⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

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ヒトのキョウカイ4巻(オレいつの間にか子持ちになっていました。)

23 (反物質の宝石)

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 砦祭2日目…朝から大量の人が行き来し、都市の外の客もかなり多くなっている。
 更に街中に行くとドラムがいつもより多く、店を見て周っている…ドラムのディスプレイを見ると人の顔が表示されていた。
「ああ…リモート義体か…。」
 昔のように気軽に移動出来ない遠方の客が 砦学園都市でレンタルされているドラムと通信で繋げる事で自分の身体のように…とまでは行かないが、向こうの都市でこちらの祭を楽しめる。
 今日は 学術系の発表がメインになるので 学者が入っているドラムが多い。
 ブラブラと街中を歩く…あちこちの店が祭り一色で宣伝も兼ねて企業の出店も出ている…。
 昔懐かしい…と言うかオレの時代で既に絶滅していたコルク銃の射的…見るのは初めてだ。
「お兄さん…射的やるかい…300トニーで6発お得だよ…。」
 ナオにハチマキをしたおっさんが声をかけてくる。
「じゃあ2回…12発で…。」
「あい毎度~。」
 オレは手をかざして支払いを終え、おっさんからスナイパーライフル型のコルク銃を借りる…。
 コルクは銃口に取り付けるのでは無く、ボルトアクション式6発入りのマガジンが付いている。
 ナオがマガジンを入れ構える…スコープは付いていないが、そもそも目標まで3mなので必要無い。
 狙うは 一番大きい『くまのぬいぐるみ』…。
「お兄さんプロだね…。」
 オレの構えを見ておっさんが言う。
「ああ…ライフルは久しぶりだけどな…。」
 点検射にくまの脳天を狙い引き金を引き発射…コルクは目標のやや左上にズレくまの耳に当たる…。
 耳に衝撃を吸収され銃弾形のコルクが落ちた。
「ここまでズレるか…。」
 着弾位置から織り込み修正…照準で狙う事に意味が無い…これはただの飾りだ。
 2発目発射…くまの脳天にヒット…。
 くまは少し揺れる…。
「当たったのに惜しいね…フフフ。」
 おっさんが笑いをこらえながら言う。
「ふむ…」
 オレのハイスピードカメラの録画情報から、弾の威力と くまに当たった僅《わず》かな動きから くまの質量を算出…。
 見かけではコルク銃でもギリギリ行けるサイズなのだが、中の密度が見た目よりも重く…弾の威力を比べても かなり無理がある。
 3発目…4発目…右肩と左肩にヒット…5発目…6発目…右足左足にヒット…。
「ほう…。」
 弾の軌道を正確に予測して撃ち込むオレにおっさんは驚き、すぐに平静に戻る…。
 弾の威力を同じと仮定して、衝撃から くまの詳しい密度を計測…どうやら下の尻部分だけが重く…それ以外はガラス繊維の綿が詰まっているのだろう…数値が近い。
 上がガラス繊維の綿なのでコルクの衝撃でも揺れるが下が重く安定している為、効果が薄い…。
「お兄さん…残り6発だよ…。」
 おっさんがマガジンを渡す…。
 オレは マガジンを入れずに銃を下に向け、空撃ちしレバーを高速で引いて入れ直しを繰り返す。
 装填のクールタイムを計算……実行可能。
「行ける…。」

 お兄さんが、銃を構える…。
 あのくまは 倒れるように見えるギリギリの重りが入っていて安定性を確保している…。
 その為 頭部に当てれば、くまが動き落とせると思わせて落とせない…そう言う仕組みだ。
「ふう…。」
 お兄さんは、ゆっくりと息を吐く…発射…。
 1発目…くまの脳天に命中…くまが揺れる…兄ちゃんはそのまま高速リロードをして、2発目を発射…。
 揺れが最大になった状態で正確に脳天に命中…3発目…安定に戻ろうとする くまの脳天に当たり傾きが増す…4発目…脳天に命中…傾きが増す…5発目…脳天に命中…6発目…脳天の少し上頭に角度を付けてギリギリにヒット…
 角度が頂点に達し…中に仕込んだ重りで倒れ、台から落ちた。
「流石お兄さん…お見事!!」
 オレは思わず拍手をしちまった。

