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第13話 ヒト
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魔族との戦いが終わった翌朝、
村の空気はどこか静かすぎた。
あの衝撃のあととは思えないほど、
草は揺れ、小鳥はさえずり、空は眩しかった。
――まるで、何もなかったかのように。
でも、確かに“あった”。
世界が少し、ユイを見つめはじめた朝だった。
◇ ◇ ◇
村人たちは、ユイを見る目を変え始めていた。
恐怖。尊敬。戸惑い。崇拝。――沈黙。
「すごかったな……あの力」
「いや、あれはもう……人間じゃない」
「でも、あの人がいなかったら……私たちは……」
誰も直接は何も言ってこない。
でも、その“空気”が、ユイを取り囲んでいた。
ユイは気づいていた。
けれど、それを否定しようとは思わなかった。
「……僕が、人間じゃないとしても。
それでも、誰かを助けたいという想いは、嘘じゃない」
ただ、それだけだった。
◇ ◇ ◇
その日の夕方。
丘の上の、ふたりだけの場所。
ユイはリルと並んで座っていた。
沈む夕日が、二人の影を長く伸ばしていく。
しばらく沈黙が続いたあと、リルがぽつりと呟いた。
「ユイは……“本当に”人間なの?」
ユイの背中が、かすかに揺れた。
「……わからない。
あの魔族が言ってた、“君の力は我らと同質”って言葉……
正直、怖かった」
「うん」
「もし本当に、僕が魔族と同じような存在だったら……
もし、君を傷つけるような力を持っていたら……」
ユイの声が、かすかに震えていた。
リルは、迷いなく手を伸ばした。
そして――ぎゅっと、ユイの手を握る。
「わたしは、ユイのことを“人間かどうか”なんて思ったこと、一度もないよ」
「……え?」
「だって、“人間”って、何?
力があるかないか? 生まれがどこか? 見た目がどうか?
――違うでしょ?」
リルはまっすぐ、ユイを見た。
「わたしは、“ユイ”が、ユイであることを、信じてる。
それ以上でも、それ以下でもないの。
だから……“何者なのか”なんて、もう悩まなくていいよ」
ユイの目に、じんわりと涙がにじんだ。
「……ありがとう」
その一言に、何年分もの感情が込められていた。
誰かに必要とされたこと。
誰かに信じられたこと。
誰かの“優しさ”に、無条件で包まれたこと。
――今までの人生で、そんな経験は一度もなかった。
「リル、僕は……この手で、誰かを傷つけてしまうかもしれない。
でも、それでも……この手で誰かを守りたいと思ってる。
その“想い”だけは、ずっと守りたいんだ」
「じゃあ、わたしも一緒に守るよ。
ユイの“想い”を、ちゃんと守れるように、隣にいる」
二人の手は、強く結ばれていた。
何よりも確かに、温かく。
◇ ◇ ◇
その夜、村の西。
誰にも気づかれない場所で、一人の影が佇んでいた。
漆黒のマント。
胸元には、王都の“高位魔導師”の紋章。
その者は空を見上げ、薄く笑う。
「見つけたぞ……“鍵”となる存在を」
物語は、またひとつ、深く動き出していた。
村の空気はどこか静かすぎた。
あの衝撃のあととは思えないほど、
草は揺れ、小鳥はさえずり、空は眩しかった。
――まるで、何もなかったかのように。
でも、確かに“あった”。
世界が少し、ユイを見つめはじめた朝だった。
◇ ◇ ◇
村人たちは、ユイを見る目を変え始めていた。
恐怖。尊敬。戸惑い。崇拝。――沈黙。
「すごかったな……あの力」
「いや、あれはもう……人間じゃない」
「でも、あの人がいなかったら……私たちは……」
誰も直接は何も言ってこない。
でも、その“空気”が、ユイを取り囲んでいた。
ユイは気づいていた。
けれど、それを否定しようとは思わなかった。
「……僕が、人間じゃないとしても。
それでも、誰かを助けたいという想いは、嘘じゃない」
ただ、それだけだった。
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その日の夕方。
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ユイはリルと並んで座っていた。
沈む夕日が、二人の影を長く伸ばしていく。
しばらく沈黙が続いたあと、リルがぽつりと呟いた。
「ユイは……“本当に”人間なの?」
ユイの背中が、かすかに揺れた。
「……わからない。
あの魔族が言ってた、“君の力は我らと同質”って言葉……
正直、怖かった」
「うん」
「もし本当に、僕が魔族と同じような存在だったら……
もし、君を傷つけるような力を持っていたら……」
ユイの声が、かすかに震えていた。
リルは、迷いなく手を伸ばした。
そして――ぎゅっと、ユイの手を握る。
「わたしは、ユイのことを“人間かどうか”なんて思ったこと、一度もないよ」
「……え?」
「だって、“人間”って、何?
力があるかないか? 生まれがどこか? 見た目がどうか?
――違うでしょ?」
リルはまっすぐ、ユイを見た。
「わたしは、“ユイ”が、ユイであることを、信じてる。
それ以上でも、それ以下でもないの。
だから……“何者なのか”なんて、もう悩まなくていいよ」
ユイの目に、じんわりと涙がにじんだ。
「……ありがとう」
その一言に、何年分もの感情が込められていた。
誰かに必要とされたこと。
誰かに信じられたこと。
誰かの“優しさ”に、無条件で包まれたこと。
――今までの人生で、そんな経験は一度もなかった。
「リル、僕は……この手で、誰かを傷つけてしまうかもしれない。
でも、それでも……この手で誰かを守りたいと思ってる。
その“想い”だけは、ずっと守りたいんだ」
「じゃあ、わたしも一緒に守るよ。
ユイの“想い”を、ちゃんと守れるように、隣にいる」
二人の手は、強く結ばれていた。
何よりも確かに、温かく。
◇ ◇ ◇
その夜、村の西。
誰にも気づかれない場所で、一人の影が佇んでいた。
漆黒のマント。
胸元には、王都の“高位魔導師”の紋章。
その者は空を見上げ、薄く笑う。
「見つけたぞ……“鍵”となる存在を」
物語は、またひとつ、深く動き出していた。
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