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ヒトのキョウカイ2巻(エンゲージネジを渡そう)

09 (16000 kmの旅)

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 ナオが大型二足2種を取った翌日…。
 ナオ達いつものメンバーにジガを加え、都市長室に向かう。

「おお来た来た…」
 アントニーは都市長席に座ったまま『どうぞ』と手でソファーに誘導する。
「わざわざリアルで呼び出すなんて…相当重要な事なのか?」
 最初にソファーに座ったナオが言う。
「重要だね…特にレナ」
「私?」
「そう、次期都市長として初めての国外案件だ。
 キミたちはエレクトロンの都市『エクスマキナ』に行って貰い『エルダー・コンパチ・ビリティ』と会談して、友好条約の書類にサインを貰ってくる…。
 後はワールドネット用の通信設備を物理輸送して欲しい。」
 アントニーが書類をレナに渡す。
「面倒ね…何で未《いま》だに紙媒体?」
「データだとハッキングに弱いからね…。
 それにエルダーには話がついているから、今回は次期都市長としてのお披露目に近い」
「こう言ったムダな手続きも必要なのね…。」
 レナは文句を言いながらも、紙をめくりながら しっかりと内容を確かめる。
「それで?オレらは?」
 レナの横にいたナオが言う。
「レナの護衛だね…。
 流石に都市の外交官にガードを付けないのも問題だし、しかもナオトは忍者の家系だそうじやないか?護衛には向いているだろう?」
「一応武装警備もやっていたけど、本来忍者は 工作員…つまりスパイが任務だからな…。
 まぁやるよ…観光としては面白そうだし…。」
「で?オレは?」
「トヨカズは、エアトラFの免許を持っていただろう…運転手だ。」
「と言ってもVRだけで実機は乗った事が無いぞ…」
「まぁVRとは言えS評価なんだし…普通のパイロットよりかは優秀でしょう。」
「良いだろうか?アントニーの計画には問題がある…。
 あのエアトラFを使うのか?」
 ナオの隣に座っていたクオリアが手を上げ、話に割り込む。
「ああ外交用のだけど…。」
「何かマズイのか?」
 隣に座るナオがクオリアに聞いてくる。
「問題は航続距離と飛行時間だ。
 この都市から南極まで16000km…エアトラFは巡航速度が毎時500kmだから32時間…1.3日かかる。
 更に航続距離は3500km…4回の給油が必要だ…。
 給油に移動と総合して考えると片道3日はかかる。」
「ジェット機は無いのか?時速1000kmは出せたはずだ。」
「少ないがある…が、まともな滑走路なんてある所なんて少ないから、離陸も着陸も出来ない。
 垂直離陸が出来るVTOLヴィトール機以外は殆《ほとんど》ど淘汰《とうた》されてしまった。
 更に言うなら燃料補給も問題だ…。
 未だに航空機燃料を製造している所は少ない。
 これはAQBでの電気駆動が主流になったからだ。」
「永久機関の電気駆動なら航続距離は機体が壊れるまでか…。」
「そうなる…以上の事から問題提起ていきする。」
 アントニーはしばらく考えるが…。
「とは言っても…都市の外交なんだから ウチの機体を使うしかないし…。」
 どうやらメンツの問題のようだ…。
「待ってくれ…レナの今回の仕事は調停を行う外交官で良いんだよな。」
 今度向かいのファーに座るジガだ。
「ああ、そうなるね…。」
「ならコッチが客を送迎しても良いんじゃないのか?
 いや…むしろ友好関係を築くなら、コッチも協力して誰の目にも分かるようにした方がいいんじゃないか?」
 さすがに32時間も機内に缶詰なのは嫌だったのか…ジガが代案を提案する。
「う~ん…ちなみに、そちらの移動時間は?」
「最短で90分、最長で180分…つまり3時間」
「早いね…てことは、推進剤は?」
「推進剤は水素と酸素…用意してくれれば、補給はこっちでやる。」
 アントニーはまた考える。
 恐らく対面と妥協を考えているのだろう。
「後で必要な燃料の書類を出して貰うとして…明日中に出発出来るか?」
 ジガはクオリアを見る。
「十分可能だ…。
 24時間後の明日の午後1時はどうだろうか?
 パイロットスーツはいつになる?」
「オーダーメイドはさすがに無理…でも汎用型なら今日中には…。」
「なら明日の11時に貰う事にしよう…。」
「分かった手配しておく…。」
「では私は、民間駐機場から機体を取りに行って来る…その後は整備だ。」
 クオリアが立ち上がる。
「ならウチは 訓練担当かな」
「ああ、頼む」
「おう。」
 クオリアはドアを開け退出した。
「じゃウチらは、最短カリキュラムの3時間コースでVRで訓練だ…。」
「じゃあ話は終了かな」
「なぁジガ…全く話が見えないんだが…どうやって行くつもりだ。」
 トヨカズがジガに問いかける。
「クオリアの『エアトラS2』で『地球周回軌道』まで上がって1、2周回って、南極に行く。」
「『地球周回軌道』って…宇宙!?」
「だな」
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