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第二章
2-5 サンドバッグ
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「そ、それでは私がファイアボールを打ち込みますので、し、シールドを使わずにそのまま身体で受けてください」
以前僕を殺しかけた因縁の魔法だ。しかしハカセに魔法に関するイロハを教えてもらった今、恐れる事は何もない。
「い、いきますよ。ふぁ、ファイアボール」
ハカセから火球が飛んでくる。僕は右手を前に突き出し、その右手が分厚い氷で覆われているとイメージを頭に描いた。
火球が僕の伸ばした右手に触れる。魔力同士がぶつかる小さな音と衝撃が教室にはしったが、次の瞬間ファイアボールは綺麗に消滅していた。もちろん僕の右手も一切ダメージを受けていない。
「こ、このように防御を行う際には、あ、相手の攻撃と相反するような属性を持つイメージを行うと非常に効率よく防御を行えます。ぞ、属性防御と言われているものですね。ね、熱血漢の人は氷に包まれるイメージをするのが苦手なので冷気に弱かったり、しょ、小生なんかは夏に海でバーベキューをする自分のイメージなんかが苦手なので炎や情熱系に弱かったりします。も、もちろん装備やアイテムで底上げなどは可能です」
今やっているのは、身体で魔法を受け止めて相殺する練習だ。戦場で常にシールドを張って行動できるわけではないので、不意打ちで魔法を食らったとしても、瞬時にその場所の魔力を固くすることで身体への被害を減らすのだ。
「じ、常時発動が可能な魔法なんかもたくさんあります。し、しかしそれは頭の片隅で常に何かの曲を流し続けているようなものなので、な、慣れないうちは逆に自分の戦闘能力を下げる結果になることもあるのです」
だとするとそれを二つも三つも発動させてしまったら頭がおかしくなってしまうのではないだろうか。
(試しに今度やってみたいな)
僕はまだ基本的な魔法を教えてもらっている段階だ。それでも教えてもらった先からその魔法を元々知っていたかのよう習得スピードで会得する僕に、全く尋常ではないとハカセがよく驚いている。
新しい力を得た時は、どうしてもそれを試したくなってしまうものだが、僕が魔法を人に向けて撃つことはハカセに強く止められている。元々の魔力が強いこともあるが、彼が言うには僕の身体には僕ではない何者かの魔力も色濃く感じるらしい。まだ力のコントロールが不安定な僕がそんな魔力を奮ってしまった時に、どんな結果になるかわからないらしいのだ。
(ようやく転生っぽくなってきたな)
始めの方は散々な目にあっていたが、今の僕はしっかり転生者といった感じだ。自分の力を使える日が一日も早く来るようにとウズウズしている。
『F組生徒は訓練場に集合! 繰り返す! F組生徒は訓練場に集合!』
僕たちは毎日この呼び出しを受けては制服組にひたすら暴力を振るわれ続けている。マジックシールドを発動さえすればどれもこれも弾き返すことができるような攻撃ばかりだが、先述の通り不意打ちや様々な状況を考えた時の訓練として全て身体で受けるようにしているのだ。
いつも通り訓練場に出向く。するとそこにいたのは今まで見たこともないような大人数で待ち構える制服組だった。十人や二十人どころではない、もしかすると百人以上はいるんじゃないか……?あまりの人数に思わず周りをきょろきょろと見渡す。
(あ……あいつは!)
その集団の一番前にいたのは、以前生徒会長を名乗っていた男だった。他にも胸にSSと刺繍の入った生徒が彼を囲むように何人もいる。
「やあ、ごきげんよう。F組の皆さん。どうやら最近とても調子がいいようじゃないですか」
嫌みったらしい顔と口調はあの時から全く変わっていない。
「は、はい。そ、そうですね。お、オール殿がきてからは、ふぉ、フォーメーションにも幅ができたので……」
確かに僕が防御をしっかりできるようになってから、F組が受けるダメージはかなり少なくなっていた。僕とゴエモンで前後をカバーしてその間にハカセとバンコが入ることで死角をほとんどなくしたおかげだ。
「フォーメーション! ハハハ! フォーメーションですか! サンドバッグ風情が! フフフ……、あんまり笑わせないでくださいよ」
周りの生徒もゲラゲラと腹を抱えて笑っている。ティーチャーも僕の役割がサンドバッグと言っていたが、つまりF組は学院公認で他の生徒のサンドバックになっているということだ。ゴエモンの舌打ちが聞こえ、バンコは早くも泣き出してしまった。
「そのフォ、フォ……フフ、失礼失礼……。そのフォーメーションとやらでサンドバッグが自分の仕事をきちんとこなしていないと報告がありましてね。皆をまとめる生徒会長として改善をしに来たのですよ」
嫌な汗が背中に流れる。仲間の三人もこいつらの意図を知り青ざめていた。
「皆さん! 準備はよろしいですか!?」
僕たちを取り囲む生徒たちがそれぞれの武器を構える。どいつもこいつも嫌な目つきをして、生徒会長の合図を今か今かと待ちきれない様子だ。
「それでは参りましょう! 攻撃開始!」
とっさにいつもの陣形を組む。剣や斧など近接武器をもった者達が次々とそれを振り下ろしてきた。
「うおおおおおおお!?!?」
僕とゴエモンが『アタックシールド』を発動し、四人を囲むように盾を召喚する。
「だ、だ、だ、大丈夫です。か、か、か、彼らの数は非常に多いですが、あ、あ、あ、アタッカーが邪魔となって魔法や遠距離武器がまるで効果を……アアアア!」
ハカセの身体をいくかの矢が貫く。
「上だ! お前は上! 俺が周りだ!」
「OK!」
ゴエモンが叫ぶ。僕は彼の意図を瞬時に理解し、四方に貼っていたアタックシールドを傘の方に頭上に貼りなおす。刹那、そのシールドに矢のような雨が降り注いだ。
味方が邪魔で撃てないだろうと高を括っていた遠距離攻撃は、まるで空を狙っているような角度で撃ちあげられ、それは山なりに放物線をえがいて正確に僕たちの真上から降り注いできている。
バンコは泣きながら絆創膏を召喚し、被害に合わせて貼り付けている。
「う……上に、マ……マジ
「おお!」
ハカセが言い終わる前にマジックシールドを発動させた。僕を中心として発動した魔法陣の球を、ちょうど四人を囲むようなサイズで固定する。同時に矢の雨に紛れて撃たれていたマジックアローが魔法陣に触れては消滅していった。バンコはハカセの治療を終えたようで、次に大きな絆創膏を召喚し、ゴエモンの出したシールド同士の隙間をうめるように貼り付けていく。
「四時、青、十一時、赤」
僕たちを包むマジックシールドの一部の色を変える。直後その部分に属性攻撃が直撃した。
ハカセが休む間もなく時間と色を呟く。僕はゴエモンの位置を十二時とし、ハカセの言った時間の方向にある魔法陣の属性を呟きと同じ色に変えていく。
「上、四色」
「おおお!」
上空部分のマジックシールドのイメージを虹に変える。七層に重ねられた魔法陣が対応する攻撃をそれぞれの層で止めていく。層ごとの守備力は当然弱くなっているが、問題なく防御できたことに少しだけ安堵する。
「ギギギギギ」
その虹が僕たちをラッピングしていくイメージを描く。F組を守るシールドは層を増し、色をカラフルに変えていった。
「やめろ! それじゃもたねえよ!」
ゴエモンの叫びは無視してなんとかそれを維持する。
(人数差がありすぎるんだ!)
生徒会長は笑いながら指示をだし、生徒の前後を入れ替えている。生徒を何班かに分けて攻撃と回復のサイクルを回しているのだ。おかげで僕たちは常に数十人から全力攻撃を休みなく受け続けてる羽目になっている。
(このままじゃジリ貧だ!)
かれこれもう一時間はこんな調子だ。覚悟を決めた僕の目に暗い灯が灯る。
F組を守る七層の虹色シールド。その一番外側の赤いシールドだけを解除した。
「おい! 馬鹿やってんじゃねえ!」
上空に赤い球を召喚する。しかしこれはシールドじゃない。僕が身を持って体験したあの魔法。ファイアボールだ。
「やめろ! 殺す気か!」
何を言ってるんだ。向こうは僕たちを殺しに来てるじゃないか。やらなきゃやられるんだ……
異様さに気づいたのか生徒たちの攻撃が止まる。生徒会長が驚愕の表情で僕の火球を指さし、大声で何かを指示していた。
僕たちに向けられていた攻撃は全て火球を相殺するために向けられた。しかしそのどれもこれもが火球ふ触れた瞬間かき消されていく。
「死ね」
生徒会長に巨大な太陽が落ちるイメージを脳裏に描いた。
以前僕を殺しかけた因縁の魔法だ。しかしハカセに魔法に関するイロハを教えてもらった今、恐れる事は何もない。
「い、いきますよ。ふぁ、ファイアボール」
ハカセから火球が飛んでくる。僕は右手を前に突き出し、その右手が分厚い氷で覆われているとイメージを頭に描いた。
火球が僕の伸ばした右手に触れる。魔力同士がぶつかる小さな音と衝撃が教室にはしったが、次の瞬間ファイアボールは綺麗に消滅していた。もちろん僕の右手も一切ダメージを受けていない。
「こ、このように防御を行う際には、あ、相手の攻撃と相反するような属性を持つイメージを行うと非常に効率よく防御を行えます。ぞ、属性防御と言われているものですね。ね、熱血漢の人は氷に包まれるイメージをするのが苦手なので冷気に弱かったり、しょ、小生なんかは夏に海でバーベキューをする自分のイメージなんかが苦手なので炎や情熱系に弱かったりします。も、もちろん装備やアイテムで底上げなどは可能です」
今やっているのは、身体で魔法を受け止めて相殺する練習だ。戦場で常にシールドを張って行動できるわけではないので、不意打ちで魔法を食らったとしても、瞬時にその場所の魔力を固くすることで身体への被害を減らすのだ。
「じ、常時発動が可能な魔法なんかもたくさんあります。し、しかしそれは頭の片隅で常に何かの曲を流し続けているようなものなので、な、慣れないうちは逆に自分の戦闘能力を下げる結果になることもあるのです」
だとするとそれを二つも三つも発動させてしまったら頭がおかしくなってしまうのではないだろうか。
(試しに今度やってみたいな)
僕はまだ基本的な魔法を教えてもらっている段階だ。それでも教えてもらった先からその魔法を元々知っていたかのよう習得スピードで会得する僕に、全く尋常ではないとハカセがよく驚いている。
新しい力を得た時は、どうしてもそれを試したくなってしまうものだが、僕が魔法を人に向けて撃つことはハカセに強く止められている。元々の魔力が強いこともあるが、彼が言うには僕の身体には僕ではない何者かの魔力も色濃く感じるらしい。まだ力のコントロールが不安定な僕がそんな魔力を奮ってしまった時に、どんな結果になるかわからないらしいのだ。
(ようやく転生っぽくなってきたな)
始めの方は散々な目にあっていたが、今の僕はしっかり転生者といった感じだ。自分の力を使える日が一日も早く来るようにとウズウズしている。
『F組生徒は訓練場に集合! 繰り返す! F組生徒は訓練場に集合!』
僕たちは毎日この呼び出しを受けては制服組にひたすら暴力を振るわれ続けている。マジックシールドを発動さえすればどれもこれも弾き返すことができるような攻撃ばかりだが、先述の通り不意打ちや様々な状況を考えた時の訓練として全て身体で受けるようにしているのだ。
いつも通り訓練場に出向く。するとそこにいたのは今まで見たこともないような大人数で待ち構える制服組だった。十人や二十人どころではない、もしかすると百人以上はいるんじゃないか……?あまりの人数に思わず周りをきょろきょろと見渡す。
(あ……あいつは!)
