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ヒトのキョウカイ5巻 (亡霊再び)
09 (亡霊再び)
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「食事中すまない。
ナオ…これから時間を取れるか?
3~4時間位かかるんだが…。」
食堂でARの食事を取っていると…後ろからクオリアが話しかけてきた。
「ああ良いけど…何をするんだ…。」
夕飯の味噌汁をすすりながら言う。
「私と一緒にVRで研究都市まで行って欲しい。」
「研究都市?砦研究都市か?」
砦都市の中の1都市か…名前からして研究特化都市だろうが…詳しい事は全く知らない。
「そう…ナオに見て欲しい物もある…。」
「分かった…それじゃあ」
ナオは急いで食べ始め…汚れた食器をARのアイテムウィンドウを開き アイテムボックスにぶち込んだ。
こういう時に洗わなくても良いARの食事は便利だ。
「じゃあどこでやる?クオリアの部屋か?」
「ナオの部屋が良い…そこでダイブしよう…。」
「分かった。」
ナオとクオリアは ナオの部屋に向かい階段をのぼり始めた。
相変わらず 何もない部屋で オレはベッドに寝転び、クオリアはベッドに背中を預けダイブする。
最近はここにクオリアがいる事も普通になり、事前連絡をしてちょくちょくやってくる。
特に ここに何かある訳でもないのだが…2人でダイブをする時はこっちでだ。
まずは クオリアの電脳空間を模したパブリックスペースに行く…。
「なあ…砦学園都市以外の砦都市を知らないんだが…どう言ったのがあるんだ?」
ナオが、移動用のドアに行き先を設定しているクオリアに聞く。
「じゃあ今回行く研究都市から…研究都市は大規模研究施設に力を入れている都市で、発明はここで生み出される。」
「あれ?でもここでも、空間ハッキングのコードを開発したよな…。」
それにエレクトロン製のDLの解析も学園都市がやっている。
「そう…でも、数式や計算上が主で、スペースの取る実験機材は 研究都市が圧倒的に多いので委託している。
今回の空間ハッキングも、理論や簡単な実験はこっちだが、大規模な最終実験は 研究都市で行われた。」
「へえ…じゃあ他は?」
「その次…研究が完成しても、実際に使ってみて安全かを証明する為の実証試験が必要だ。
そこで、砦実験都市で 実証試験を行う…。
この都市には 過剰な位のセーフティがあって…新しい技術を実際に都市内で運用して見てデータを取って改善案を出したりする。
ちなみに外部への拡散する事を防ぐ為に核で都市ごと焼却処分出来るようにもなってる。
「うわああ…ひでぇな」
昔もトニー王国は 実験都市を持っていたが ここまではしていなかったはず…。
何か流出したのか?
「生物実験もしているからな…エクスプロイトウイルス見たいなのが、拡散させたらマズイだろ…。」
「まあ…確かに」
「そして、実績が出来た技術を生み出しても それが出来る技術者がいなければ成り立たない。
その技術者を生産するのが砦学園都市…この都市は優秀な技術者を育てて各都市に送るのが目的なんだ。」
「じゃあリゾート都市は?」
「あそこは 娯楽特化都市…。
ここもそうだが、景色が良い所は少ないし、娯楽施設はARを複合した物が多い。
それに比べリゾート都市は、海に砂浜に遊園地に山とリアルでスペースを取る娯楽が多い。
観光地としては優秀で 砦都市の他の都市から年間で1万人位は 来るらしい。」
1万人…1日27人…エアトラ1機に乗れる人数位か…20万人の都市で交通状況が悪い 今の時代なら かなりの規模では無いのだろうか…。
「さて…盗聴が不可能な専用回線にした。
これから行く所は、新型のDLを開発している施設だ。
旧時代からのDL乗りの意見を聞きたい…。
それと…ナオに この機体のテストパイロットをして欲しい。」
「新型機か…再設計機か?」
ナオがクオリアに聞く…。
DLの中身は あらゆる面を考えあれが最適解で、改造した所で総合性能で上回る事は無く、疾風のように機動性を優先すれば 持てる武装の低下と扱い難さのデメリットが上乗せされる…炎龍も 火力と武装数を引き上げた結果 機動性が悪くなっている。
しかも、素材技術が上がって機体の更新をする際でも、規格さえ合っていれば簡単に付け替えが出来るので、新型と言っても精々が素材の向上による入れ替え更新と軽い見直し位になるはずだ。
「いや…完全新造機だ…」
「はい?」
完全新造?
