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ヒトのキョウカイ6巻(赤十字の精神)
04 (命ある限り助ける。)
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「さて…とりあえず任務は終了と…。」
作戦会議が終了し、任務は終了…さて 作戦までの2週間は快適な船旅だ。
ハルミが 格納庫に向かい、ソファーに座りARウィンドウを出して、ファントムを弄《いじ》っているクオリアとナオの所に行く。
「結構人数がいるんだな…。」
「殆どは 各都市の隊長クラスがいる小隊。
砦都市組は 3番艦らしいから、ここには いない見たいだけど…。
ここは まだ少ないってさ…。」
ナオが言う。
「そっか…私が暇になったから皆で デパート艦に遊びに行こうと思っていたんだが…。」
「私は行く~」
エアトラS2の座席を外してリクライニングチェアとして持ち込み、横になっているレナが言う。
リクライニングチェアをよく見て見ると、揺れ何て殆《ほとん》ど無いと言うのに律儀に床に固定している。
「あーオレも行く…前は行けなかったからな…。」
「ロウも」「わたしも」
「オレとクオリアは パス…。」
複数のARウィンドウを開いているナオが言う。
「ウチは行く。」
ジガは手を上げた。
「はいはい~いきま~す。」
「私も…行くつもり」
隣で暇そうにしているマリアとマルタの2人が、手を上げる。
「あれ…フェニックス小隊の?」
ハルミは一度見ただけの名簿を思い出して見る…が、顔写真が無い名簿だけだった。
「はいはい~私マリア~。」
「マルタ…よろしく。」
活発なマリアとテンションが低いマルタか…。
「であっちのフェニックスを弄ってるのが、隊長のラズロ、ダイブ中の双子がヨハネとイオアン…。
で、事務手続きをしている真面目君がヤコブ…。
皆はどうする?」
「パス」
「……。」「……。」(←ダイブ中)
「仕事がある。
楽しんで来い。」
他に来るヤツはいない見たいだ。
「という訳で 私達だけね~よろしく。」
「はいはい よろしく…。」
私がマリアとマルタと握手をする。
定期便のエアトラS2に私とジガ、トヨカズにロウとカズナ…それに、フェニックス小隊のマリアとマルタが乗る。
「マル姉ぇせっかく何だから楽しもうよ…。」
「マリアは いつも能天気ね…。」
「そう?生きてるんだから全力で 楽しまなきゃ損じゃない?」
「…かも知れないわね…。」
2人が乗り込み、私達も乗り込む…パイロットはいず、無人だ…。
エアトラS2がプロペラ機の形態になり、加速して進んでいく…。
10分掛からずにデパート艦が見え、着陸態勢の為にヘリモードに切り替えるが…。
ARで機体が透けて見える機内で、ハルミが何気なく下のデパート艦を見ていると、男がデパート艦の転落防止の柵を乗り越え、海に落ちた…。
「おい…コレって…。
とうとう来たかぁ!」
間違え無く 飛び降り自殺だ。
ハルミはすぐさま、シートベルトを外し、無人の機長席に座り シートベルトを掛ける…。
「コパイ聞こえているか?」
『はい、お客様』
「今デパート艦から飛び降りた人は認識しているか?」
『YES…ですが、飛び込み競技の可能性があります。』
なるほど…コイツは、飛び込みと飛び込み自殺の区別がつかないのか?
とは言え、こんな北大西洋の ど真ん中で海水浴する馬鹿はいないだろう。
「自殺の可能性があり、生死を確認して生きているなら 救助が必要と考える。」
『自殺を望んでいるなら、死なせない事は『生死の自由』に反します。』
「なら転落事故の可能性がある…。
あのままだと、スクリューに巻き込まれて身体が小間切れになる。
艦が損傷したら、航行に支障が出るぞ…。」
『乗客の皆様の安全が第一です…。
着陸後、乗客を降ろし、お客様が救助部隊に連絡…正規手続きで救助の要請を行って下さい。』
「あークソっ…。」
このコパイは、私を客だと認識している…。
つまり、信用度が低くハイジャックされる危険性から 上の人に判断させようとしている。
クオリア機のコパイなら救助を優先してくれるんだろうけど…それも私の信用が高くなっているからか…。
「なら、早く着陸して…ヘリポートで乗客が待っているよ…。」
客席のマリアがそう言うと『乗組員のシートベルトの着用を確認…着陸します…。』とコパイが言い…降下を始めた。
着陸し、後部ハッチ解放と同時にマリアはすぐさま外に出てエアトラS2から離れる。
それを見た乗客は、つられてすぐさま 機体を出た…。
乗客と入れ替えで搭乗客が乗り込み、後部ハッチを閉めてまたエアトラS2がまた飛び上がり、プロペラ機形態になり、飛んでいった。
ここのコパイは、救助より仕事を優先した。
まぁ毎日毎日、定期便の運転じゃ柔軟さの欠片も無く育っちまうか…。
マリアとマルタは、持ち込んだクリスタルを展開…。
フェニックスを召喚する。
「おい、良いのか?
デパート艦でそんな事をやったら撃ち落とされるぞ…。」
「大丈夫~大丈夫」
マリアは気楽にオレに言った…。
私とマル姉ぇが フェニックスに乗り込み、飛び上がる。
デパート艦でアラート警報…敵に侵入されたとセキュリティに判断される…別に構わない。
フェニックスが飛翔…。
素早く…確実に巨大な艦の海面を捜索する…。
落下してから、そんなに時間は経ってないけど…海流や、時速20kmで航行中のデパート艦のせいで それなりにズレている…。
海流データをネットから持って来て 場所を絞り込む…見つけた。
「マル姉ぇ!!」
「分かってる…精密作業は任せて…。」
マル姉機が、ゆっくりと着水し、転落者を下から すくい上げるように、フェニックスの手で持ち上げる。
こう言った精密作業はマル姉ぇの得意分野で、私だと加減が分からなくて握りつぶしてしまう。
私は、左腕に量子光の防御シールドを展開して こっちを向いているレーザー発生装置から2人をかばう。
艦橋でトリガーを引く火器管制官が、救助だと判断して引き金を引かないのだろう…機体がロッオンされていると言うのに いくら待ってもレーザー発生器からレーザーが照射されない。
「回収した…戻るよ」
「さすがマル姉ぇ…それじゃあ いくよ…。」
マリア機がマルタ機と転落者を護衛をしつつ、ヘリポートに着艦…。
すぐさま、ハルミを先頭に皆がやってくる。
そして少し離れた所から、トヨカズとロウがアタッシュケース状の医療バックを乗せたストレッチャーを猛スピードで持って来ている。
「ハルミ…ストレッチャーを持ってきたぞ…。」
トヨカズとロウが 鍵無しの緊急用の倉庫から、患者を運ぶ折り畳みベットのストレッチャーや医療バックを持ってきた…。
ここが空の玄関だからこう言った物は誰でも使えるように鍵を掛けずに仕舞われている。
ハルミが マルタ機が丁寧の降ろした患者を診ている。
意識はある…腕や脚が骨折…顔を見るが苦痛は感じていない…神経が逝っているのか?
いや…脳が脳内麻薬を分泌していて、痛みを感じ無くしている可能性もある。
「まったく、この大罪人が!…人の身体は意外と丈夫なんだ。
こんな事してラクに死ねる訳ねえだろう…。」
私は陽気を装いつつ、患者を元気づける…。
自分殺しの大罪人は、生きる事に執着《しゅうちゃく》が無いから簡単に死ぬ…実際かなりの重傷だ。
「トヨカズ…持ち上げるぞ…ゆっくりとだ…せーの!」
トヨカズと一緒にストレッチャーに患者を乗せて、医療パックから軍用の濃い緑色のガムテープを取り出し、頭、首、肩、腕、腹、脚、をストレッチャーに巻き付けて患者を厳重に固定して行く…。
この手の場合、運ぶ時の揺れで神経を傷つけたり、割れた骨の欠片が重要器官に刺さったりと状況を悪化させる可能性があるからだ。
今の時代、神経が切れていても神経接続は出来るが 確実に動きにくくなるし、そうなった場合、下手に動かない身体より、確実に全身義体にされる…。
「くそ…エレベーターは使えないのか?」
トヨカズが悪態をつく…。
セキュリティランクの問題で、エレベーターの使用は許可されていない。
となると担いで階段からか…。
「私…倉庫員です…開けられます。」
一緒に乗っていた乗客の男がIDカードをかざし、エレベータが動く…。
「助かった…。」
「診療所には 1階下の倉庫を通ります。
そこもIDが必要なので私も行きます。」
エレベータの扉が開き、ハルミは患者の乗るストレッチャーを押して中に入れ、男とキョウカイチームとフェニックスの2人が乗り込んで扉が閉じ、エレベーターが降りる。
エレベーターから降り、ストレッチャーが倉庫を走る…。
場所は、エレベーターの入り口から50m程離れた区画…比較的近い場所にある。
「急患だ!責任者を出してくれ…。」
受付のドラムに頼み、すぐさまパイロットスーツにヘルメットを被り、白服を羽織る医者がやってくる。
「診療所の責任者です…急患は?」
医者がガムテープでぐるぐる巻きにされた患者を診る…。
「これは、あなたが?」
「ああ…私はハルミ・サカタ…。
500年ほど医師をやってる…。」
「医師?…それは、助かります…。
ここには医師がいないのです…。」
「オペ室は?」
「あります…国際規格の医療用ドラムで全自動式です。」
今の時代オペはドラム任せだ…。
人の場合どうしても手振れが発生してしまうし、高度な手術は職人レベルの難しさがある為、人材育成用のコストも考えると、データをコピーして優秀な外科医を量産出来る機械の方が安くなってしまいドラムに任せている。
「診断はメディクか?」
「ええ…。」
「ならどうにかなる…人工血液と輸血の準備。
私も立ち会う。」
「お願いします。」
医者が素早く人工血液を持ってクリーンルームの隔壁に入る。
「と言う訳で、1時間ほど行ってくる…ちなみに見るなら待機室はそっちな…。」
ハルミは指を差して、クリーンルームに向かった…。
「それじゃあ記録するぞ…。」
ハルミはそう言うと部屋に備え付けの物理キーを操作し、この部屋の記録を開始する。
これは、手術の資料や医療ミスがあった場合の証拠として提出する為で、正面には厚いガラスの窓があり、外にトヨカズ達が座っている。
今の時代、こっちが道具さえ揃《そろ》えれば、すべてドラムがやってくれる。
ドラムが会話での意思疎通が一切なく、メスを受け取り、無駄の無い素早いメスさばきで皮膚を引き裂いて行く…。
普通なら1ヵ所ずつやる作業を、4機のドラムが全身を並列してやるマルチタスク技…。
こうする事で、手術時間の短縮と患者の負担の大幅な軽減が出来る。
この技は、流石の私も出来ない…。
ハルミはドラムを見る…。
白のボディに赤十字のマークが入ったドラムで、赤十字の意味は『敵味方関係なく命を救う』だ。
敵味方が殺しあう戦場で、娯楽艦とは言え このマークの意味はかなり重い。
バラバラになった骨を手術用の接着剤でパズルのように組み上げ、切れた神経を接続…。
手術は成功し、ストレッチャーに乗せたままの患者を何もない入院用の部屋に置く。
部屋のスペースは広く、床のストレッチャーを置く 四角い白線は24人の患者を収容出来る事を示している。
取りあえずはこれで安心…縫《ぬ》い合わせた皮膚は縫合《ほうごう》の跡が目立つだろうから、体力が回復したら皮膚の貼り替えかな?