その集団の一番前にいたのは、以前生徒会長を名乗っていた男だった。他にも胸にSSと刺繍の入った生徒が彼を囲むように何人もいる。
「やあ、ごきげんよう。F組の皆さん。どうやら最近とても調子がいいようじゃないですか」
嫌みったらしい顔と口調はあの時から全く変わっていない。
「は、はい。そ、そうですね。お、オール殿がきてからは、ふぉ、フォーメーションにも幅ができたので……」
確かに僕が防御をしっかりできるようになってから、F組が受けるダメージはかなり少なくなっていた。僕とゴエモンで前後をカバーしてその間にハカセとバンコが入ることで死角をほとんどなくしたおかげだ。
「フォーメーション! ハハハ! フォーメーションですか! サンドバッグ風情が! フフフ……、あんまり笑わせないでくださいよ」
周りの生徒もゲラゲラと腹を抱えて笑っている。ティーチャーも僕の役割がサンドバッグと言っていたが、つまりF組は学院公認で他の生徒のサンドバックになっているということだ。ゴエモンの舌打ちが聞こえ、バンコは早くも泣き出してしまった。
「そのフォ、フォ……フフ、失礼失礼……。そのフォーメーションとやらでサンドバッグが自分の仕事をきちんとこなしていないと報告がありましてね。皆をまとめる生徒会長として改善をしに来たのですよ」
嫌な汗が背中に流れる。仲間の三人もこいつらの意図を知り青ざめていた。
「皆さん! 準備はよろしいですか!?」
僕たちを取り囲む生徒たちがそれぞれの武器を構える。どいつもこいつも嫌な目つきをして、生徒会長の合図を今か今かと待ちきれない様子だ。
「それでは参りましょう! 攻撃開始!」
とっさにいつもの陣形を組む。剣や斧など近接武器をもった者達が次々とそれを振り下ろしてきた。
「うおおおおおおお!?!?」
僕とゴエモンが『アタックシールド』を発動し、四人を囲むように盾を召喚する。
「だ、だ、だ、大丈夫です。か、か、か、彼らの数は非常に多いですが、あ、あ、あ、アタッカーが邪魔となって魔法や遠距離武器がまるで効果を……アアアア!」
ハカセの身体をいくかの矢が貫く。
「上だ! お前は上! 俺が周りだ!」
「OK!」
ゴエモンが叫ぶ。僕は彼の意図を瞬時に理解し、四方に貼っていたアタックシールドを傘の方に頭上に貼りなおす。刹那、そのシールドに矢のような雨が降り注いだ。
味方が邪魔で撃てないだろうと高を括っていた遠距離攻撃は、まるで空を狙っているような角度で撃ちあげられ、それは山なりに放物線をえがいて正確に僕たちの真上から降り注いできている。
バンコは泣きながら絆創膏を召喚し、被害に合わせて貼り付けている。
「う……上に、マ……マジ
「おお!」
ハカセが言い終わる前にマジックシールドを発動させた。僕を中心として発動した魔法陣の球を、ちょうど四人を囲むようなサイズで固定する。同時に矢の雨に紛れて撃たれていたマジックアローが魔法陣に触れては消滅していった。バンコはハカセの治療を終えたようで、次に大きな絆創膏を召喚し、ゴエモンの出したシールド同士の隙間をうめるように貼り付けていく。
「四時、青、十一時、赤」
僕たちを包むマジックシールドの一部の色を変える。直後その部分に属性攻撃が直撃した。
ハカセが休む間もなく時間と色を呟く。僕はゴエモンの位置を十二時とし、ハカセの言った時間の方向にある魔法陣の属性を呟きと同じ色に変えていく。
「上、四色」
「おおお!」
上空部分のマジックシールドのイメージを虹に変える。七層に重ねられた魔法陣が対応する攻撃をそれぞれの層で止めていく。層ごとの守備力は当然弱くなっているが、問題なく防御できたことに少しだけ安堵する。
「ギギギギギ」
その虹が僕たちをラッピングしていくイメージを描く。F組を守るシールドは層を増し、色をカラフルに変えていった。
「やめろ! それじゃもたねえよ!」
ゴエモンの叫びは無視してなんとかそれを維持する。
(人数差がありすぎるんだ!)
生徒会長は笑いながら指示をだし、生徒の前後を入れ替えている。生徒を何班かに分けて攻撃と回復のサイクルを回しているのだ。おかげで僕たちは常に数十人から全力攻撃を休みなく受け続けてる羽目になっている。
(このままじゃジリ貧だ!)
かれこれもう一時間はこんな調子だ。覚悟を決めた僕の目に暗い灯が灯る。
F組を守る七層の虹色シールド。その一番外側の赤いシールドだけを解除した。
「おい! 馬鹿やってんじゃねえ!」
上空に赤い球を召喚する。しかしこれはシールドじゃない。僕が身を持って体験したあの魔法。ファイアボールだ。
「やめろ! 殺す気か!」
何を言ってるんだ。向こうは僕たちを殺しに来てるじゃないか。やらなきゃやられるんだ……
異様さに気づいたのか生徒たちの攻撃が止まる。生徒会長が驚愕の表情で僕の火球を指さし、大声で何かを指示していた。
僕たちに向けられていた攻撃は全て火球を相殺するために向けられた。しかしそのどれもこれもが火球ふ触れた瞬間かき消されていく。
「死ね」
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