クオリアが他の場所に移動する為のドアを開ける。
「さあ入って…。」
「ああ…。」
オレとクオリアは 暗闇のドアの中に入って行った。
ドアの中に入るとそこは倉庫だった…。
仮想世界?現実世界?
オレは少し混乱をして当たりを見回すと自分の手が見える。
山、谷とギザギザになっていてエアダクトのホースにも似た腕…。
アバターが変わった…いや…。
ドラムだ。
オレの隣にあるドラムも起動し、ディスプレイには クオリアの顔が表示されている。
「なあクオリア…ここはドラム経由で現実世界を見てるって事で良いんだよな…。」
「ああそうだ…研究所に向かおう。」
ドラムには4本の足があるが、オレには その間に仮想の2本足があるような感じで、こちらが仮想の足を動かせば、それに合わせ4本の足が器用に動いてくれる。
少し違和感があるが、まあそれも慣れだろう。
「クオリアさん…とナオさんですね…。
待ってましたこちらにどうぞ…。」
研究員が手を壁の端末にかざし、ドアが開く…生体認証か…。
「どうぞ」
ナオドラムとクオリアドラムは 足のローラーを使い中に入る。
「うわあ~」
広さは体育館程…その端にはサーバーや実験機器が並んでいて、真ん中は何かを動かすのか広く開けられている。
ナオドラムとクオリアドラムは、研究員に連れられ奥に行く。
「やあ クオリア…お久しぶりです…相変わらず早いですね…。
そちらが?」
「ああ…ナオだ…最終調整には彼が必要だ。」
「へぇ…あなたがそこまで言うなんて珍しいですね…『ツヴァインシュタイン』です。
『ツヴァイン』と呼んでください。」
「ええ…よろしく『ツヴァイン』…。」
ナオドラムとツヴァインが気ごちなく握手する。
「所で完全新造機体と聞いたんだが…機体はどちらに?」
DLと言うからには それなりに大きいはずなのだが、見渡しても機体が無い…。
「こちらに…。」
ツヴァインは コインロッカー位の小さな金庫から鍵とパスワードを入力し重い扉を開く。
「キューブ?」
ツヴァインがナオドラムに見せたのは、手のひらに収まる立方体の形で記録媒体と演算能力を一緒にした3D QN CPU…通称はキューブだ。
「いいえ…これは、どちらかと言えばAQBに近いでしょうか…。
ご存じの通り、AQBは空間ハッキングで電位差を作り 電気を発生させる機械…。
ですが、その大きさは50cmものサイズになってしまい…耐久性にも問題を抱えています。」
「ええ…でも装甲版の電池ボックスに入れていますよね…。」
ナオが言う。
AQBは破損して不安定になると破裂し、内部のパーツが散弾のように飛び散り、近くにいた人を巻き込む…それを防ぐ為の電池ボックスだ。
「そうです…ですが、こうなっているのは 量子エネルギー…『QE』を使う規格が無いからです。」
「量子エネルギー?」
聞き覚えが無い。
「前は分かりやすく情報エネルギーと言った。
すべての物は量子同士の情報交換で成り立っていて、物を移動させる現象もそれが元だ。
つまり物を動かせると言う事は エネルギーになる。」
クオリアが言う。
「その通り、なので事実上…演算能力=QEとなります。
そして演算すれば 空間ハッキングが出来ますので…。」
ツヴァインが研究室の真ん中にキューブを起き離れる。
「え?」
量子光がキューブを包み、キューブが増えて人の形を作っていく。
「接続さてたキューブが新しいキューブを作り、更にそのキューブが…と倍々に増えます。
まるで細胞の様に…。」
時間にして1分位で人形の胸部分が広がり、コックピットを形成し完成。
外見は黒鋼だが 機体全体が緑のクリアパーツで構成されている。
「ゼーガ…。」
オレが量子力学を学ぶ きっかけになったロボットアニメだ。
「確かデザインも元ネタはそれだ…ジガがデザインしたからな…。」
ああ なるほど…アニメマニアのジガのデザインか…。
「さて…この量子転換装甲は…」
ツヴァインが床に置いてある大型ハンマーを担《かつ》ぐ…。
その状態で一回転して威力を上たフルスイングで、新型の脛のクリアパーツに思いっきり命中した。
が、ツヴァインの腕を見ても衝撃が来て無い。
「通行止めか」
エレクトロンの空間ハッキングの1つ…飛んでくる物体の運動エネルギーを把握し、その運動エネルギーの変数を減算してちょうど0にするコード…。
どんな攻撃だろうが運動エネルギーさえ無ければ動かないのでダメージが無く、逆に装甲に触れた相手を運動エネルギーを上げて攻撃する事も出来る。
更に運動エネルギーを操れるなら空中で機体を固定する事も、亜光速まで加速する事も出来る。
まぁQEの処理能力があるので限界はあるのだろうが…。
「運動エネルギーを操れるだけでも相当強いんじゃないか?」
「ええ…まだ装甲ダメージの運動エネルギーを無力化する位しか出来ません…。
が…いずれは分解装甲との切り替えに対応させたり、空間ハッキング用の武器も持たせたいですね…。」
ナオの頭が高速でこの機体の可能性を考える…。
「整備性、運用コスト、信頼性、扱いやすさは?」
「整備は、正直いりません。
最初のキューブに戻して再構築させれば、元通り修復されるからです。
製造コストは、キューブ自体をコピー出来れば良いのですが、まだこちらが作らないと行けないので、高いです…。
半年かけて、これともう1機しかありませんし…。
運用コストは…かなり低いと思います…何せこのサイズでこの重さ…積載重量10tのエアトラS2にスペースを無視すれば、4万機は積める計算になります。
信頼性は 動かして見ない事にはまだ何とも…扱いやすさは 現状では 難易度が高すぎて人では扱えないレベルです。」
「だろうな…てことは逆に人外なら扱えるのか?」
「ええ…クオリアさんには乗って貰いました…が『生身の方が良い』との事でした…。」
「まぁそうなるよな…。
となると…『ネスト攻略作戦』でテストか?」
「ええ…これなら、1000mの海底でも十分に耐えられるはずです。」
そりゃ…水が機体を押しつぶす圧力も運動エネルギーだろうからな…。
「とは言え…一度に書き換えられる量はスペックに依存するんだろうから…分かった。
一週間後の出発前日までに、如何にかオレが使えるレベルまでデチューンする。
そちらに泊まり込みになるが良いか?」
「ええ…勿論…。」
「クオリアは?」
「私も行こう…ナオは頑張り過ぎるからな…。」
「それじゃあ…後は…クオリア…コイツ名前は?」
ナオドラムが機体を見て言う。
「まだ決まってない。
皆、型番のQDLと呼んでいる。
確か候補は、ミラージュ…蜃気楼、陽炎、ゴーストだったか?」
「どれも実体があやふやって意味だよな…。」
「そう…空間に『そこにDLがあると』認識させて実体化させているだけだからな…。」
「なら、亡霊…ファントムは如何だろう?」
「F-4戦闘機の名前か…また長く使われそうだな…私は問題無い…。
ツヴァインは?」
「『QDLファントム』ですか…良いと思いますよ…。」
「それでは 入国許可と労働の手続きをお願いします。」
ナオドラムが言う。
入国には 観光客と労働者の2種類があり、働く場合は 働き先とこちらで入国申請をしないと行けない。
「分かりました…明日から1週間で取って起きますね。」
「それでは…明日の午前中には着くと思う…では」
ナオドラムとクオリアドラムから離脱し、クオリアのパブリックスペースに戻った。
「楽しそうだな…。」
オレの少し笑った顔を見てクオリアが言う。
「新しいDLだぞ…今までのマイナーチェンジじゃ無く、新型の…。
テストパイロットをやってた技術者のオレとしては特にな…。」
少し興奮気味にオレが答える。
「だが、これが実現すれば、カバンの中にDLを持ち込めるようになる。
テロ組織としては これほど便利な物はないだろう…。」
クオリアがオレに警告を込めて言う。
「分かってるよ…空間ハッキングは扱いを間違えれば核兵器って…。」
分解をミスって核爆発を起こしているオレには文字通り痛い程良く分かっている。
「だから…デチューンするんだろう…後々の事も考えて…。」
オレがテストパイロットをして 作り上げたDLの最終型は、大量の命を奪い、そして各国に火種を増やして来た。
DLがあれば ある程度の戦力になる為、テロリストの兵器としてはよく使われ、多分 今の時代までDLが続いていると言う事は、犠牲者の総数ではAKのニコフおじさんも軽く超えているだろう…。
それを またやろうとしているんだから、狂人と言われても言い返せない。
まぁそれでも、今回の死者はワームであって人で無いのだから 幾分やり易い…。
量産が出来たら そこら辺も考えないとな…。
ナオとクオリアがVRからナオの部屋に戻り、2人は明日の準備を始めた。
ナオ…これから時間を取れるか?
3~4時間位かかるんだが…。」
食堂でARの食事を取っていると…後ろからクオリアが話しかけてきた。
「ああ良いけど…何をするんだ…。」
夕飯の味噌汁をすすりながら言う。
「私と一緒にVRで研究都市まで行って欲しい。」
「研究都市?砦研究都市か?」
砦都市の中の1都市か…名前からして研究特化都市だろうが…詳しい事は全く知らない。
「そう…ナオに見て欲しい物もある…。」
「分かった…それじゃあ」
ナオは急いで食べ始め…汚れた食器をARのアイテムウィンドウを開き アイテムボックスにぶち込んだ。
こういう時に洗わなくても良いARの食事は便利だ。
「じゃあどこでやる?クオリアの部屋か?」
「ナオの部屋が良い…そこでダイブしよう…。」
「分かった。」
ナオとクオリアは ナオの部屋に向かい階段をのぼり始めた。
相変わらず 何もない部屋で オレはベッドに寝転び、クオリアはベッドに背中を預けダイブする。
最近はここにクオリアがいる事も普通になり、事前連絡をしてちょくちょくやってくる。
特に ここに何かある訳でもないのだが…2人でダイブをする時はこっちでだ。
まずは クオリアの電脳空間を模したパブリックスペースに行く…。
「なあ…砦学園都市以外の砦都市を知らないんだが…どう言ったのがあるんだ?」
ナオが、移動用のドアに行き先を設定しているクオリアに聞く。
「じゃあ今回行く研究都市から…研究都市は大規模研究施設に力を入れている都市で、発明はここで生み出される。」
「あれ?でもここでも、空間ハッキングのコードを開発したよな…。」
それにエレクトロン製のDLの解析も学園都市がやっている。
「そう…でも、数式や計算上が主で、スペースの取る実験機材は 研究都市が圧倒的に多いので委託している。
今回の空間ハッキングも、理論や簡単な実験はこっちだが、大規模な最終実験は 研究都市で行われた。」
「へえ…じゃあ他は?」
「その次…研究が完成しても、実際に使ってみて安全かを証明する為の実証試験が必要だ。
そこで、砦実験都市で 実証試験を行う…。
この都市には 過剰な位のセーフティがあって…新しい技術を実際に都市内で運用して見てデータを取って改善案を出したりする。
ちなみに外部への拡散する事を防ぐ為に核で都市ごと焼却処分出来るようにもなってる。
「うわああ…ひでぇな」
昔もトニー王国は 実験都市を持っていたが ここまではしていなかったはず…。
何か流出したのか?
「生物実験もしているからな…エクスプロイトウイルス見たいなのが、拡散させたらマズイだろ…。」
「まあ…確かに」
「そして、実績が出来た技術を生み出しても それが出来る技術者がいなければ成り立たない。
その技術者を生産するのが砦学園都市…この都市は優秀な技術者を育てて各都市に送るのが目的なんだ。」
「じゃあリゾート都市は?」
「あそこは 娯楽特化都市…。
ここもそうだが、景色が良い所は少ないし、娯楽施設はARを複合した物が多い。
それに比べリゾート都市は、海に砂浜に遊園地に山とリアルでスペースを取る娯楽が多い。
観光地としては優秀で 砦都市の他の都市から年間で1万人位は 来るらしい。」
1万人…1日27人…エアトラ1機に乗れる人数位か…20万人の都市で交通状況が悪い 今の時代なら かなりの規模では無いのだろうか…。
「さて…盗聴が不可能な専用回線にした。
これから行く所は、新型のDLを開発している施設だ。
旧時代からのDL乗りの意見を聞きたい…。
それと…ナオに この機体のテストパイロットをして欲しい。」
「新型機か…再設計機か?」
ナオがクオリアに聞く…。
DLの中身は あらゆる面を考えあれが最適解で、改造した所で総合性能で上回る事は無く、疾風のように機動性を優先すれば 持てる武装の低下と扱い難さのデメリットが上乗せされる…炎龍も 火力と武装数を引き上げた結果 機動性が悪くなっている。
しかも、素材技術が上がって機体の更新をする際でも、規格さえ合っていれば簡単に付け替えが出来るので、新型と言っても精々が素材の向上による入れ替え更新と軽い見直し位になるはずだ。
「いや…完全新造機だ…」
「はい?」
完全新造?
