異世界チーズ冒険譚~貧者の肉は力を授ける~

胃の中の蛙

文字の大きさ
11 / 13

準備

しおりを挟む

 ニーナの友人からは二つ返事が返ってきたそうだ。
 3日後ならちょうど予定も無く、都合が良いので迎えに行くとの事だ。
 3日なんてあっという間に過ぎ、俺はマッチングアプリで初めて会う時のようなソワソワ感に見舞われていた。

 ただギルドの仕事で狩猟に行くだけだ。それだけなのに落ち着かない。
 こちらの世界に来てから、あまりグレイタール家以外の人間と接点を持たなかったからかもしれない。
 せいぜい、ギルドのソフィーか配達仕事で関わった人物くらいだろうか。

「何ソワソワしてんの。デート気分で仕事行く気?」

「べっ、別にそんなんじゃねーよ! ただの武者震いだ!」

「ふーん、なんでもいいけどね。あっ、着たみたいよ」

 居間でくだらないおしゃべりをしていると、扉を3度ノックする音が聞こえてきた。
 ニーナは、俺の気などお構いなしに扉へと向かう。

 仕事や必要に迫られた上での人間関係なら男だろうが女だろうが、割り切って接することができる。
 前世の悪癖だが自分に仮面を被せ、出来る自分を演じようとしてしまうのだ。
 本性を全て隠し、上っ面だけを着飾ったいい人を演じてしまう……
 しかしプライベートに措いてはそうもいかない。
 元々人見知りなせいか、初対面の相手だと、緊張と警戒が大きくなってしまい上手くコミュニケーションが取れない。
 
 「ジョゼ、いらっしゃい! 待ってたわ」

 俺も後を追うように扉へと向かう。
 そこには真っ黒なローブに身を包みフードを目深に被った人物が立っていた。
 ジョゼと呼ばれた人物は身動きひとつ言葉を発することすらしない。
 フードのせいで顔を窺うことができないが背丈はニーナより低く、ローブですら隠せない胸の膨らみから女性だという事が見て取れた。
 
「初めまして。ショウって言います。今日はよろしくね」

 自己紹介と共に右手を差し出し握手を求めたが返事はない。
 頷くよう微かに頭が上下しただけで、それ以上のリアクションが一切ない。
 ニーナは行き場を失った右手を下げる様子をにやつきながら見ている。
 
「この子はジョゼット・ウィング。気軽にジョゼって呼んであげて」

「あ、ああ。分かった、そうするよ。早速で申し訳ないんだが、ギルドの方に向かいたいんだけどいいかな、ジョゼさん」

「問題ないです。あと、私相手に敬称は不要です」

 消え入りそうな小さな声でジョゼはそういった。
 ニーナが含みを持った事を言っていたからてっきり話す事ができない子なのかと思っていた。
 非常にかわいらしい声をしているじゃないか。ボリュームはかなり小さいが。

 元気よく手を振りながら送り出すニーナを背に俺たちはギルドに向かった。
 非常に気まずい。何を話していいのか分からない。
 知り合いの知り合いという、絶妙に距離感が測りにくい間柄。 
 
「ジョゼはニーナと知り合って長いのか?」

「…………はい」

「今日はせっかくの休みだってのにワザワザ付き合わせてしまって申し訳ない。ニーナが無理言ったんじゃないか?」

「…………いえ、大丈夫です」

「あ~、ギルドで討伐の仕事よくしてるって聞いたけど、一人でやってるのか? 大変じゃない?」

「…………はい、平気です」

「そっか…………気になった事があれば何でも言ってくれ。俺、この世界の事全然分かってないから、変な事するかもしれないし」

「…………わかりました」

 会話が続かねえぇぇぇっ~。
 俺がコミュ力不足ってのを差し引いても酷過ぎるだろ。
 会話のキャッチボールしてくれよジョゼさん!
 嘘でもいいから、何か会話を広げてくれ。
 返事だけ返されると壁当てしてる気分になってくる。
 無言でいると気まずく感じるのは俺のエゴかもしれないが……
 
 いや、手伝ってくれるだけありがたいんだ。
 俺が彼女に合わせるのが筋だし、あまり無駄口叩くのは控えよう。
 無口な子に無理やり話せって言うのも酷な話だ。必要最小限に留めておこう。
 互いに無言のまま砂利道を進む。沈黙の中、聞こえてくるのは砂利を踏む音と、虫の鳴き声だけ。

 ニーナの言っていた話を真に受けている訳ではないが俺だって友人は欲しい。
 こっちに来てからというもの友人らしい友人は出来ていない。
 ギルドでは何故か避けられており、遠巻きにヒソヒソと囁き合われる始末。
 それでも、ギーシュみたいな輩に絡まれるよりは断然マシではある。
 

「あの、ショウさん…………」

 沈黙を破ったのはジョゼだった。
 
「どうした、何かあったか?」

「…………いえ、その…………私、口下手で……気を使わせてしまって……すみません」

「ハハッ、なんだ。距離取られてた訳じゃないのか。俺も口下手の人見知りだか気にしないでくれ」

 どうやらジョゼは俺と同じタイプのようだ。
 ニーナの顔を立て、嫌々付き合ってくれてるのではないかとも思ったが、そうではないようだ。
 そこからは、少しずつではあるものの、彼女からも話しかけてくれるようになった。
 俺のいた世界の話、仕事の話、好物の話、他にも取り留めのない事ばかり。それでも大きな一歩だ。
 どうやら彼女はニーナ以外友人がおらず、同年代の異性と話す機会がないらしい。
 俺と対面した時の距離感は、それが理由なのだとか。
 
