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第二章
2-10 人狩り部隊
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「に、人間があの中にいるのか!?」
馬鹿な! どうして人間が魔族に協力しているんだ!?
「それだけじゃありません……最前線以外にも一定間隔で人間の集団が点在しています」
「そ……それじゃ」
「どうしても人間に被害が出るのを避ける事は難しいでしょう」
天聖者のことだ、種族を選んでロックオンできる奴がいてもおかしくはないだろう。しかし人に被害を出さないようにするなら範囲攻撃や火力の大きいものは撃つことができない。魔族だけを一匹ずつ倒していくのでは到底間に合わないだろう。そして人間に攻撃されたとしたら、一体私たちはどうすればいい?
こうして考えている間にも両軍の距離はどんどん縮まっていく。敵との間隔が近くなればなるほど、こちらにも被害が及ぶ可能性のある威力の大きい攻撃はやりづらくなってしまう。
「女神様……!!」
すがる様に女神様を見るが、彼の方はただ首を横に振るだけであった。
「これは天聖者の乗り越えるべき試練である。全ての戦いに我がおるとは限らぬ」
「ははっ……!」
しかしそれではどうすればいい? 殺すしかないのか? あの量の人間を?
「オール! あれ!」
今度は何だ!
バンコがひどく驚いた表情で指さす方向を見る。そこには我々の白き方陣から新たに飛び上がる数十人の天聖者の姿があった。彼らはある程度の高さまで上昇した後真っすぐに魔族と……人間達の方へと突っ込んでいく。
「何をする気だ?」
鎧が白く輝き、そして彼らは魔法を詠唱しだした。その濃厚な魔力の塊は巨大な光球へと形を変え、魔族に向かって撃ちだされる。
それは空飛ぶ魔族を勢いよく消し去りながら敵軍の中央上空まで進み、そこで大きな音を立てて弾けた。一つの大きな光球は、数えきれない数のビー玉サイズの小さな光球に分解され、その一つ一つが曲線を描きながら魔族の中に撃ち込まれて行く。
「ホーミングか?」
あの小さな粒一つ一つが何かを狙っているかの様に不規則な動きをしながら落下している。もしかして魔族だけを狙って倒しているのか? それじゃまるで時間が足りないと思うが……
「違います」
ハカセが私の疑問を察知して答える。
「あれが……あれが狙っているのは……、人間です……」
「…………は?」
もう一度戦場に視線を戻す。白い粒は何かを狙う様に動きながら……その数多くが敵の最前線に突き刺さっていた。
「何故だ……? 何故人間だけを殺す必要がある? そんなことをするぐらいなら魔族を巻き込んで攻撃した方がまだマシじゃないか……」
全ての攻撃目標を倒しきったのだろうか、光球はすべて消え去り、同時に天聖軍からまた激しい攻撃が再開された。つまり……排除が終わったのだろう、天聖軍が攻撃をためらう原因の。
「天聖者が皆人類の庇護者というわけではない」
うなだれる私に女神様が声をかけてくださる。
「中には人類を裏切り魔族と共に人を滅ぼした者、己の私欲の為に人を殺めた者なども少なからずいる」
「…………何故その様な者が?」
女神様も我々も人の為に存在しているはずである。その我々の中に魔族の手先とも言えるような輩が居て良いはずがないのではないか。
「必要だからだ。今まさに目にしたように、知恵の回る魔族にはこういった人質を使った行動をとるものも多い。その時に我々全員が人の命を重視する者ばかりであったならどうなる? 我々の被害が増えるということはそのまま救う事が出来る世界や人が減るのだ。故に躊躇せず人を手にかけることができる部隊が存在している。先天的にそういった性質の者や、訓練で己の心を消すことができる者、そういった者達で構成された部隊がな」
女神様の仰る事はもっともだ。人質を取るような相手に対して一番してはいけない事は、人質が有効だと思われるような事だ。人間の人質としての価値が高くなればなるほど、奴らはより多くの人を盾にして攻めてくるだろう。
しかしだからといって全く気にせず人を殺せる天聖者が何人いるだろうか? 心構えとして人質を無視して攻撃することが正しい事だと理解していても、実行に移せるものは多くない。そして誰かがそれをしてくれない限りは、全員でやるしかなくなってしまう。ではどれだけの天聖者が人を殺した後にそれを忘れて今まで通りに過ごしていくことができるのだろうか。
「彼らは我々の罪を背負ってくれているのですね」
女神様は静かにうなずいた。
馬鹿な! どうして人間が魔族に協力しているんだ!?
「それだけじゃありません……最前線以外にも一定間隔で人間の集団が点在しています」
「そ……それじゃ」
「どうしても人間に被害が出るのを避ける事は難しいでしょう」
天聖者のことだ、種族を選んでロックオンできる奴がいてもおかしくはないだろう。しかし人に被害を出さないようにするなら範囲攻撃や火力の大きいものは撃つことができない。魔族だけを一匹ずつ倒していくのでは到底間に合わないだろう。そして人間に攻撃されたとしたら、一体私たちはどうすればいい?
こうして考えている間にも両軍の距離はどんどん縮まっていく。敵との間隔が近くなればなるほど、こちらにも被害が及ぶ可能性のある威力の大きい攻撃はやりづらくなってしまう。
「女神様……!!」
すがる様に女神様を見るが、彼の方はただ首を横に振るだけであった。
「これは天聖者の乗り越えるべき試練である。全ての戦いに我がおるとは限らぬ」
「ははっ……!」
しかしそれではどうすればいい? 殺すしかないのか? あの量の人間を?
「オール! あれ!」
今度は何だ!
バンコがひどく驚いた表情で指さす方向を見る。そこには我々の白き方陣から新たに飛び上がる数十人の天聖者の姿があった。彼らはある程度の高さまで上昇した後真っすぐに魔族と……人間達の方へと突っ込んでいく。
「何をする気だ?」
鎧が白く輝き、そして彼らは魔法を詠唱しだした。その濃厚な魔力の塊は巨大な光球へと形を変え、魔族に向かって撃ちだされる。
それは空飛ぶ魔族を勢いよく消し去りながら敵軍の中央上空まで進み、そこで大きな音を立てて弾けた。一つの大きな光球は、数えきれない数のビー玉サイズの小さな光球に分解され、その一つ一つが曲線を描きながら魔族の中に撃ち込まれて行く。
「ホーミングか?」
あの小さな粒一つ一つが何かを狙っているかの様に不規則な動きをしながら落下している。もしかして魔族だけを狙って倒しているのか? それじゃまるで時間が足りないと思うが……
「違います」
ハカセが私の疑問を察知して答える。
「あれが……あれが狙っているのは……、人間です……」
「…………は?」
もう一度戦場に視線を戻す。白い粒は何かを狙う様に動きながら……その数多くが敵の最前線に突き刺さっていた。
「何故だ……? 何故人間だけを殺す必要がある? そんなことをするぐらいなら魔族を巻き込んで攻撃した方がまだマシじゃないか……」
全ての攻撃目標を倒しきったのだろうか、光球はすべて消え去り、同時に天聖軍からまた激しい攻撃が再開された。つまり……排除が終わったのだろう、天聖軍が攻撃をためらう原因の。
「天聖者が皆人類の庇護者というわけではない」
うなだれる私に女神様が声をかけてくださる。
「中には人類を裏切り魔族と共に人を滅ぼした者、己の私欲の為に人を殺めた者なども少なからずいる」
「…………何故その様な者が?」
女神様も我々も人の為に存在しているはずである。その我々の中に魔族の手先とも言えるような輩が居て良いはずがないのではないか。
「必要だからだ。今まさに目にしたように、知恵の回る魔族にはこういった人質を使った行動をとるものも多い。その時に我々全員が人の命を重視する者ばかりであったならどうなる? 我々の被害が増えるということはそのまま救う事が出来る世界や人が減るのだ。故に躊躇せず人を手にかけることができる部隊が存在している。先天的にそういった性質の者や、訓練で己の心を消すことができる者、そういった者達で構成された部隊がな」
女神様の仰る事はもっともだ。人質を取るような相手に対して一番してはいけない事は、人質が有効だと思われるような事だ。人間の人質としての価値が高くなればなるほど、奴らはより多くの人を盾にして攻めてくるだろう。
しかしだからといって全く気にせず人を殺せる天聖者が何人いるだろうか? 心構えとして人質を無視して攻撃することが正しい事だと理解していても、実行に移せるものは多くない。そして誰かがそれをしてくれない限りは、全員でやるしかなくなってしまう。ではどれだけの天聖者が人を殺した後にそれを忘れて今まで通りに過ごしていくことができるのだろうか。
「彼らは我々の罪を背負ってくれているのですね」
女神様は静かにうなずいた。
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