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第九話 初陣【其の一】
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「昨日は勇者様を危険な目に遭わせてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
朝食を済ませた後、部屋に来たナービスさんが、僕に深々と頭を垂れ陳謝してきた。
「無事に帰れたので良いじゃないですか」
僕は彼女を労った……。
「そう言って頂けますと、従者共々救われます」
ナービスさんはもう一度、頭を下げた……。
「今から馬車を用意しますので、勇者様の準備が整い次第ダブラスの村に進軍しましょう」
唐突な申し出にも聞こえたが、移動時間とか考えればそんなものかと思い直し
「分かりました」
と、素直に返事をした。
ナタリアに手伝ってもらい七色の鎧を身につけたが、どうにもしっくりとこない。鎧の重さは感じなかったが、全てのパーツで身体を覆うと、身体に熱がこもり蒸れるので気持ちが悪い。取りあえず胸部を守るため胸当てだけを残して、残りのパーツは外すことにした。そうして最後に聖剣ダーバンを腰に差し、戦いの準備を終わらせた。
王都から魔王軍が占拠しているダブラスの村までは、馬車で二日かかるという。バルザ王国軍の兵士を、五十名ほど率いて戦にあたる。何の情報もないまま魔王軍と戦って勝てるのだろうか……。日本人なら誰でも知っている孫子の兵法の一節のに『彼を知り己を知れば百戦殆からず』があるが、ここではそんな当たり前のことも出来ていないのに不安になる。
「敵情を知らなくて戦いをするのは、この世界での常識なんでしょうか?」
同乗している部隊長に尋ねてみた。
「まさか、そんな戦い方なんて子供の喧嘩じゃあるまいし、普通ではありませんね。実はここだけの話しですが、魔王軍がダブラス村を占拠してから半年以上経っています。占拠された当初は、武功を上げにいった上級貴族たちが、帰ってこなかったのです。魔王軍はその後進行することもなかったので、村自体を見捨てた形になっております」
「そこを拠点とされれば、王国にとっては致命的なことになりそうなんですが……」
「はあ……。行けば分かることですが、その村に拠点を広げられるような場所でもないのです。だから何故魔王軍が、この地に侵攻した理由が分からないんですよね」
「ようするに、僕の実力を計るための戦ということですか」
「そうですかね……」
と、肯定とも否定とも取れるような曖昧な返事で答えた。
王都から出立して半日が経った。予想外の出来事に遭遇することもなく、順調に進軍を続ける。ときおり大きな魔物が馬車の窓から見えたが、こちらを襲うことはなかった。一応、今日の野営地まで斥候を送りだして警戒を怠らないようにした。
西の空が暗くなる頃、計画していた野営地に時間通りに到着した。隊長の指示でてきぱきと兵隊がテントを組み上げ、食事の準備を始めている。自分は何もしていないのに、身体が疲労しているのが分かる。明日はちゃんと戦えるのだろうかと、不安な気持ちに駆られた。
そんな気持ちを察したのか
「勇者様、夕食をお持ちしました」
ナタリアは優しい笑顔で、俺のテントに食事を運んできてくれた。
「ありがとう。美味しそうな料理ですね」
「私が作った訳ではないのですが、美味しいですよ」
そう言って、ころころと笑った。
「ナタリアも一緒にいかがですか?」
「私は勇者様の従者としてお使いしていますので、それは出来かねます」
僕は無理に食事を勧めることは諦めた。
「じゃあ、食べ終わるまでここにいてよ」
「それが命令とあれば……」
頬をピンクに染めて恥ずかしそうに返事をした。彼女とたわいもない世間話をしながら、ゆっくりと食事を済ませる。ナタリアから温かいお茶が差し出され、それを飲み干した。そうして身体が温まり、お腹が満たされると急に眠気がさしてきた。
「勇者様、寝床が用意出来ていますので、お休みになって下さい」
「ああ、悪いけど先に寝かせて貰います」
僕はナタリアに空の食器を手渡して、簡易ベッドに横になり眠りについた……。
朝食を済ませた後、部屋に来たナービスさんが、僕に深々と頭を垂れ陳謝してきた。
「無事に帰れたので良いじゃないですか」
僕は彼女を労った……。
「そう言って頂けますと、従者共々救われます」
ナービスさんはもう一度、頭を下げた……。
「今から馬車を用意しますので、勇者様の準備が整い次第ダブラスの村に進軍しましょう」
唐突な申し出にも聞こえたが、移動時間とか考えればそんなものかと思い直し
「分かりました」
と、素直に返事をした。
ナタリアに手伝ってもらい七色の鎧を身につけたが、どうにもしっくりとこない。鎧の重さは感じなかったが、全てのパーツで身体を覆うと、身体に熱がこもり蒸れるので気持ちが悪い。取りあえず胸部を守るため胸当てだけを残して、残りのパーツは外すことにした。そうして最後に聖剣ダーバンを腰に差し、戦いの準備を終わらせた。
王都から魔王軍が占拠しているダブラスの村までは、馬車で二日かかるという。バルザ王国軍の兵士を、五十名ほど率いて戦にあたる。何の情報もないまま魔王軍と戦って勝てるのだろうか……。日本人なら誰でも知っている孫子の兵法の一節のに『彼を知り己を知れば百戦殆からず』があるが、ここではそんな当たり前のことも出来ていないのに不安になる。
「敵情を知らなくて戦いをするのは、この世界での常識なんでしょうか?」
同乗している部隊長に尋ねてみた。
「まさか、そんな戦い方なんて子供の喧嘩じゃあるまいし、普通ではありませんね。実はここだけの話しですが、魔王軍がダブラス村を占拠してから半年以上経っています。占拠された当初は、武功を上げにいった上級貴族たちが、帰ってこなかったのです。魔王軍はその後進行することもなかったので、村自体を見捨てた形になっております」
「そこを拠点とされれば、王国にとっては致命的なことになりそうなんですが……」
「はあ……。行けば分かることですが、その村に拠点を広げられるような場所でもないのです。だから何故魔王軍が、この地に侵攻した理由が分からないんですよね」
「ようするに、僕の実力を計るための戦ということですか」
「そうですかね……」
と、肯定とも否定とも取れるような曖昧な返事で答えた。
王都から出立して半日が経った。予想外の出来事に遭遇することもなく、順調に進軍を続ける。ときおり大きな魔物が馬車の窓から見えたが、こちらを襲うことはなかった。一応、今日の野営地まで斥候を送りだして警戒を怠らないようにした。
西の空が暗くなる頃、計画していた野営地に時間通りに到着した。隊長の指示でてきぱきと兵隊がテントを組み上げ、食事の準備を始めている。自分は何もしていないのに、身体が疲労しているのが分かる。明日はちゃんと戦えるのだろうかと、不安な気持ちに駆られた。
そんな気持ちを察したのか
「勇者様、夕食をお持ちしました」
ナタリアは優しい笑顔で、俺のテントに食事を運んできてくれた。
「ありがとう。美味しそうな料理ですね」
「私が作った訳ではないのですが、美味しいですよ」
そう言って、ころころと笑った。
「ナタリアも一緒にいかがですか?」
「私は勇者様の従者としてお使いしていますので、それは出来かねます」
僕は無理に食事を勧めることは諦めた。
「じゃあ、食べ終わるまでここにいてよ」
「それが命令とあれば……」
頬をピンクに染めて恥ずかしそうに返事をした。彼女とたわいもない世間話をしながら、ゆっくりと食事を済ませる。ナタリアから温かいお茶が差し出され、それを飲み干した。そうして身体が温まり、お腹が満たされると急に眠気がさしてきた。
「勇者様、寝床が用意出来ていますので、お休みになって下さい」
「ああ、悪いけど先に寝かせて貰います」
僕はナタリアに空の食器を手渡して、簡易ベッドに横になり眠りについた……。
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