クオリアが他の場所に移動する為のドアを開ける。
「さあ入って…。」
「ああ…。」
オレとクオリアは 暗闇のドアの中に入って行った。
ドアの中に入るとそこは倉庫だった…。
仮想世界?現実世界?
オレは少し混乱をして当たりを見回すと自分の手が見える。
山、谷とギザギザになっていてエアダクトのホースにも似た腕…。
アバターが変わった…いや…。
ドラムだ。
オレの隣にあるドラムも起動し、ディスプレイには クオリアの顔が表示されている。
「なあクオリア…ここはドラム経由で現実世界を見てるって事で良いんだよな…。」
「ああそうだ…研究所に向かおう。」
ドラムには4本の足があるが、オレには その間に仮想の2本足があるような感じで、こちらが仮想の足を動かせば、それに合わせ4本の足が器用に動いてくれる。
少し違和感があるが、まあそれも慣れだろう。
「クオリアさん…とナオさんですね…。
待ってましたこちらにどうぞ…。」
研究員が手を壁の端末にかざし、ドアが開く…生体認証か…。
「どうぞ」
ナオドラムとクオリアドラムは 足のローラーを使い中に入る。
「うわあ~」
広さは体育館程…その端にはサーバーや実験機器が並んでいて、真ん中は何かを動かすのか広く開けられている。
ナオドラムとクオリアドラムは、研究員に連れられ奥に行く。
「やあ クオリア…お久しぶりです…相変わらず早いですね…。
そちらが?」
「ああ…ナオだ…最終調整には彼が必要だ。」
「へぇ…あなたがそこまで言うなんて珍しいですね…『ツヴァインシュタイン』です。
『ツヴァイン』と呼んでください。」
「ええ…よろしく『ツヴァイン』…。」
ナオドラムとツヴァインが気ごちなく握手する。
「所で完全新造機体と聞いたんだが…機体はどちらに?」
DLと言うからには それなりに大きいはずなのだが、見渡しても機体が無い…。
「こちらに…。」
ツヴァインは コインロッカー位の小さな金庫から鍵とパスワードを入力し重い扉を開く。
「キューブ?」
ツヴァインがナオドラムに見せたのは、手のひらに収まる立方体の形で記録媒体と演算能力を一緒にした3D QN CPU…通称はキューブだ。
「いいえ…これは、どちらかと言えばAQBに近いでしょうか…。
ご存じの通り、AQBは空間ハッキングで電位差を作り 電気を発生させる機械…。
ですが、その大きさは50cmものサイズになってしまい…耐久性にも問題を抱えています。」
「ええ…でも装甲版の電池ボックスに入れていますよね…。」
ナオが言う。
AQBは破損して不安定になると破裂し、内部のパーツが散弾のように飛び散り、近くにいた人を巻き込む…それを防ぐ為の電池ボックスだ。
「そうです…ですが、こうなっているのは 量子エネルギー…『QE』を使う規格が無いからです。」
「量子エネルギー?」
聞き覚えが無い。
「前は分かりやすく情報エネルギーと言った。
すべての物は量子同士の情報交換で成り立っていて、物を移動させる現象もそれが元だ。
つまり物を動かせると言う事は エネルギーになる。」
クオリアが言う。
「その通り、なので事実上…演算能力=QEとなります。
そして演算すれば 空間ハッキングが出来ますので…。」
ツヴァインが研究室の真ん中にキューブを起き離れる。
「え?」
量子光がキューブを包み、キューブが増えて人の形を作っていく。
「接続さてたキューブが新しいキューブを作り、更にそのキューブが…と倍々に増えます。
まるで細胞の様に…。」
時間にして1分位で人形の胸部分が広がり、コックピットを形成し完成。
外見は黒鋼だが 機体全体が緑のクリアパーツで構成されている。
「ゼーガ…。」
オレが量子力学を学ぶ きっかけになったロボットアニメだ。
「確かデザインも元ネタはそれだ…ジガがデザインしたからな…。」
ああ なるほど…アニメマニアのジガのデザインか…。
「さて…この量子転換装甲は…」
ツヴァインが床に置いてある大型ハンマーを担《かつ》ぐ…。
その状態で一回転して威力を上たフルスイングで、新型の脛のクリアパーツに思いっきり命中した。
が、ツヴァインの腕を見ても衝撃が来て無い。
「通行止めか」
エレクトロンの空間ハッキングの1つ…飛んでくる物体の運動エネルギーを把握し、その運動エネルギーの変数を減算してちょうど0にするコード…。
どんな攻撃だろうが運動エネルギーさえ無ければ動かないのでダメージが無く、逆に装甲に触れた相手を運動エネルギーを上げて攻撃する事も出来る。
