし、七之助。織田信長が言い掛かりをつけたという確証はあるのか?」
拙者の問いに七之助は俯く。
「確証は、ない・・・だが、そうとしか考えられんだろ。此度の一件、不審な事が多過ぎる。何が本当なのか儂には見当もつかん」
そして、七之助は拙者の方に視線を向ける。
「・・・なあ、半蔵。そこで折り入って、お主に頼みがある」
「ん?」
「此度の真相、探って来てはもらえぬか?」
七之助の突然の申し出に拙者は驚く。
「何?」
「傅役であった儂が探っては、いらぬ嫌疑をかけられるだけじゃ。しかし、此度の件に関わりのないお主ならば・・・」
「うまく探れる、と」
拙者の言葉に七之助は頷く。
「此度の件、儂は納得ができんのじゃ。何故、信康様は命を落とさなければならなかったのか。儂は事の真相が知りたいのじゃ。半蔵、頼む。此度の真相を突き止めてくれ」
頭を下げてそう頼む七之助に、拙者は落ち着いた口調で答える。
「・・・わかった」
「本当か!?」
顔を上げて喜ぶ七之助。しかし、それとは裏腹に拙者は険しい表情を浮かべる。
「だが、真相を知ってどうする。仇討ちでもするのか?」
拙者の問いに、七之助は苦悶の表情を浮かべる。
「・・・」
しばしの沈黙の後、七之助がゆっくりと口を開く。
「・・・わからん。それが、儂の正直な気持ちじゃ」
拙者の目を見てそう語る七之助。拙者は、その悲壮な姿に心を決める。
「・・・わかった。ほだら、やれるだけやってみる」
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「すまんな、半蔵」
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冬の冷たい風が草庵の隙間から屋内に流れ込む。
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