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第二章
2-11 反撃
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攻撃を再開できるようになったものの、両軍の距離はかなり詰められてしまい、もはや肉弾戦は避けられぬであろう事が予想された。
今や高火力広範囲の攻撃は、味方の巻き添えを防ぐ為相手の後方に落とすしかなく、その進軍を留めることは不可能になってしまったのだ。
天聖軍は防御の準備を着々と進め、方陣の四方全ての方向に対して迎撃の態勢を取っている。
未だに数で勝る魔族達はあっという間に天聖軍を取り囲み、ついに近接戦闘が始まってしまった。外周をタンクとアタッカー、その後ろにメイジやアーチャー、ヒーラーが構え、飛行が可能なものはまた空へ飛びながら制空権の確保に努めている。
「しかしこれは……」
あらゆる方向から黒い津波のように押し寄せる魔物達、しかしその波は白い防波堤に触れるだけで飛沫となって消えていく。今までの流れを見ているだけだった剣士や闘士達が、待ってましたとばかりにその力を奮っているのだ。
魔物の攻撃は全て盾やシールドで完全に防がれ、反対に天聖者が刀を振れば扇形に、槍を突き出せば長方形に、その得物を動かすごとに魔物の群れにポッカリと穴が開いていく。
五十万の主人公達は思い思いにその実力を相手に見せつけ、次第に魔物達の数もこちらと変わらないぐらいに減っていた。包囲もいつの間にか解かれており、今やまた開戦時と同じように互いに正対している。変わったことといえば魔物の数ぐらいで、天聖軍はまるで無傷のようだ。
「終わってみれば何ということもない戦いだったか」
距離を開けていても一方的に攻撃されるばかりの魔物達は、ついに最後の玉砕を始めた。熱した鉄板に垂らした水滴のように蒸発していく奴らを確認し、お祝いの言葉を考えながら女神様の方に振り返る。女神様は表情を一切崩すことなく、遥か彼方の一点を凝視し続けていた。
慌ててその視線の先を追うと、そこには出現以来微動だにしていなかったあの巨人がいた。いや、よく見るといつの間にかその手には棍棒のようなものが握られており、それを振り上げている。
しかしだから何だというのか、彼我の距離はまさに地平線のかなたであり、奴があそこで何をしたとしてもそれは意味をなさないだろう。確かに生き残りがいる事は宜しくないし、逃すなよという意味でアレを見てらっしゃるのだろう。
味方はそろそろ殲滅を終えているだろう、あとは適当な人数であのデカブツを倒して終わりだ。
天聖軍は相変わらず美しい方陣を維持したまま、魔物の掃討を終えるところだった。彼らも勿論あの巨大な人の形をした魔物の事は認識しているようで、ゆっくりと前進を始めた。
「全軍でとは慎重だな」
相手のサイズがサイズだけに念を入れているのであろう。天聖者が一人減るだけで世界にとってはあまりに大きな損失となるので、これぐらい慎重である方が良いのかもしれない。
そんなことを考えながら天聖軍を眺めていると、美しい正方形を保っていた方陣の正面部分が削れた。始めは進軍速度を上げるために布陣を変えただけかなと思っていたのだが、しばらくしてまた陣の正面部分が削れる。
何が起きたんだ? と呆けていると、ハカセが大慌てで答えを教えてくれた。
「あのデカイやつです! あいつの攻撃です!」
確かにあの巨人はさっき振り上げていた腕を下ろしている。しかしたったそれだけで天聖者をまとめて倒せたりするはずがない! 彼らは皆が言葉通り一騎当千の勇者達なのだ!
