⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

文字の大きさ
28 / 60
ヒトのキョウカイ1巻(異世界転生したら未来でした)

28 (楽園と責任)

しおりを挟む
「ええ…その事で今まで調べていたんだから…」
 ボイスチャットで話す ナオにレナは答える。
 だけど、その後にクオリアが割り込み、レナは沈黙した。
 ナオにコールしたのも『何処どこに逃げる?』と言う避難する為の電話だったのに、ナオとクオリアは事態の解決に当たろうとしている。

 レナはニューアキバにある、20世紀シネマ館に避難していた。
 他に常連の客に近くにいた人など様々だ。
 そして、営業開始以来の人口密度になった映画館の館長のマスターは、接客をドラムちゃんに任せ1人屋上に行っている。

「うぉぉ実際のDLの戦闘だ…映像に収めるぞぉぉ」
 興奮気味のスプリングは屋上からムービーカメラでDLの戦闘を撮影する。
 今の映画撮影はすべてVR上で済ませる為、現実世界で撮影が出来る数少ないチャンスだ。
「もっと横…アングルが…。」
 戦闘しているのは、白と赤に塗装されたニューアキバのゲートに設置されたDL…。
 このDLは、文化遺産の塊であるニューアキバを守る為に商業区画の『常連で本職のDLマニア』や『アニメファン』『プラモファン』などが結集して作った機体だ。
 機体はスピーダー型がベースで、白の機体には頭にV字アンテナがあり、赤い機体は角のようなアンテナがついている。
 それに搭乗するパイロットもVR上でのDL戦闘ではトップクラスの成績を叩き出すゲーマーだ。
『私にも敵が見える』
「そりゃレーダー使ってるからね…。」
『たかが ワーム1匹…押し出してやる』
「真正面から当たったら死ぬから…。」
 スプリングは突っ込みを入れつつもしっかりと撮影していた。

 対して、レナは先ほどからARウィンドウを開き、アントニー経由で送られてくるクオリアの情報を見ていた。
 そこには、冷静に淡々とワームを処理している クオリア機の視界情報だ。
 クオリアの情報によれば、限定解除しないと対応できない相手…なのだが、運営はもちろん義父のアントニーですら意見が割れている。
 アントニーは限定解除を認めているが、他の役員は『エレクトロンが解除された時の被害規模が分からない。』
『オーパーツを使用しないと言う規則に違反する。
 例え住民が生き残ったとしても都市の理念が崩壊してしまう』
 などを上げている。
 アントニーも『強権』を使って無理やり可決すれば良いのに合意を取ろうとする。
 私には、彼らが言っている事の意味が分からないけど、このままだったら都市は壊滅する。
 クオリア機の視界情報画面右上には、機体ステータスが色分けされていて、コックピットや腹部は緑だが手足は黄色表示だ。
 クオリアは、機体に負荷をかけないように丁寧ていねいに扱っているが、それでもジャンプによる衝撃など ごく僅《わず》かで あるものの蓄積ダメージとして確実に機体に掛かる…。
 クオリアが戦えるのもそう長くはない。
(アントニー早く『強権』を使って…じゃないとクオリアが…。)
 いや…もう1人『強権』が扱える人物がいる…私だ。
 でもそれを使えば私は、この都市の運営の一員になりもう暢気のんきに遊んでいられなくなる。
 やっと手に入れた快適な生活をここで手放すの?
 衣食住と自由に動け、無制限に学べる学生と言う身軽な立場…どれもあの都市にいたらどれだけのお金が必要だろう?
 いやそもそも、これは…限定解除は正しい事なの?
 私より遥《はる》かに頭の良いアントニーや運営の人間が長々と議論する程の問題なのだ…。
 私が『強権』を使う事でトドメを刺す可能性もある。
 あー馬鹿な私が憎い…。

 戦闘から…1時間…経過…。
 1層での戦闘を強いられたクオリア達はエレベータ下を中心に戦闘を行い水際で防いでいた。
 24機いた中隊は12機まで減らし、残りの機体は撃墜された味方機から手足を取り換える事で何とか維持している。
 DLの特徴の1つ『前線共食い整備』だ。
 腕、脚、頭部、バックパック、武器を撃墜された機体から調達する事で生きている機体の戦闘可能時間を伸ばす方法だ。
 だが、スピーダーを使っているのがクオリアのみ なので、クオリアはパーツ交換が出来ない。
 いや…厳密には、出来るのだが、スピード特化の機体に汎用型のベックのパーツをつけた所で性能が落ちるだけだ…。
 また1機が疲労のせいで反応が遅れる…クオリアはフォースネット経由でその機体自体に誤情報を流す事で転倒させ回避させる。
 そして…彼の機体が立ち上がらない…。
 機体チェックはイエローだが、まだ許容値…問題はパイロットか?バイタルチェック…気絶?
「まずい」
 クオリア機はワームの死骸を飛び越え、パイロットの元に向かう…がワームの突進攻撃がコックピットに直撃した。
 直撃箇所の耐弾ジェルの密度が増し、衝撃を受け止め同時に熱に変換する…。
 Sクラスの複合装甲は装甲が歪むものの直撃に耐え、コックピットブロックに接続されている 手 足に頭、バックパックが オートパージされ、コックピットブロックが滑るようにして地面に転がった。
 衝撃を熱変換したコックピットは高熱になっており、空気が熱せられ陽炎かげろうが見える。
『ブロックの回収…急げ!』
 ジェニーの声が聞こえる。
 幸いパイロットは過労による気絶で無事…名前を見てみると『サイレントキラー事件』の取調べをしたブライアンだった。
 パイロットスーツを着用しない背広姿での高G戦闘と疲労で気絶したのだ。
 そして残りのDLは11機…。

