誰にも気づかれなかった僕の生き方が、世界を変えていました。

シロトネ

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第21話 雲の上

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朝、空は晴れていた。
けれどユイは、どこかで“ざらつく感覚”を覚えていた。

空気が重い。
身体がほんの少し、動きにくい。

結界が、完成に近づいている証拠だった。

それは見えない鎖のように、
ユイの魔素と感覚を“外の世界”からゆっくり切り離していく。


「……まだ早い」

ユイは呟く。

「このままだと、“僕”じゃなくなるかもしれない」

◇ ◇ ◇

昼。
リルが畑の手伝いから戻ると、ユイは部屋で座り込んでいた。

顔色が悪い。呼吸も浅い。

「ユイ……? 大丈夫?」
「……ちょっと、魔素が濁ってて。
たぶん、あの柱たちが原因だと思う」


リルは唇を噛んだ。
この数日、村に現れた“魔導器”たちに、彼女も気づいていた。

でも、それがユイを傷つけているとわかったのは、今が初めてだった。


「なんで……なんで、何も言わなかったの?」
「言っても……リルまで、不安になると思ったから」
「そんなの、勝手すぎるよ」

リルの声が、少しだけ怒っていた。

「わたしは、ユイが大丈夫だって笑ってても、
その笑顔の裏で何か我慢してること、ずっと感じてた」
「……リル」
「苦しいなら、ちゃんと“苦しい”って言ってよ。
わたし、そばにいるって決めたんだから」


ユイは、初めて少しだけ――顔を歪めた。

それは、泣き顔のようで、でも笑ってもいて。

「……ごめん。ありがとう。
君の声、ちゃんと聞こえてる」

◇ ◇ ◇

その夜。
結界柱のひとつが、突然“蒼い光”を放った。

封印構築が最終段階に入った合図だった。

そして――

それと同時に、村の空気が“一層静か”になった。

虫の音も止み、風すら感じられなくなる。

「……このままだと、結界が僕の“中枢”を縛る。
そうなったら、もう“僕”は――僕じゃいられない」

ユイは立ち上がる。


これは、“意思”を奪う封印。
肉体を残し、心を眠らせる結界。

それが完成すれば、彼はもう何も選べない。

リルの声も、世界の色も、もう届かなくなる。


「なら、壊すしかない。
僕の中に残ってる“何か”で――まだ間に合うなら」
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