そんなことを言っている間にも、やつは再度腕を振り上げようとしている。天聖軍もさっきの二回で前衛が尽く消えてしまったらしく、もはやまともな陣形を取る事ができていなかった。
それでも逃げ出したりするものが見当たらないのは流石だが、このままでは全滅してしまう。
「女神様……!」
事ここに至ってはもはや試練などと言っている場合ではないはずだ。
しかし女神様はやはり表情を変えることもなくこう言いました。
「F組よ、真価を発揮する時が来ました」
そして我々の一人ずつに話しかけていきます。
「ゴエモンよ。守る者が多いほど強くならお前の盾で天聖者達を守りなさい」
「バンコよ。涙の数だけ強くなる癒しの力で天聖者を癒しなさい」
二人は頷き、未だ陣が立て直せずにいる天聖軍へ向かって飛んで行きました。
「ハカセよ。言葉さえ置き去りにするお前の知恵でオールを助けなさい」
「そしてオール。全能のオールよ。貴方の力の封印を今解きます」
女神様は私の手をお取りになりました。するとそこからまばゆいばかりの光が溢れ、私は自分の能力の事を全て仔細に思い出したのです。
「行きなさい。Fortitudeよ」
私とハカセは、今また腕を振り下ろさんとしている巨人に向かって飛び立ちました。
今や高火力広範囲の攻撃は、味方の巻き添えを防ぐ為相手の後方に落とすしかなく、その進軍を留めることは不可能になってしまったのだ。
天聖軍は防御の準備を着々と進め、方陣の四方全ての方向に対して迎撃の態勢を取っている。
未だに数で勝る魔族達はあっという間に天聖軍を取り囲み、ついに近接戦闘が始まってしまった。外周をタンクとアタッカー、その後ろにメイジやアーチャー、ヒーラーが構え、飛行が可能なものはまた空へ飛びながら制空権の確保に努めている。
「しかしこれは……」
あらゆる方向から黒い津波のように押し寄せる魔物達、しかしその波は白い防波堤に触れるだけで飛沫となって消えていく。今までの流れを見ているだけだった剣士や闘士達が、待ってましたとばかりにその力を奮っているのだ。
魔物の攻撃は全て盾やシールドで完全に防がれ、反対に天聖者が刀を振れば扇形に、槍を突き出せば長方形に、その得物を動かすごとに魔物の群れにポッカリと穴が開いていく。
五十万の主人公達は思い思いにその実力を相手に見せつけ、次第に魔物達の数もこちらと変わらないぐらいに減っていた。包囲もいつの間にか解かれており、今やまた開戦時と同じように互いに正対している。変わったことといえば魔物の数ぐらいで、天聖軍はまるで無傷のようだ。
「終わってみれば何ということもない戦いだったか」
距離を開けていても一方的に攻撃されるばかりの魔物達は、ついに最後の玉砕を始めた。熱した鉄板に垂らした水滴のように蒸発していく奴らを確認し、お祝いの言葉を考えながら女神様の方に振り返る。女神様は表情を一切崩すことなく、遥か彼方の一点を凝視し続けていた。
慌ててその視線の先を追うと、そこには出現以来微動だにしていなかったあの巨人がいた。いや、よく見るといつの間にかその手には棍棒のようなものが握られており、それを振り上げている。
しかしだから何だというのか、彼我の距離はまさに地平線のかなたであり、奴があそこで何をしたとしてもそれは意味をなさないだろう。確かに生き残りがいる事は宜しくないし、逃すなよという意味でアレを見てらっしゃるのだろう。
味方はそろそろ殲滅を終えているだろう、あとは適当な人数であのデカブツを倒して終わりだ。
天聖軍は相変わらず美しい方陣を維持したまま、魔物の掃討を終えるところだった。彼らも勿論あの巨大な人の形をした魔物の事は認識しているようで、ゆっくりと前進を始めた。
「全軍でとは慎重だな」
相手のサイズがサイズだけに念を入れているのであろう。天聖者が一人減るだけで世界にとってはあまりに大きな損失となるので、これぐらい慎重である方が良いのかもしれない。
そんなことを考えながら天聖軍を眺めていると、美しい正方形を保っていた方陣の正面部分が削れた。始めは進軍速度を上げるために布陣を変えただけかなと思っていたのだが、しばらくしてまた陣の正面部分が削れる。
何が起きたんだ? と呆けていると、ハカセが大慌てで答えを教えてくれた。
「あのデカイやつです! あいつの攻撃です!」
確かにあの巨人はさっき振り上げていた腕を下ろしている。しかしたったそれだけで天聖者をまとめて倒せたりするはずがない! 彼らは皆が言葉通り一騎当千の勇者達なのだ!
そんなことを言っている間にも、やつは再度腕を振り上げようとしている。天聖軍もさっきの二回で前衛が尽く消えてしまったらしく、もはやまともな陣形を取る事ができていなかった。
それでも逃げ出したりするものが見当たらないのは流石だが、このままでは全滅してしまう。
「女神様……!」
事ここに至ってはもはや試練などと言っている場合ではないはずだ。
しかし女神様はやはり表情を変えることもなくこう言いました。
「F組よ、真価を発揮する時が来ました」
そして我々の一人ずつに話しかけていきます。
「ゴエモンよ。守る者が多いほど強くならお前の盾で天聖者達を守りなさい」
「バンコよ。涙の数だけ強くなる癒しの力で天聖者を癒しなさい」
二人は頷き、未だ陣が立て直せずにいる天聖軍へ向かって飛んで行きました。
「ハカセよ。言葉さえ置き去りにするお前の知恵でオールを助けなさい」
「そしてオール。全能のオールよ。貴方の力の封印を今解きます」
女神様は私の手をお取りになりました。するとそこからまばゆいばかりの光が溢れ、私は自分の能力の事を全て仔細に思い出したのです。
「行きなさい。Fortitudeよ」
私とハカセは、今また腕を振り下ろさんとしている巨人に向かって飛び立ちました。
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