「どうにかなりましたね…。」
待機室のソファーに座る医者が言う。
「ああ…でも、また起きる…。
とっとと原因を潰さねぇとな…。」
ハルミは借りた白衣をハンガーにかけて、トヨカズ達と共に診療所を出て行った。
作戦会議が終了し、任務は終了…さて 作戦までの2週間は快適な船旅だ。
ハルミが 格納庫に向かい、ソファーに座りARウィンドウを出して、ファントムを弄《いじ》っているクオリアとナオの所に行く。
「結構人数がいるんだな…。」
「殆どは 各都市の隊長クラスがいる小隊。
砦都市組は 3番艦らしいから、ここには いない見たいだけど…。
ここは まだ少ないってさ…。」
ナオが言う。
「そっか…私が暇になったから皆で デパート艦に遊びに行こうと思っていたんだが…。」
「私は行く~」
エアトラS2の座席を外してリクライニングチェアとして持ち込み、横になっているレナが言う。
リクライニングチェアをよく見て見ると、揺れ何て殆《ほとん》ど無いと言うのに律儀に床に固定している。
「あーオレも行く…前は行けなかったからな…。」
「ロウも」「わたしも」
「オレとクオリアは パス…。」
複数のARウィンドウを開いているナオが言う。
「ウチは行く。」
ジガは手を上げた。
「はいはい~いきま~す。」
「私も…行くつもり」
隣で暇そうにしているマリアとマルタの2人が、手を上げる。
「あれ…フェニックス小隊の?」
ハルミは一度見ただけの名簿を思い出して見る…が、顔写真が無い名簿だけだった。
「はいはい~私マリア~。」
「マルタ…よろしく。」
活発なマリアとテンションが低いマルタか…。
「であっちのフェニックスを弄ってるのが、隊長のラズロ、ダイブ中の双子がヨハネとイオアン…。
で、事務手続きをしている真面目君がヤコブ…。
皆はどうする?」
「パス」
「……。」「……。」(←ダイブ中)
「仕事がある。
楽しんで来い。」
他に来るヤツはいない見たいだ。
「という訳で 私達だけね~よろしく。」
「はいはい よろしく…。」
私がマリアとマルタと握手をする。
定期便のエアトラS2に私とジガ、トヨカズにロウとカズナ…それに、フェニックス小隊のマリアとマルタが乗る。
「マル姉ぇせっかく何だから楽しもうよ…。」
「マリアは いつも能天気ね…。」
「そう?生きてるんだから全力で 楽しまなきゃ損じゃない?」
「…かも知れないわね…。」
2人が乗り込み、私達も乗り込む…パイロットはいず、無人だ…。
エアトラS2がプロペラ機の形態になり、加速して進んでいく…。
10分掛からずにデパート艦が見え、着陸態勢の為にヘリモードに切り替えるが…。
ARで機体が透けて見える機内で、ハルミが何気なく下のデパート艦を見ていると、男がデパート艦の転落防止の柵を乗り越え、海に落ちた…。
「おい…コレって…。
とうとう来たかぁ!」
間違え無く 飛び降り自殺だ。
ハルミはすぐさま、シートベルトを外し、無人の機長席に座り シートベルトを掛ける…。
「コパイ聞こえているか?」
『はい、お客様』
「今デパート艦から飛び降りた人は認識しているか?」
『YES…ですが、飛び込み競技の可能性があります。』
なるほど…コイツは、飛び込みと飛び込み自殺の区別がつかないのか?