更に運動エネルギーを操れるなら空中で機体を固定する事も、亜光速まで加速する事も出来る。
まぁQEの処理能力があるので限界はあるのだろうが…。
「運動エネルギーを操れるだけでも相当強いんじゃないか?」
「ええ…まだ装甲ダメージの運動エネルギーを無力化する位しか出来ません…。
が…いずれは分解装甲との切り替えに対応させたり、空間ハッキング用の武器も持たせたいですね…。」
ナオの頭が高速でこの機体の可能性を考える…。
「整備性、運用コスト、信頼性、扱いやすさは?」
「整備は、正直いりません。
最初のキューブに戻して再構築させれば、元通り修復されるからです。
製造コストは、キューブ自体をコピー出来れば良いのですが、まだこちらが作らないと行けないので、高いです…。
半年かけて、これともう1機しかありませんし…。
運用コストは…かなり低いと思います…何せこのサイズでこの重さ…積載重量10tのエアトラS2にスペースを無視すれば、4万機は積める計算になります。
信頼性は 動かして見ない事にはまだ何とも…扱いやすさは 現状では 難易度が高すぎて人では扱えないレベルです。」
「だろうな…てことは逆に人外なら扱えるのか?」
「ええ…クオリアさんには乗って貰いました…が『生身の方が良い』との事でした…。」
「まぁそうなるよな…。
となると…『ネスト攻略作戦』でテストか?」
「ええ…これなら、1000mの海底でも十分に耐えられるはずです。」
そりゃ…水が機体を押しつぶす圧力も運動エネルギーだろうからな…。
「とは言え…一度に書き換えられる量はスペックに依存するんだろうから…分かった。
一週間後の出発前日までに、如何にかオレが使えるレベルまでデチューンする。
そちらに泊まり込みになるが良いか?」
「ええ…勿論…。」
「クオリアは?」
「私も行こう…ナオは頑張り過ぎるからな…。」
「それじゃあ…後は…クオリア…コイツ名前は?」
ナオドラムが機体を見て言う。
「まだ決まってない。
皆、型番のQDLと呼んでいる。
確か候補は、ミラージュ…蜃気楼、陽炎、ゴーストだったか?」
「どれも実体があやふやって意味だよな…。」
「そう…空間に『そこにDLがあると』認識させて実体化させているだけだからな…。」
「なら、亡霊…ファントムは如何だろう?」
「F-4戦闘機の名前か…また長く使われそうだな…私は問題無い…。
ツヴァインは?」
「『QDLファントム』ですか…良いと思いますよ…。」
「それでは 入国許可と労働の手続きをお願いします。」
ナオドラムが言う。
入国には 観光客と労働者の2種類があり、働く場合は 働き先とこちらで入国申請をしないと行けない。
「分かりました…明日から1週間で取って起きますね。」
「それでは…明日の午前中には着くと思う…では」
ナオドラムとクオリアドラムから離脱し、クオリアのパブリックスペースに戻った。
「楽しそうだな…。」
オレの少し笑った顔を見てクオリアが言う。
「新しいDLだぞ…今までのマイナーチェンジじゃ無く、新型の…。
テストパイロットをやってた技術者のオレとしては特にな…。」
少し興奮気味にオレが答える。
「だが、これが実現すれば、カバンの中にDLを持ち込めるようになる。
テロ組織としては これほど便利な物はないだろう…。」
クオリアがオレに警告を込めて言う。
「分かってるよ…空間ハッキングは扱いを間違えれば核兵器って…。」
分解をミスって核爆発を起こしているオレには文字通り痛い程良く分かっている。
「だから…デチューンするんだろう…後々の事も考えて…。」
オレがテストパイロットをして 作り上げたDLの最終型は、大量の命を奪い、そして各国に火種を増やして来た。
DLがあれば ある程度の戦力になる為、テロリストの兵器としてはよく使われ、多分 今の時代までDLが続いていると言う事は、犠牲者の総数ではAKのニコフおじさんも軽く超えているだろう…。
それを またやろうとしているんだから、狂人と言われても言い返せない。
まぁそれでも、今回の死者はワームであって人で無いのだから 幾分やり易い…。
量産が出来たら そこら辺も考えないとな…。
ナオとクオリアがVRからナオの部屋に戻り、2人は明日の準備を始めた。
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