 また1機がやられた…。
 やられた原因は過労による気絶だ。
 ワームをクオリアが引き付け、コックピットブロックを味方が回収する。
 ただ、さっき味方を救うために無茶な軌道を取ったので…脚部がとうとうレッド表示になった。
 『問題が無視出来ない程になり、撤退もしくは交換が必要』
 このまま続ければ脚部が骨折で動けなり、動けなくなればクオリアは確実に死ぬ…。

 1時間10分経過…。
 脚部を動かす度に、パーツの悲鳴が聞こえる。
 先ほどからこの機体は、撤退《てったい》か脚の交換をするように進言してくる。
 クオリア機が狙っているのは、ブライアン機の脚だ。
 最後に見た時にはイエローだったのでまだ使えるだろう…。
 だが下手に近寄れば、ワームを引き寄せてしまい脚が破壊されてしまう。
 チャンスは1度っきり…。
 クオリア機がワームの足をピンポイントで狙い文字通り足止めをする。
 そして、後列のワームが衝突し隙が出来た。
 クオリア機が走り跳躍しながら、ワームを回避かわし脚まで進む…。
 バキッ・・・
 通常の1000倍に思考加速された時間で、クオリアが脚が骨折した音を感知し、レッドマークだった脚がゆっくり暗くなっていく…ブラックアウトだ。

「あっ…」
 骨折した。
 もう…。

「まだやれる。」
 クオリア機は骨折状態の脚部を使った最後のジャンプをし、飛び上がった所で銃を放り、脚部を外す。
 そして着地時に手を付き、倒立の状態で姿勢を維持…その状態で走りだし脚のジョイントをベックの脚に合わせる。
 端子部分がネジのようになっており、接続した直後高速で回転し閉まる。
 倒れた状態で脚を接続し、腕で機体をひっくり返しもう片方も装着する。
 接続の確認をスキップ…最短で電源ラインと通信を構築する。
 前方からはワームが向かっており、脚が動くまで僅《わず》かに足りない…。
 クオリア機は腕の力で立ち上がろうとするが…肩部分の装甲に負荷がかかり『接続ジョイントが破壊されると』DL側が判断し、ジョイントを守る為に計画的に自壊し脱臼する。
 このタイミングで…。
 1000倍の思考になっても現実の身体が早くなる訳では無い。
 クオリア機はもう1本の腕を使おうとするが間に合わない…瞬時にそう結論付けた。
 0.5秒…間に合わない。
 後出来る事は?

 骨折してもクオリア機は諦めず、逆立ちした状態で脚を取りに行く…。
 すぐにジョイントを接続するが、今度は腕が負荷に耐えられず脱臼した。
 クオリアが死ぬ…。
 レナは迷う事無く、用意していたけど押せなかったARウィンドウのコールボタンを押す。

 突進してきたワームがクオリア機に衝突し、機体が吹っ飛ぶ。
 手はブラック表示…脚は接続出来たがイエロー…。
 更に可動性を確保する為に装甲強度が弱くなっている腹部…DLの弱点部分がレッドになる。
 もう限界だな…。
 即座に判断したクオリアはクオリア機が空中にいる状態で、コックピットブロックの開閉コマンドを入力し、コックピットが後ろにスライドし、上部が開く…同時にシートベルトを外し、機外に放り上げられる形でクオリアが外に出る。
 飛ばされたクオリアが身体を丸め、対ショック姿勢の状態で地面を転がり…。
 そしてクオリアが顔を上げた時…見えたのは突撃して来たワームだった。

「全兵装使用自由《オールウェポンズフリー》あらゆる手段を使って事態解決しなさい」

 予想もしなかった相手からのコールに出て、始めに言われた事がこれだ。
 レナは過酷な状況で育ち、今の生活が楽園だと言っていた。
 そのレナが『強権』を使い…それを破ろうとしている。
 私の全損の為に楽園を捨てても良いと思ってくれた覚悟…。
「イエスマム、全兵装使用自由《オールウェポンズフリー》」
 クオリアは右手を胸に当て、左手を後ろに回し頭を下げる…。
 ワームが突っ込んで来る貴重な時間をフルに使い同時にやっていた処理もすべて中断し、ゆっくりとしたエレクトロンの最上級敬礼。
 クオリアがゆっくりと顔を上げ、ワームがクオリアに突っ込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...