テンセイミナゴロシ

アリストキクニ

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第二章

2-12 決着

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 巨人の化け物に突撃しながらいくつかのバフをハカセと自分にかける。奴はもう腕を振り下ろす直前であり、このまま何もしなければ天聖軍とそれを守るゴエモンとバンコに被害が出てしまう。
(受け止めるか流すかだが……)
 あのように無作法な攻撃が女神様にかすりでもしたら、私は自責の念で死んでしまうだろう。ここは正面から受け止める事を選択する。一応ゴエモン達にほんの少しだけ衝撃波が届くぐらいにしておいて、彼らにも活躍の場を与えることを考える。
(なんせ同じ教室の仲間たちなんだからな)
 フフッと笑いがこぼれる。何もかもが懐かしい。
「オール殿……あなたは……」
 私と意識が繋がれた仲間たちはもう私の正体に気づいただろうか。私はテレパシーの波長を変え、彼らに私の考えが伝わらないように調節した。女神様によって解放された過去の記憶は、私が何者でどんなことができるのかを全て思い出させてくれた。立場上の機密という物もたくさん存在するので、それまで伝わってしまうと困るからだ。
(しかし謎はいくつも残されているな)
 女神様のご意向を私ごときが推察するなど不遜にもほどがある、今はひとまずご期待に応えるとしよう。
 のんきに思案にふけっていると、巨人がついにその大きな腕を勢いよく振り下ろした。瞬間、爆縮された空気の塊が恐ろしい凶器へと変わり我々に直撃する。
 だがそれは私とハカセには届かない。私が少し手を振れば一切合切が相殺される。私は全能のオール、奴に出来る事は当然私にもできるのだ。だが……

(しまった!!)

 私は自分がとんでもないミスを犯していたのに気が付いてしまった。なんたることだ、これでは仲間たちに顔向けできん!
 
 余りにも弱い攻撃だったせいで、そして久しぶりに奮う能力のせいで、力加減をミスって完全に相殺してしまったのだ。更によくない事に私の腕から放たれた衝撃波は勢い余って巨人の脇腹を大きくえぐってしまっていた。これじゃ巨人がもう一回さっきのやつを撃ってくれるかどうかわからない。
 しかし私の心配は杞憂だったようで、巨人は大きなダメージを受けたその身体で再び腕を振り上げ始めた。よしよし、お前は出来る奴だと信じていたぞ。次はしっかりゴエモン達が女神様に活躍しているところを見せられるよう配慮せねばならん。
 ハカセや仲間たちには『強大な魔物に対策するための研究』と説明し、一緒にもう一撃が飛んでくるのを待ってもらった。
(しかしトロいな……寝てしまいそうだ)
 巨人が腕を振り上げる速度はあまりにも遅く、手持ち無沙汰と退屈でアクビが出そうだ。あまりにも暇なので私を転生させたアンタッチャブル達の事を思索する。
(奴らは死んでいたはずだ。しかし学院に私を送り込んだのは間違いなくアンタッチャブル達。そもそも私はなぜ再度転生をしているのだ? 私はいつどこで死んだ? 死んだとしたらなぜ転生できる?)
 この世界に蘇生はない。時を巻き戻したりリセットしてどこかに戻るような能力もない。嫌というほど経験しているのだ、同胞が死ぬたびに蘇生もリセットも探した。しかしこの世界にそんな都合の良いものは存在しない。
 そして二回目の転生もない。我々は死んだら消えさるのみ。唯一の例外として、神だけは死んでもすぐ新たに光臨なされるのは知っているが、それでも前の神と次の神は全く異なる容姿をしている。
(私だけが例外という事だろうか?)
 しかしそれもないだろう。自分だけが特別と考えながら死んでいった天聖者は数えきれないほどだ。我々はありえないほど強大な力を持っているが、敵もまたその例外ではないのだ。
(アンタッチャブルめ……)
 彼らは天聖軍の仇敵であるはずなのに、なぜか今は怒りや憎しみが沸いてこなかった。天聖の鎧もいつもより輝きがにぶいようだ。記憶が戻ってすぐであるため、まだうまく自分を取り戻せていないのかもしれない。

「オール殿!」
 腕を組んであれこれ思慮にふけっていたが、ハカセの声に顔を上げる。デカブツはようやくその腕をまた完全に振り上げ、そして振り下ろす。
 さっきとなんら変わりのない一撃に正直なところガッカリしてしまったが、とりあえず99%ぐらいは私が相殺して残りの1%を後ろに任せる事にする。音速を越えて飛来する攻撃をしっかりと解析し、威力を出しすぎてしまわないように注意しながら腕を振った。
 企みはうまくいったようで、私の横を相殺しきれなかった分の衝撃波がそよ風の様に通り過ぎていく。あとはこれをゴエモンとバンコで受け止めてくれれば完成だ。普段の彼らなら粉々になってしまうような攻撃かもしれないが、今は女神様のご加護を頂いている。問題ないだろう。
 遥か後方で守備を固める天聖軍に目を向ける。ゴエモンが四方に出した巨大な盾は残った天聖軍が全て隠れられるほど巨大で、その隙間をバンコのバンソウコウが隙間なく塞いでいる。その上からさらにたくさんのシールドやバフが他の天聖者達によって追加されているのがわかった。
 ほどなくして衝撃波は彼らに到着し、巨大な爆音を奏でる。念の為生命探知を発動させたが、彼らは間違いなく全員無事だ。

「それじゃ後は倒して終わりだな」
 私は巨人に向け再度手を強めに振った。

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