テンセイミナゴロシ

アリストキクニ

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第二章

2-7 変化

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 それからも毎日のように呼び出しをくらっては大量の生徒たちからただ殴られ続けた。
 僕たちは陣形を組み、自分たちの体力か気力どちらかが尽きるまでひたすらに耐え、誰かが気を失ったりひどい怪我を負って防御が崩れた後は亀のように縮こまって教師たちが止めに来るのを待つだけの日々を送った。
 ボロ雑巾のようになって教室に戻ってきては反省点と改善点を話し合い次に生かした。特にハカセかバンコがダメージを受けた時のパフォーマンスの落ち方が課題だったので、僕も彼らの補助ができるような魔法を覚えていった。
 バンコが暇を見て縫物を縫物をしているのは、回復のイメージ強化のためだったときもこの時知った。傷が塞がったり癒えていく柔軟なイメージは、防御や攻撃をするときにイメージする硬さと相性が悪く、同時に発動させるにはまだまだ訓練が必要だったが、それでもシールド一枚ぐらいを張りながら簡単な怪我を治せるぐらいはできるようになった。
 攻撃をしてくる生徒たちも同様に僕たちの研究を必死に行っているようで、初めのうちはそれこそ二部隊で攻撃と回復の入れ替わりをするぐらいだったものが、最終的に役割を専門化されたいくつもの小さな部隊が高度な連携を伴って攻撃してくるようになっていた。
 ある時など呼び出しを受けて闘技場に向かってみたら誰もいない、来るのが早すぎたかと思って相手の到着を待っていたら急に四方から攻撃が飛んできたことがあった。彼らはグループごとに不可視化を使えるメンバーを一人入れて、百人以上が全員隠れた状態ですでに潜んでいたのだ。彼らの攻撃はハカセとバンコに集中しており、早々にハカセを落とされた後ははまるで効率の悪い防御を続けるしかなく、ハカセの治療で手一杯になった僕たちはいつもの半分程度の時間しか耐える事が出来なかった。
 もうこれぐらいの時期になるとお互いに攻撃したり守ったりする事よりは、バトル後の研究と対策の方が主な目的になっており、僕たちも喜んで彼らの攻撃を受け続けるようになっていた。
 相変わらず生徒会長やその取り巻きのSSクラス組は事あるごとにキーキーと喚いていたが、彼らの言うことを聞く生徒はいつの間にかいなくなっていて、代わりに生徒に指揮を出していたのは、僕が初めて闘技場に来た時出会った制服三人組のリーダー格の男だった。
 その頃から、闘技場での行いは僕たちへのリンチから模擬戦の形式に変わっており、終わった後は回復もしてくれるようになっていた。もちろんこちらから攻撃をすることは変わらず禁止しているので、模擬戦というよりかは耐久戦といった感じなのだが。




(F組の奴らは実際大したもんだよマジで)
 今日集めた人数は三百人、これはもうほぼ全生徒に近かった。あの馬鹿な生徒会長達が参加しなくなってからは俺が代わりに指示を出しているが、俺の指揮がどうこうってより数の力で押しつぶしてるようなもんだ。
「パターンA! 赤! 遅れて三秒! 赤!」
 俺の声は情報隊によってが全部隊にリンクさせてある。赤系の魔法を撃てる生徒はその威力に関わらず全員がその魔法を虹色に重なるシールドに叩き込んだ。
(初めてこの虹の盾を見た時はそりゃ驚いたよ。こんなシールドを球のように貼られちゃこちらからは手も足も出ない……わけじゃなかったのが幸いだった)
 百を超える赤の魔法が赤いシールドに炸裂していき、そしてパリンと音を立てて割れる。赤を失った虹のシールドを、三秒遅れで再度発動された赤の魔法がすり抜ける。それらは溜め猶予がさったの三秒であったため威力の低いものばかりだったが、なんとかF組の四人の所に落ちて多少なりともダメージを与える。
 慌てて虹に赤色が戻る。しかし既にこちらは同じ要領で青と黄色の魔法を撃ちこんでいる。虹からどんどんと色がかけていくのが目に見えてわかった。
 パターンAは『赤、青、黄、緑、赤』のサイクルで魔法を撃ちこんでいくだけの単純なパターンであるためすぐに対応されるだろう。しかしそれで十分だ。
「近接隊! ぶち割ってやれ! 弓隊! 撃ちあげろ!」
 様々な武器を持った筋肉自慢達が、激しく色を足したり引いたりしている虹の盾を無抵抗ですり抜けていく。慌ててF組の周りすぐ近くに白いシールドが一枚貼られた。
「おせえよ、そして薄い」
 新しく貼られた白いシールドは近接隊によってあっさりと砕かれ、彼らは中央の四人に肉薄する。しかしあと一歩のところで、バンソウコウで柔らかく繋がれた堅固なシールドによって攻撃は阻まれてしまう。
「それも知ってる」
 ゴエモンとバンコの盾が近接部隊の攻撃を防いでいる間に、突撃と同時に撃ちあげられていた真っ黒な矢が空から重力を味方につけ、大きな風切り音を立てて落ちてくる。
 F組上空に貼られているたくさんの層のシールドがどんどん重なっていった。それらは色を次々と混ぜ合わせ、黒へと色を変えていく。
「ええー、まじかよ。このタイミングで対応できんの……? 早すぎやろ」
 俺の隠し玉は分厚く貼られた真っ黒なシールドに触れ……
 貫通していった。
 矢はそのままF組にまともに降り注ぐ。とっさに貼ったいくつかの絆創膏や小さな盾で威力と数を減らしてはいるものの、多くはしっかりと彼らに直撃していた。
「パターンC! 休ませるな!」
 一定の間隔と法則で様々な色の魔法が次々と飛んでいく。
(そろそろ終わりだな)
俺は相手の魔力の残量を確認することに全ての注意を傾けた。
「攻撃ヤメ! 回復班 いけ!」
 F組を襲う攻撃が直ちにやみ、近接隊も大きく距離を取る。代わりにポーションを山ほど抱えた商人隊や魔力に余裕のある回復持ちが彼らに飛び掛かった。
 滝のように振りかけられる回復役と治療スキルによってF組の傷はすぐに癒え、ヨタヨタと身体を起こした。



