133 / 229
第百三十四話 ドラゴニア王国【其の五】
しおりを挟む
「どこから話せばいいかしら」――
――――そう言って彼女は語り出した。
リザードマンの祖先は竜だと伝えられている。それが信仰として、リザードマンは竜に仕える事によって、来世は竜に生まれ変われると信じられていた。だから信者である彼女は無償で、竜王のメイドとして使えているという。もちろんこの信仰は一部のリザードマンだけの話しである。
そしてこの話は竜族の歴史に繋がっていった。
百年前の竜族は大きな町を作ったり、集団生活はしていなかった。竜はこの世界の頂点に立つ種族であり、勝手気ままに生きていた。お腹がすけば魔獣を狩って腹を満たし、何か欲しければ他種族を襲って奪う。そんな生き方を数千年続けていた。力が上下関係を支配し、宝を沢山蓄え守ることこそが彼ら竜の性質であった。しかし、新しい魔王が誕生してその生活が一変した……。
若い竜たちが、新しい魔王に戦いを挑んだのである。以前の魔王に力が通用しなかったが、新魔王ならどうにかなると挑発した。けれども彼らは簡単に魔王に殺されてしまう。そこで話は終わらなかった。殺された竜の親族たちが次々と魔王に襲いかかった。一匹で、簡単に町を落とすほどの力を秘めた成人した竜たちだったが、魔王には歯が立たず返り討ちに遭う。遂に徒党を組まない竜まで巻き込み戦争が起こった。竜のトップである黒竜と白竜が筆頭となり魔王に攻撃を仕掛けた。竜族の圧勝と思われたその戦は、魔王が竜族を虐殺するという形で戦争は終焉を迎えた。その戦で千頭以上いた竜の四分の三が消えたという。今の竜王様は戦争に参加しておらず、その竜族を筆頭にまとめ上げて、作った国がドラゴラス王国だった。
竜族の支配者となった魔王様は、彼らに対し集団で生活することを命じた。今までは気にいった所に、単独もしくは小さな家族だけで巣を作り、宝を溜めて暮らしていた。魔人の中でも、かなり原始的な生き方と言えた。その竜たちが、敗戦によりドワーフによって作られた町に押し込められて生活を続け、信者であるリザードマンに生活を支えられながら生きていくうちに、(料理という)文化に取り込まれていくことになる。今までは生肉や野草をただ食べていた竜族が、調理された味付けの食べ物にあらがえるはずもなく、料理の虜となる。
リザードマンの食生活が主流になると、力を誇示するための身体の大きさが、逆に邪魔になり小さいままでの生活が彼らの基本になってくる。そうして暮らしやすいように、ドワーフ国から職人を呼びつけ、国を作り上げていくことになった。彼らがいままで溜めてきた宝は膨大な量であり、しかも、戦争で亡くなった竜の財産を含めれば尽きることはまずあり得ない。そうして今のドラゴニア王国が出来たのである。
ドワーフ王国やエルフ皇国より文明が遅れているのは、彼らが長命種であり時間の感覚のずれであった。彼らにとって百年などそれほど長い時間ではなく、町作りなど自分たちが生活出来ればどうなろうと気にも留めなかった。ドワーフに丸投げして、町がゆっくりと出来上がったのである。そして、もともと持っている引きこもり体質が、屋敷の中で十分発揮され、何不自由ない生活に溺れていくことになる……。
彼らは食事を楽しむだけで満足しており、他種族のような娯楽というものにまだ触れてはいない、文明がまだ始まったばかりといっても良かった。その弊害が子供がまったく誕生せず、小さな町の単位で国が収まっている。この百年の間王族から子供が産まれたことは無かったのである。
「マジか……」
と、呟いて眉根を寄せた。
「おっちゃんよ……この話を仲間に話しても、到底、信じて貰えないよな」
彼女は苦笑いを浮かべて返す。
「それでは、御子の誕生は、とてつもない大イベントではないのか!?」
「はい、そうなります……ただ御子様の卵が行方不明になったことは、殆どの竜族は知りません。子供の誕生は、数年掛けて孵化することも珍しくはないので、御子様が産まれるまでは、とくに騒いだりはしないのです」
「今回の『継承の義』なんて国民全員が祝ってもおかしくないはずなんだが」
「普通はそうですが、まずは御子様が継承の義を成功させ、お披露目になると思います」
「し、失敗もあるのかよ!?」
それを聞いて、俺は思わず驚嘆の声を発した。
「し、失礼いたしました……私も『継承の義』に関わるのは初めてなもので、よく知らないのです……」
そう言って、彼女は頭を深々と下げて謝った。
レイラはドラゴニア王国から、タリアの町にソラを連れ帰ることを想像する。
「……オレたちは生きて帰れないかもしれないな」
「だな……」
二人の間に重苦しい沈黙が流れる。それを打ち消すために、苦くなった酒を一気に飲み干した……。