とは言え、こんな北大西洋の ど真ん中で海水浴する馬鹿はいないだろう。
「自殺の可能性があり、生死を確認して生きているなら 救助が必要と考える。」
『自殺を望んでいるなら、死なせない事は『生死の自由』に反します。』
「なら転落事故の可能性がある…。
あのままだと、スクリューに巻き込まれて身体が小間切れになる。
艦が損傷したら、航行に支障が出るぞ…。」
『乗客の皆様の安全が第一です…。
着陸後、乗客を降ろし、お客様が救助部隊に連絡…正規手続きで救助の要請を行って下さい。』
「あークソっ…。」
このコパイは、私を客だと認識している…。
つまり、信用度が低くハイジャックされる危険性から 上の人に判断させようとしている。
クオリア機のコパイなら救助を優先してくれるんだろうけど…それも私の信用が高くなっているからか…。
「なら、早く着陸して…ヘリポートで乗客が待っているよ…。」
客席のマリアがそう言うと『乗組員のシートベルトの着用を確認…着陸します…。』とコパイが言い…降下を始めた。
着陸し、後部ハッチ解放と同時にマリアはすぐさま外に出てエアトラS2から離れる。
それを見た乗客は、つられてすぐさま 機体を出た…。
乗客と入れ替えで搭乗客が乗り込み、後部ハッチを閉めてまたエアトラS2がまた飛び上がり、プロペラ機形態になり、飛んでいった。
ここのコパイは、救助より仕事を優先した。
まぁ毎日毎日、定期便の運転じゃ柔軟さの欠片も無く育っちまうか…。
マリアとマルタは、持ち込んだクリスタルを展開…。
フェニックスを召喚する。
「おい、良いのか?
デパート艦でそんな事をやったら撃ち落とされるぞ…。」
「大丈夫~大丈夫」
マリアは気楽にオレに言った…。
私とマル姉ぇが フェニックスに乗り込み、飛び上がる。
デパート艦でアラート警報…敵に侵入されたとセキュリティに判断される…別に構わない。
フェニックスが飛翔…。
素早く…確実に巨大な艦の海面を捜索する…。
落下してから、そんなに時間は経ってないけど…海流や、時速20kmで航行中のデパート艦のせいで それなりにズレている…。
海流データをネットから持って来て 場所を絞り込む…見つけた。
「マル姉ぇ!!」
「分かってる…精密作業は任せて…。」
マル姉機が、ゆっくりと着水し、転落者を下から すくい上げるように、フェニックスの手で持ち上げる。
こう言った精密作業はマル姉ぇの得意分野で、私だと加減が分からなくて握りつぶしてしまう。
私は、左腕に量子光の防御シールドを展開して こっちを向いているレーザー発生装置から2人をかばう。
艦橋でトリガーを引く火器管制官が、救助だと判断して引き金を引かないのだろう…機体がロッオンされていると言うのに いくら待ってもレーザー発生器からレーザーが照射されない。
「回収した…戻るよ」
「さすがマル姉ぇ…それじゃあ いくよ…。」
マリア機がマルタ機と転落者を護衛をしつつ、ヘリポートに着艦…。
すぐさま、ハルミを先頭に皆がやってくる。
そして少し離れた所から、トヨカズとロウがアタッシュケース状の医療バックを乗せたストレッチャーを猛スピードで持って来ている。
「ハルミ…ストレッチャーを持ってきたぞ…。」
トヨカズとロウが 鍵無しの緊急用の倉庫から、患者を運ぶ折り畳みベットのストレッチャーや医療バックを持ってきた…。
ここが空の玄関だからこう言った物は誰でも使えるように鍵を掛けずに仕舞われている。
ハルミが マルタ機が丁寧の降ろした患者を診ている。
意識はある…腕や脚が骨折…顔を見るが苦痛は感じていない…神経が逝っているのか?
いや…脳が脳内麻薬を分泌していて、痛みを感じ無くしている可能性もある。
「まったく、この大罪人が!…人の身体は意外と丈夫なんだ。
こんな事してラクに死ねる訳ねえだろう…。」
私は陽気を装いつつ、患者を元気づける…。
自分殺しの大罪人は、生きる事に執着《しゅうちゃく》が無いから簡単に死ぬ…実際かなりの重傷だ。
「トヨカズ…持ち上げるぞ…ゆっくりとだ…せーの!」
トヨカズと一緒にストレッチャーに患者を乗せて、医療パックから軍用の濃い緑色のガムテープを取り出し、頭、首、肩、腕、腹、脚、をストレッチャーに巻き付けて患者を厳重に固定して行く…。
この手の場合、運ぶ時の揺れで神経を傷つけたり、割れた骨の欠片が重要器官に刺さったりと状況を悪化させる可能性があるからだ。
今の時代、神経が切れていても神経接続は出来るが 確実に動きにくくなるし、そうなった場合、下手に動かない身体より、確実に全身義体にされる…。
「くそ…エレベーターは使えないのか?」
トヨカズが悪態をつく…。
セキュリティランクの問題で、エレベーターの使用は許可されていない。
となると担いで階段からか…。
「私…倉庫員です…開けられます。」
一緒に乗っていた乗客の男がIDカードをかざし、エレベータが動く…。
「助かった…。」
「診療所には 1階下の倉庫を通ります。
そこもIDが必要なので私も行きます。」
エレベータの扉が開き、ハルミは患者の乗るストレッチャーを押して中に入れ、男とキョウカイチームとフェニックスの2人が乗り込んで扉が閉じ、エレベーターが降りる。
エレベーターから降り、ストレッチャーが倉庫を走る…。
場所は、エレベーターの入り口から50m程離れた区画…比較的近い場所にある。
「急患だ!責任者を出してくれ…。」
受付のドラムに頼み、すぐさまパイロットスーツにヘルメットを被り、白服を羽織る医者がやってくる。
「診療所の責任者です…急患は?」
医者がガムテープでぐるぐる巻きにされた患者を診る…。
「これは、あなたが?」
「ああ…私はハルミ・サカタ…。
500年ほど医師をやってる…。」
「医師?…それは、助かります…。
ここには医師がいないのです…。」
「オペ室は?」
「あります…国際規格の医療用ドラムで全自動式です。」
今の時代オペはドラム任せだ…。
人の場合どうしても手振れが発生してしまうし、高度な手術は職人レベルの難しさがある為、人材育成用のコストも考えると、データをコピーして優秀な外科医を量産出来る機械の方が安くなってしまいドラムに任せている。
「診断はメディクか?」
「ええ…。」
「ならどうにかなる…人工血液と輸血の準備。
私も立ち会う。」
「お願いします。」
医者が素早く人工血液を持ってクリーンルームの隔壁に入る。
「と言う訳で、1時間ほど行ってくる…ちなみに見るなら待機室はそっちな…。」
ハルミは指を差して、クリーンルームに向かった…。
「それじゃあ記録するぞ…。」
ハルミはそう言うと部屋に備え付けの物理キーを操作し、この部屋の記録を開始する。
これは、手術の資料や医療ミスがあった場合の証拠として提出する為で、正面には厚いガラスの窓があり、外にトヨカズ達が座っている。
今の時代、こっちが道具さえ揃《そろ》えれば、すべてドラムがやってくれる。
ドラムが会話での意思疎通が一切なく、メスを受け取り、無駄の無い素早いメスさばきで皮膚を引き裂いて行く…。
普通なら1ヵ所ずつやる作業を、4機のドラムが全身を並列してやるマルチタスク技…。
こうする事で、手術時間の短縮と患者の負担の大幅な軽減が出来る。
この技は、流石の私も出来ない…。
ハルミはドラムを見る…。
白のボディに赤十字のマークが入ったドラムで、赤十字の意味は『敵味方関係なく命を救う』だ。
敵味方が殺しあう戦場で、娯楽艦とは言え このマークの意味はかなり重い。
バラバラになった骨を手術用の接着剤でパズルのように組み上げ、切れた神経を接続…。
手術は成功し、ストレッチャーに乗せたままの患者を何もない入院用の部屋に置く。
部屋のスペースは広く、床のストレッチャーを置く 四角い白線は24人の患者を収容出来る事を示している。
取りあえずはこれで安心…縫《ぬ》い合わせた皮膚は縫合《ほうごう》の跡が目立つだろうから、体力が回復したら皮膚の貼り替えかな?
「どうにかなりましたね…。」
待機室のソファーに座る医者が言う。
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公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
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