「お、お疲れさまでした」
「おう、お疲れさん」
「あ、あの黒い矢についてお聞きしたのですが……」
「効いただろ~? あれ実はマジックアローじゃなくてな、ただの矢、物理攻撃」
「な、なんと。し、しかし確かに様々な色の混じった魔力を感じましたが」
「そうそう、真っ黒に塗った矢に色んな属性載せてな。魔法のほうはシールドで全部はがれたけど物理の矢だけは貫通して落ちたってワケ。普通の矢だし載せれる魔法かなり少なかったけど色誤魔化すだけなら十分だったろ? まあハカセがあの矢だけに集中できるような状況ならバレてただろうけど」
「き、近接隊が近くてそっちに集中割いてましたな。ぶ、物理対策も近接隊に向けて全部使ってたので、ま、まともにくらいましたぞ」
「やっぱこの辺までくるとライムラグ致命傷じゃない? あのオールってやつに教えたら?」
「し、しかし常時発動スキルは身体の負担が大きいですから、そ、それに今でも彼にはかなり負担をかけておりますからな」
「あ、オールによ、虹の盾のサイズもっと丁寧に調節しろっていっといて。あいつ劣勢になるとどんどん球のサイズ適当にでかく貼るから余計な魔力使ってるし、本当は当たらないようなとこに飛んでる魔法もシールドで受けてるからよ」
「さ、左様ですな。あ、あれは確かにすごいシールドではありますが、た、球の内側に入られると無力ですし、と、特定の色が欠けたりすると頭の容量を一気に持っていかれますから」
「とりあえずはそんなとこかな。次は今日使った黒の矢と黒のマジックアロー混ぜて撃つわ」
「や、やめてくだされ……」
「ハハハ、じゃあな!」



 ハカセが教室に戻ってくると、あのE組の指揮官と交わした感想戦でのフィードバックを僕たちに伝えてくれた。「シールドのサイズかあ、維持してる間は何となくできるんだけど、貼りなおしたり色変えたりしてるとどうしてもおろそかになっちゃうんだよなあ」
「ま、まあこの辺は慣れの部分が大きいですので、ま、魔法を覚えてまだわずかな時間しか経っていないオール殿にそこまで要求するのは、こ、酷というものですが」
「そうだぜ、あの最後の矢もよ、俺とバンコがもっとうまくやってりゃ横に貼ってた盾動かして防げてたかもしれねえんだ。近接防ぐためにガチガチに固めすぎたせいで、いざ動かした時に全然速度がでなかったわ」
 バンコも真剣な顔でウンウンと頷いていた。
「きょ、極度に追い込まれる経験など中々できるものではありません。わ、我々はここで将来たくさんの人を助ける事ができるように、せ、成長しなくてはなりません」
 ここを卒業したら天聖者という者となって、世界という世界を飛んで周り人を助ける。何度も聞いた話だが正直今の僕には想像もできなかった。
(人を助けるかあ)
 僕はお互い死なない前提の模擬戦しか経験したことがない。ゴエモンが言っていたような誰かを殺す覚悟や、将来肩を並べて戦う仲間の死を乗り越える強さが僕にあるのだろうか。ハカセもバンコもは経験済みだと聞いた。

『全校生徒は第一グラウンドに集合! 繰り返す! 全校生徒は第一グラウンドに集合!』
 いつもと違う呼び出しの放送が校舎に響き渡った。
 
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