誰にも気づかれなかった僕の生き方が、世界を変えていました。

シロトネ

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第20話 境界は静かに

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ある朝。
村に、ひとつの荷馬車が入ってきた。

運ばれていたのは――魔導器。
巨大な柱のような構造物に、淡く輝く魔紋。
その周囲を囲むように、数人の魔導師がついていた。

「王都からの追加支援物資です」

彼らはそう言った。
「ソル・マギアの協力のもと、この村の結界を強化する」と。

村人たちは歓迎した。
あの夜、魔族に襲われた記憶が、まだ色濃く残っている。

けれど――ユイは、違和感を覚えた。


魔導器が発する魔素の波。
それは“防御”とは少し違う性質を帯びていた。

静かで、柔らかく、けれど――閉ざすものの波動。

まるで、外からではなく、内側に向けて作用する結界のような。

◇ ◇ ◇

夜。ユイはそっとその魔導器に近づいた。

手をかざすと、魔紋が反応する。

“識別反応:対象一致。封印共鳴開始――”

その瞬間、心臓が強く脈打った。

「……やっぱり、“僕”を狙ってる」

誰もが“守るため”と言っている。
でも、この結界が本当に守ろうとしているのは――

村ではなく、“世界”のほうだ。

◇ ◇ ◇

翌日。
ユイはエリシアのもとを訪れた。

彼女は少し驚いたような顔をして、けれど話を遮らずに聞いてくれた。

「……なるほど。
ゼドリアが、“封印”の器をここに持ち込んだ……」
「僕は何もしてない。
なのに、また“囲い込まれる側”になるのかって思うと……」

エリシアは、しばらく黙っていた。
その沈黙のあと、小さく吐き出すように言った。

「……やはり、ゼドリアは動いたか。
私の中でも、彼は“正しい”と思っていた時期があった。
でも……彼は、“守る”ことと“縛る”ことを、履き違えている」


ユイは問いかけた。

「じゃあ、エリシアはどうするの?」


彼女は視線をそらさず、答えた。

「私は、“見る”。
あなたが世界にとって災いか、あるいは希望か。
その結論を、“あなた自身の選択”から導きたい」

◇ ◇ ◇

その夜。
結界柱のひとつが、淡く赤い光を放ち始めた。

何かが、動き始めている。

まるで――ユイの“過去”が、この世界の秩序を壊す前に封じようと、
世界そのものが備えてきたかのように。
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