―――――――――
――――――
――……

 そうこうしているうちにギルドに着いた俺達。
 掲示板に張り出されている討伐クエストは数が多い。
 民家に巣を作った蜂の駆除から、近隣の山脈で目撃された竜種の討伐など難易度も選び放題だ。
 二人で手分けして手頃なクエストを探していると、ジョゼが俺の袖を引っ張ってきた。
 
「ショウくん、これなんてどうですか? ウォーグウルフの群れの討伐」

「ウォーグウルフ……狼みたいなもんか?」

「そうです。ちょっと狼より獰猛で知的ですけどね。仲間と意思疎通を取ったり、おとりを使って待ち伏せしたり。ゴブリンなんかと群れて生活して軍団を形成したりすることもあるくらいかな」

「そこまでいくと狼じゃねぇ! それにこのクエスト、10人も死んでるよ。絶対俺が足引っ張っちまう!」

 ジョゼの持ってきたクエスト用紙には10個の黒い髑髏の判が押されていた。
 ギルドに掲載されるクエストには、犠牲者が出ていれば髑髏の判子が押される。
 黒い髑髏なら1人の死者が。赤い髑髏なら10人の死者が出ている事を表す。
 つまりこのクエストでは10人が亡くなっている事になる。

「そうかな……この死者数なら小規模の群れだろうし、何とかなると思いますけど」

「できればゴブリンやスライムみたいな魔物がいいんだけど……だめかな?」

「そっちの方が難易度高いですよ。初心者殺しの筆頭ですし」

 ゲームではお約束の雑魚キャラ達が?
 レベル1でも難なく倒せるイメージしか持ってないぞ。
 
「おいおい、いくら俺がこの世界について知らないからって、それが嘘だって事ぐらい分かるぞ」

「ホントですって! ゴブリンは個体ならそこまで脅威じゃないけど、群れて生活してるの。舐めて挑んだ冒険者があっという間に殲滅されるなんて珍しくない話。スライムも対策さえ知っていれば大したことないけど、知識もないまま挑んで、生きたまま全身溶かされた人も少なくないんですよ」

 嘘だろ……完全に俺の常識が通じなくなってる。
 全身溶かされるとか惨すぎる。俺の知ってるカワイイスライム像とはかけ離れている。
 
「う~ん、じゃあこれなんてどうです? 良さそうですよ」

 ジョゼはそう言うと一枚の依頼書を手に取った。

「魔猪ワイルドボアの討伐……人死にも出てないし、良さそうだな!」

 魔猪がどんなものか想像はつかないが、死人が出てないならそこまでではないだろう。
 ジョゼも本当に危険な物なら推薦したりしないだろうし。
 そうと決まれば膳は急げだ!
 俺は掲示板から依頼書を剥がし受付に持っていく。

「あら、ショウじゃない。今日は一人じゃないのね」

「ああ。ニーナ推薦の強力な助っ人さ。ソフィー、今日はこいつの討伐に行きたいんだ。手続きしてもらえるか」

「了解、無理しないようにね……おっと、そうだわ、これ渡しておくわね。スカーレットベアの買取金」

 そういうとソフィーは小さな皮袋をカウンターに置きクエストの手続きに入った。
 袋の中には大銀貨が5枚と銀貨が8枚入っていた。約6万円程といったところか。
 
「まずはそのお金で装備を揃えたらどうです? 流石にその格好で行くのはやめた方が……」

 俺の格好はグレイタール家で貰った普段着にぺト爺から渡された剣を腰にさしているだけ。
 確かに、狩りに行く格好ではないのは重々承知している。金がないのだから仕方なかったのだ。
 
「それもそうだな。武器ってどこで売ってるんだ?」

「ギルドの隣です。でも、武器じゃなくて防具にお金使った方が良いですよ。駆け出しなら怪我する確立高いですし」

「分かった。よければジョゼが選んでくれないか? どれが良いかなんて俺には判断できないし……」
 
 ジョゼは快く了解してくれた。
 ギルドと併設されていることもあり、武器屋には3分も掛からなかった。
 どうやら、防具の類も隣の武器屋で扱っているようだ。

  防具の良し悪しなんて分からないのでチョイスは全てジョゼに任せてしまった。
 彼女は武器や防具の類が好きなようで、目を輝かせながら店内を物色していた。
 
「凄いですよこの鎧! 内側にミスリル合板を打ち合わせることで魔術に耐性を持たせつつ、軽量かつ耐久性を向上させています! こっちの篭手なんて間接部分に鋼の細かな鎖を編み込んで機能性と防御性能を高めています! あ、でも魔力暴露を考慮していないみたいですし、直ぐに劣化して――」

 俺には一切理解できない用語を早口で捲くし立てるジョゼ。
 何はともあれ、楽しそうに選んでくれているので口は挟まないでおこう。

  俺の希望としては騎士が身に着けるような甲冑が欲しかったのだがジョゼに全力で止められた。
 どうやら手持ちでは全身フル装備を買うのは全然足りないみたいだ。
 
 ジョゼの勧めで最低限急所を守る為のチェストプレート、怪我をしやすい足周りと腕周りを守る為の脛当て、腕宛て、籠手に金を掛ける事にした。
 盾や兜も欲しかったのだがせっかくなら動きやすさを生かした方が良いと言われ購入を断念することに。

 ジョゼが的確にアドバイスしてくれたおかげもあり、準備は30分程で終わった。
 日が落ちるまでに終わらせる予定なので俺達は取り急ぎ目撃情報が有った地点へと向かった。 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...