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ヒトのキョウカイ2巻(エンゲージネジを渡そう)
01 (狼と鳥の少女)
しおりを挟む吹雪の中…毛皮を被った少女がいる…。
毛皮で顔が見えないが歳は10は行かないだろう…。
その少女が、雪をかき分け、また1歩進む…。
大きな猪、やってきた、村、皆、死んだ。
竹畑、無くなる、ロウ、死ぬ。
長老、言った、向こうに、大きい、家、有る…と。
猪が、通った、跡、見つけた。
雪、潰れ、動き、やすい。
猪、多分、大きい、家、行った。
とても、大きな、人、いた。
腹、減った、かじる、すごく、固い、これは、食べられない、もの。
身体、寒い、腹、減った、竹、欲しい。
ジガは、吹雪の中、M字の機械翼を広げ、砦学園都市に向かっていた。
比較的エレクトロンの近くにいた部隊は無事だったが、所々に死んだ女性の遺体を見つける。
その度にジガは降り、DNAを記録…。
遺体は持ち運べないので空間ハッキングで分解し、袋に積める。
せめて、自分の都市で資源として循環して欲しい。
ウチらエレクトロンにも死者のパーツを皆で分け合う風習がある。
とは言っても 大体が旧式型のパーツの為、受け継がれるのはネジ位なのだが…。
遺体は分解され、最新パーツに生まれ変わる。
人の新しいパーツ…子供か?…義体のパーツか?
どちらにしても…こんな冷凍庫みたな気温で循環出来ないのも問題だ。
ジガは、ゆっくりとだが進む…。
DLのコクピットブロックの装甲をパージした脱出用のバギーを見つけた。
中の人はワームに潰されていて原型を保っていない…。
分解し袋に詰め、とうとう袋の重さが1tになった。
コクピット後ろにはリュックがあり、中には非常食などのサバイバルキットが収められている。
「生き残りの為に貰っていきます。」
ジガは最上級敬礼を行い、リュックを担ぎ飛んだ…。
「は?生存者か?」
センサーで生存者を探しながら飛行していたジガは、熱センサーでまだ体温を維持しているヒトを見つけ、すぐに降下する。
「獣人か?」
獣耳にしっぽ…悪環境に適用するように作られた獣人はこう言った極限環境では生き残り易い。
顔を見た所5~7歳くらいか?
狼の毛皮を被り、狼の牙のネックレスをしている少女が倒れている。
ジガが少女の状態を確かめようと手を触れようとした瞬間、少女はジガに飛びつき喉元に噛みついた。
「肉ぅ」
「ウチはカーボンだ。」
コイツ、生物の急所の首に的確に喰らいついて来た…ウチを食べる気だ。
噛みつかれる寸前、ジガは防御プログラムを走らせていた。
プログラム名は『通行止め』飛んでくる物体の運動エネルギーを把握し、その変数を減算してちょうど0にする。
どんな攻撃だろうが運動エネルギーさえ無ければ動かない。
少女は更に噛みつく。
変数の減算数値がどんどん上がって行く…。
こんな小さいナリして コイツ、猛獣並の力が出るのか。
「噛めない、食べれない、もの、腹減った…。」
少女の力が弱まり、最後の体力を使い果たしたのか…また倒れる。
「オイ大丈夫か?」
ジガが慌てて、少女のバイタルを確認する。
体温が急激に下がり、低体温で維持し始める。
「なんだ冬眠か」
獣人は生命を維持する為、体温を下げて省エネモードになる事が出来る。
どっちにしろこの状況では、代謝を減らしたとしても助からない。
都市まで残り10km…ここまで来てるヤツは サバイバルキットで生き残っているはず…。
向こうからも救助部隊が出てるって聞いてるしな…。
仕方ないか…。
「今日はここで泊まりかな…。」
ジガは2mちょいの紐と長い釘を生成し、紐を釘に結び雪の地面に突き刺し固定する。
次にブロックの型を生成し雪を詰める…。
雪はすぐに氷になり、氷ブロックの完成だ。
これをひたすら繰り返す。
氷ブロックの型には、遠隔端末を仕込んでいて、空中に浮かび、雪を拾い上げて ブロックにする。
型を6個作って同時操作…。
釘に繋がった2mの紐で地面に円を描き、そこに氷ブロックを配置…。
一段目が出来る…余った部分は雪を詰めて補強。
そして二段目は少しずらす…。
紐を二段目に持って行き、紐の先とブロックの端を合わせる…。
こうやって作っていく事で広さ4m高さ2mのドームが出来る。
南極のエレクトロンの最初の住居…。
昔懐かしのアイスドームの出来上がりだ。
これを10分足らずで行い…少女をドームの中に寝かせる。
後は体温を維持する為に焚火…なんだが、ここに可燃物がある訳無いか…。