――――そう言って彼女は語り出した。
リザードマンの祖先は竜だと伝えられている。それが信仰として、リザードマンは竜に仕える事によって、来世は竜に生まれ変われると信じられていた。だから信者である彼女は無償で、竜王のメイドとして使えているという。もちろんこの信仰は一部のリザードマンだけの話しである。
そしてこの話は竜族の歴史に繋がっていった。
百年前の竜族は大きな町を作ったり、集団生活はしていなかった。竜はこの世界の頂点に立つ種族であり、勝手気ままに生きていた。お腹がすけば魔獣を狩って腹を満たし、何か欲しければ他種族を襲って奪う。そんな生き方を数千年続けていた。力が上下関係を支配し、宝を沢山蓄え守ることこそが彼ら竜の性質であった。しかし、新しい魔王が誕生してその生活が一変した……。
若い竜たちが、新しい魔王に戦いを挑んだのである。以前の魔王に力が通用しなかったが、新魔王ならどうにかなると挑発した。けれども彼らは簡単に魔王に殺されてしまう。そこで話は終わらなかった。殺された竜の親族たちが次々と魔王に襲いかかった。一匹で、簡単に町を落とすほどの力を秘めた成人した竜たちだったが、魔王には歯が立たず返り討ちに遭う。遂に徒党を組まない竜まで巻き込み戦争が起こった。竜のトップである黒竜と白竜が筆頭となり魔王に攻撃を仕掛けた。竜族の圧勝と思われたその戦は、魔王が竜族を虐殺するという形で戦争は終焉を迎えた。その戦で千頭以上いた竜の四分の三が消えたという。今の竜王様は戦争に参加しておらず、その竜族を筆頭にまとめ上げて、作った国がドラゴラス王国だった。
竜族の支配者となった魔王様は、彼らに対し集団で生活することを命じた。今までは気にいった所に、単独もしくは小さな家族だけで巣を作り、宝を溜めて暮らしていた。魔人の中でも、かなり原始的な生き方と言えた。その竜たちが、敗戦によりドワーフによって作られた町に押し込められて生活を続け、信者であるリザードマンに生活を支えられながら生きていくうちに、(料理という)文化に取り込まれていくことになる。今までは生肉や野草をただ食べていた竜族が、調理された味付けの食べ物にあらがえるはずもなく、料理の虜となる。
リザードマンの食生活が主流になると、力を誇示するための身体の大きさが、逆に邪魔になり小さいままでの生活が彼らの基本になってくる。そうして暮らしやすいように、ドワーフ国から職人を呼びつけ、国を作り上げていくことになった。彼らがいままで溜めてきた宝は膨大な量であり、しかも、戦争で亡くなった竜の財産を含めれば尽きることはまずあり得ない。そうして今のドラゴニア王国が出来たのである。
ドワーフ王国やエルフ皇国より文明が遅れているのは、彼らが長命種であり時間の感覚のずれであった。彼らにとって百年などそれほど長い時間ではなく、町作りなど自分たちが生活出来ればどうなろうと気にも留めなかった。ドワーフに丸投げして、町がゆっくりと出来上がったのである。そして、もともと持っている引きこもり体質が、屋敷の中で十分発揮され、何不自由ない生活に溺れていくことになる……。
彼らは食事を楽しむだけで満足しており、他種族のような娯楽というものにまだ触れてはいない、文明がまだ始まったばかりといっても良かった。その弊害が子供がまったく誕生せず、小さな町の単位で国が収まっている。この百年の間王族から子供が産まれたことは無かったのである。
「マジか……」
と、呟いて眉根を寄せた。
「おっちゃんよ……この話を仲間に話しても、到底、信じて貰えないよな」
彼女は苦笑いを浮かべて返す。
「それでは、御子の誕生は、とてつもない大イベントではないのか!?」
「はい、そうなります……ただ御子様の卵が行方不明になったことは、殆どの竜族は知りません。子供の誕生は、数年掛けて孵化することも珍しくはないので、御子様が産まれるまでは、とくに騒いだりはしないのです」
「今回の『継承の義』なんて国民全員が祝ってもおかしくないはずなんだが」
「普通はそうですが、まずは御子様が継承の義を成功させ、お披露目になると思います」
「し、失敗もあるのかよ!?」
それを聞いて、俺は思わず驚嘆の声を発した。
「し、失礼いたしました……私も『継承の義』に関わるのは初めてなもので、よく知らないのです……」
そう言って、彼女は頭を深々と下げて謝った。
レイラはドラゴニア王国から、タリアの町にソラを連れ帰ることを想像する。
「……オレたちは生きて帰れないかもしれないな」
「だな……」
二人の間に重苦しい沈黙が流れる。それを打ち消すために、苦くなった酒を一気に飲み干した……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる