誰にも気づかれなかった僕の生き方が、世界を変えていました。

シロトネ

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第12話 目覚め

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夜明け前、村の北。

空がまだ黒と藍の境界をたどる時間。
その静けさを破るように、“それ”は現れた。


魔族――人の形をした異形たち。

灰色の皮膚に刻まれた文様。
眼は光を飲み込み、口元には笑っていない笑み。
その背後には、従える魔物たち。地を這うもの、飛ぶもの、牙をむくもの。

その数――十五体。


「……随分と手厚いな」

ユイは呟いた。

剣も、盾も、持っていない。
けれどその足取りは、誰よりも静かで、確かなものだった。


「この村に、余計な存在がいる。神の使いを名乗る異物――処理対象」

魔族のひとりが口を開いた。
その声は、人の形をしていながら、“感情”がなかった。


「違うよ。僕は、ただの“ユイ”だ」

ユイの言葉に、魔族たちは応えない。

代わりに、いっせいに動き出した。


――その瞬間。


大地に、光が咲いた。

ユイの足元から、無数の紋様が広がる。
地に刻まれた結界が、空気ごと空間を縫い止めた。

魔族の動きが止まる。
だが、それはほんの一瞬。

空を飛んでいた獣が、真っ直ぐユイへと突撃する――


ドンッ!!!


風が弾けた。

ユイの左手から放たれた“見えない刃”が、空を裂き、魔物を一閃した。

まるで光そのものを振るうような動き。


「すでに、攻撃魔法を超えている……!」

隊長が絶句する。

「今のは……なんだ……」

村の男たちも、戦慄していた。

でも、誰よりも――リルだけは、目を逸らさなかった。


ユイは、静かに言った。

「僕は戦うために生きてるわけじゃない。
でも、誰かを守るために――力を使うことは、やめない」


魔族たちは、その言葉に動揺を見せなかった。

代わりに、“一体”が前に出る。

他よりも一回り大きく、重く、気配が濃い。

「……適合率:高。再優先で回収対象に設定」
「……回収?」
「君の力は、“我ら”と同質の可能性がある」

 

――何?

その言葉に、ユイの中で何かがざらりと動いた。

同質?
つまり、僕の力は……魔族と“同じ起源”?


思考する間もなく、そいつが跳んだ。

空間がきしむ。地がめくれる。


ユイは咄嗟に、左手を天に向けた。

まもれ――《たまきの結界》!」

空間に、巨大な円が描かれる。
それはまるで、世界ごと抱きしめるような結界だった。

衝突。爆風。光の奔流。

村を囲む壁が、揺れる。
空が、震える。


けれど――

村は、傷つかなかった。

◇ ◇ ◇

戦いが終わったあと。
地には、黒い影だけが残されていた。

魔族は消えた。完全に、何も残さず。

ユイは、地に膝をついていた。

呼吸が荒い。
意識が、かすかに途切れそうになる。

でも、その手は――しっかりと握られていた。


「ユイ!!」

リルが叫ぶ。

「大丈夫!? ねえ、しっかりして!」

「……うん、大丈夫。少し、使いすぎただけ……」
「怖かった……でも……すごかった……でも……怖かった……でも……!」

リルは言葉にならない感情を、全部ユイにぶつけた。
その小さな手が、震えていた。

ユイは、微笑んだ。

「ありがとう、リル。……僕も、少し怖かったんだ」


だからこそ、忘れたくなかった。

この手が、誰かの手と繋がっていたこと。
僕の力が、誰かのために“届いた”こと。


ただ、守りたかっただけなんだ。

それが、こんなにも重くて、
でも、こんなにも尊いものだなんて。
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