コイツの服を燃やすか?と言ってもすぐに燃え尽きるだろうから意味無いしな…。
ジガは 外の吹雪で埋まりかけていた1tの分解した人の遺体が入った袋を持ってくる。
「悪いな…でもコイツを助けたいんだ。」
人の主成分は炭素…つまり。
ジガが炭素袋に手を入れ空間ハッキングで炭素を抽出…それを加工して炭素棒にし、これを網目構造にしていく。
炭素繊維のカーボンヒーターの出来上がりだ。
後は端を持って電気を送ればいい…。
ジガは少女に近づき両手で炭素棒の端を持ち電気を流す…。
炭素棒が明るく輝き、指に熱が発生する…まぁ人を温める位で焦げたりはしないだろうが…。
念のため指先だけを防御しそのまま胡坐《あぐら》をかいた。
明日の朝までは十分に持つ…その後、1tの袋と飛び都市に向かう事も十分に可能だ。
一夜が過ぎ吹雪は収まった…。
少女の体温も冬眠状態から持ち上がり、通常体温まで戻る。
「ふぁあ、腹、減った。」
第一声がそれかよ…。
「どうやら無事みたいだな…。」
「あ~肉、助けた、感謝」
「だから肉じゃねーってジガだ。」
「ジガ?」
「そうジガ…つかオマエどうしてこんな所にいたんだ?」
「大きい猪、やってきた、村、皆、死んだ。
竹畑、無くなる、ロウ、死ぬ。
長老、言った、向こうに、大きい、家、有ると。」
「大きい猪…ワームか…お前の名前は『ロウ』か?」
「そう、ロウは、ロウ…ジガ、腹、減った。」
「オマエそればっかだな…。」
ジガはリュックを下ろし、食料を取り出す…『国際携帯食料ミートキューブ』
3個のキューブが繋がった携帯食で物理限界までバランスよく栄養を詰め込んだこの携帯食のカロリーは1本あたり、驚きの1000キロカロリー。
旧時代の軍人が1食に必要だったカロリーらしい。
「待て…消化出来るのか?…ロウ何日食べてない?」
「ナンニチ?」
もしかして暦を知らないのか?
「最後の食事から昼と夜が何回続いた?」
「ずっと、吹雪、火球、ない、よる、1回」
あーそうか…この環境だと太陽が昇る自体が珍しいよな…。
星や太陽が見える環境が無いと暦の発想そのものが出来ないか…。
となると上手く消化出来ない可能性もあるな…水に溶かないと。
幸いリュックの中にマグカップはある。
そこらにある雪をカップに入れ、炭素棒の上に置く。
上手く乗らないので炭素棒をUの字型に変形させ上に乗っける。
クッキングヒーターの出来上がりだ。
雪が水になり沸騰した所で ミートキューブを1個砕いて入れ、スプーンでかき混ぜる。
ジガはロウの目の前にスープを持って行き、スプーンですくって、まずは自分で食べる…。
ジガに消化器官が無いが『ゴックン』する為の不純物処理用の器官が搭載されているので問題ない。
目新しい食べ物に毒物が入っていない事を証明し、スプーンでロウの口に運ぶ…。
ロウはしばらくスープを見たり匂いを嗅いだりしていたが、ほんの少し舌で舐め味での確認し、そしてスプーンを加えた。
「肉」
「確かに肉味だしな…もっと飲むか…」
「飲む」
ロウはカップを掴《つか》む…やべっ火傷…。
「美味しい」
あれ?触ってみるが…人なら反射的に放してしまう位 熱い。
もしかしてコイツ…。
飲み終えたロウは満足そうに横になった。
「少ししたらウチも『大きな家』に行くんだが、ついてくるか?」
「行く」
背中に乗せるにしてもスペースが足りないな…。
すまないな遺体さん…しばらくここで待っててくれ。
吹雪が止み快晴の朝…珍しく太陽が顔を覗かせている。
ロウは太陽を見て、
「火球、見える、2日目?」
と少し楽しそうに言う。
「長い昨日だな…まぁ良い…行くぞ。」
ジガはロウを腹をしっかりと抱え、M字の機械翼を出し飛び出す。
「ジガ、鳥、人?」
「まぁ鳥と言えば鳥か…飛ぶしな。」
エレクトロンは 飛んで移動する事が多い…確かに鳥だな。
「ロウ、ジガ、同じ」
「同じ?…あ?浮力?」
ロウが飛行機のように手を伸ばすと浮力が発生した…。
試しにロウを安全を確保した状態で離してみるが、ちゃんと飛んでいる。
手で揚力を生み出す事も出来ないし、まして普通なら失速している速度だ。
間違いない…コイツ部分的だが空間ハッキングしている。
生身で出来る人はいたが…それは狙撃手が『当たると強く信じる事』で弾に補正を掛ける程度の事だ。
ここまで出来るのは聞いたことない。
「まぁ面白くなりそうだな…。」
2人は少し遠回りしながら 空中散歩を楽しみつつ砦学園都市に向かって行った。
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