 辺りに拍手が響き渡る…どうやら数人の見物人が後ろから見ていたようだ…。
 おっさんからぬいぐるみを貰う…後ろにはチャックが付いていて中に手を突っ込むとくまの尻位に硬い物…分銅だろう…に当たる…。
「やっぱりな…。」
 くまををおっさんに返し「もうちょっと難易度を下げたらどうです?…力学上ギリギリですよ…。」とナオが言う。
 おっさんは、少し頭をかきながら「あれは客を引く飾りだから良いんだ」と小さく言った。

 まだ時間はあるな…。
 クオリアのマジックショーを見る為、学校区画の研究棟と言う所にナオは来た。
 棟の周辺には 大量のドラムがおり、ドラムのディスプレイを見ると学者の顔が映っていて別の都市からコントロールしている事が分かる。
「ちょっと早く来過ぎたな…。」
 ARディスプレイの時計を見るが、いくら何でも早すぎる…。
 今 行ってクオリアに迷惑をかけるのもあれだし…他の研究発表を見て周るか…。
 各階…色々な出し物や物を売っている…。
 中でも気になったのは 1階にある研究棟には似つかわしくない ルビーやサファイア、ダイヤモンド、エメライドの宝石が売っている宝石店だ。
 スペースが無くて、別の学校から回されたのか?
 オレは不思議に思いながら、ショーケースに飾ってある宝石を見る…。
 宝石はどれもが美しく、さぞかし値段が張るのだろう。
 オレは指に負担がかかる位に大きい5.3CTカラットのダイヤモンドが付いた指輪の値段を見る。
 お値段はなんと、指輪込みで3000トニーだった。
「安すぎだろう…。」
 思わずオレは突っ込んだ。
 傷が一切無くこれだけ大きいサイズだと一体いくらするんだ?
 確か昔…5カラットのダイヤとDLを2機交換したって話があったよな…。
 てことは4~5千万トニーは 掛かっても不自然おかしく無いはずだ。
「今ではそこまで不自然じゃ無いんですよ…。」
 女性の定員がナオに言う。
「オレの時代なら4~5千万トニー程度はしているはずなのですが…。」
「あ~あなたがナオさんね…2020年から来たって言う…。
 昨日のレース…私も見ていたのですよ…。
 凄い活躍でしたね…。」
「それはどーも…でどう言うカラクリなんです?
 まさかガラスとかで そう見えるように作っているとか?」
「いいえ…鉱物的にもダイヤですよ…。
 ただ人工的に作り出したダイヤモンドなのですが…。」
「へぇ天然物じゃ無いと本当に安くなるんですか…。」
「ダイヤモンドは 半導体や工業用と範囲が広いですし、その材料の炭素はDLの装甲に使われていますから…DLが生産出来る都市では 結構 加工技術が進んでいるんですよ…。
 まぁ私達の都市には及びませんがね…。」
 店員は笑顔で答える。
「それでおひとつ如何いかがでしょうか?
 恋人さんも喜ぶと思いますよ…。」
 この都市には男が少ないから オレとクオリアが付き合っている事も結構な人が知っている。
 ナオは クオリアが指輪を付けている所を想像する…。
 うんダメだな…喜ぶ顔が想像出来ない…。
「多分…鉱物としか見てないと思いますよ…。
 あーそうだ…な…。」
「何か欲しいのでも?」
「反物質って安くなってますか?」
 オレが半分冗談で言ってみる。
「はい?はんぶっしつ…反物質!?流石にそれは無いですよ…と言うよりそれ以前に宝石に出来ません。」
「ですよね~。
 オレの観測者パートナーのクオリアは『何の指輪が欲しいか?』と聞かれたら『反物質』と言っちゃう子なので…。」
 指輪の宝石の話でクオリアが反物質の話を言ったので『もしかしたら宝石のような形に加工が出来るのではないか?』と思っていたが、流石にそこまでは まだ出来ない見たいだ。
「ははは…。
 ちなみに反物質の発表している所は 4階ですよ…。」
 店員は苦笑いをしつつ教えてくれる。
「分かりました…一応行ってみますよ。
 プレゼントするかは ともかく、興味はありますから…。
 それでは…。」
 オレは頭を軽く下げ、階段を上る。

「ククク…。
 全くお金のかかる恋人さんですね…。」
 私は ナオさんの後ろ姿を見つつ静かに笑った。
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