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第十九話 旅立ち
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魔王城から出ると、仲間たちが心配そうに駆け寄ってきてくれる。
「勇者様、お怪我はありませんか?」
シシリアが目に涙を湛え、僕の袖を両手でがっしりとつかんだ。
「無事に話し合いは終わったよ」
僕は彼女の頭を軽くなで、手に持っていた魔王の角を、仲間たちに見せた。
「ひゃっほーーー!! 俺たちは遂に魔王を討伐したんだよな」
クリスタルが柄にもなく一番に涙を流していた。
「これで平和が訪れますわ」
ソフィアがクリスタルに、自分のハンカチを手渡した。
「珍しいことをするね」
僕はそう言って、彼女をニヤニヤ笑って眺めると、蛸のように真っ赤な顔になってしまう。
「それじゃあ、みんなで王都まで凱旋と洒落込もうじゃないか!」
クリスタルが意気揚々と歩を進め始めた。
「盛り上がっているところ水を差して悪いのですが……僕は一緒に王都に帰ることは出来ない」
僕は務めて明るい口調で言う。
「どういうことですか!?」
「なに馬鹿なことをいっているの!!」
「面白くもない冗談だぜ!」
驚きに目を丸くしたシシリアたちが、僕を凝視する。何か理由があるのだろうと三人に詰め寄られて、事の経緯を簡単に説明した。それでも彼らは中々納得してくれなかったので、胸に刻んだ刻印を見せ「魔王との約束」を盾に強引に別れを済ませた。
「メタスタシス☆エクストラ」
最上級の転移魔法を唱えると、僕の身体が王宮にある自分の部屋に転移した。普通なら魔法は障壁によって弾かれたりするのだが、僕は誰にも察知されることもなく移動する事が出来た。久しぶりの帰還に懐かしさ覚えたが、メイドとばったり出会うのは避けたかったので、すぐに部屋にある私物を鞄に全部収納し用件を済ませた。これで一年間、心置きなく旅が続けられる――否、一つだけ心残りがあった。
その心残りというのは、カトリーヌ王女に旅立つ前に、一目会っておきたかった。そこで自らに隠密魔法のシャドウを掛け、誰にも見つからないように移動する。我ながら女々しい人間だと自覚しながら彼女の部屋に近づいた。運良く彼女の部屋に入ろうとしていた、ナービスと鉢合わせする。そして僕はばれないように歩調を合わせ、彼女の後ろについて行き、部屋に入ることが出来た。
「姫様、朗報です。つい先刻、勇者パーティが魔王の討伐に成功したと、シシリアから連絡を受け取りました」
「遂に勇者がやりましたか!」
「ただ喜んでばかりはいられません……勇者が魔王の魔石を持ったまま、どこかに旅立ったそうです」
「勇者の命を二人が取り損ねたというのですか!」
唖然とした顔でカトリーヌが声を張り上げる。その事実をすぐには受け止められまかった僕は、一瞬、彼女が何を言っているのか理解出来なかった。
「詳しい話はまだですが、勇者と魔王の間で約定があり、我が国と一年間連絡を取れない状態になっているそうです」
「ちっ……早くからシシリアとクリスタルを勇者に付けたというのに、彼らは何をしていたのかしら!!」
王女が柄にもなく舌打ちを洩らす。
「申し訳ありません……一年後に会うと約束したらしいので、あの真面目馬鹿な男なら、必ず連絡をしてくると思います」
「そうですね……そのときは私の手を汚してでも……今は魔王を討伐したことを喜びましょう」
僕は二人の話を聞いて身体から力が抜け去った。そうして近くにあった花瓶を揺らしてしまう。「コトリ」と部屋の中で小さな音が鳴り、二人はその音に驚いて辺りを見回した。
「何か音がしましたよね」
「はい……私の耳にも聞こえました。ただ姫様の部屋には、魔法に対して防御結界が張られているので、侵入者が入ってきたとは考えにくいです。たぶんネズミの足音だと思いますが、一応魔法衛兵を呼びます」
「そうして下さるかしら」
王女は眉間にしわを寄せ、ナービスに命じた。
しばらくすると魔法衛兵がやってきて、部屋中を丹念に調べた。もちろん僕の隠密魔法が、衛兵たちに気が付かれることは全くなかった。彼らが退出する際、僕は部屋から逃げ出した。
「勇者様、お怪我はありませんか?」
シシリアが目に涙を湛え、僕の袖を両手でがっしりとつかんだ。
「無事に話し合いは終わったよ」
僕は彼女の頭を軽くなで、手に持っていた魔王の角を、仲間たちに見せた。
「ひゃっほーーー!! 俺たちは遂に魔王を討伐したんだよな」
クリスタルが柄にもなく一番に涙を流していた。
「これで平和が訪れますわ」
ソフィアがクリスタルに、自分のハンカチを手渡した。
「珍しいことをするね」
僕はそう言って、彼女をニヤニヤ笑って眺めると、蛸のように真っ赤な顔になってしまう。
「それじゃあ、みんなで王都まで凱旋と洒落込もうじゃないか!」
クリスタルが意気揚々と歩を進め始めた。
「盛り上がっているところ水を差して悪いのですが……僕は一緒に王都に帰ることは出来ない」
僕は務めて明るい口調で言う。
「どういうことですか!?」
「なに馬鹿なことをいっているの!!」
「面白くもない冗談だぜ!」
驚きに目を丸くしたシシリアたちが、僕を凝視する。何か理由があるのだろうと三人に詰め寄られて、事の経緯を簡単に説明した。それでも彼らは中々納得してくれなかったので、胸に刻んだ刻印を見せ「魔王との約束」を盾に強引に別れを済ませた。
「メタスタシス☆エクストラ」
最上級の転移魔法を唱えると、僕の身体が王宮にある自分の部屋に転移した。普通なら魔法は障壁によって弾かれたりするのだが、僕は誰にも察知されることもなく移動する事が出来た。久しぶりの帰還に懐かしさ覚えたが、メイドとばったり出会うのは避けたかったので、すぐに部屋にある私物を鞄に全部収納し用件を済ませた。これで一年間、心置きなく旅が続けられる――否、一つだけ心残りがあった。
その心残りというのは、カトリーヌ王女に旅立つ前に、一目会っておきたかった。そこで自らに隠密魔法のシャドウを掛け、誰にも見つからないように移動する。我ながら女々しい人間だと自覚しながら彼女の部屋に近づいた。運良く彼女の部屋に入ろうとしていた、ナービスと鉢合わせする。そして僕はばれないように歩調を合わせ、彼女の後ろについて行き、部屋に入ることが出来た。
「姫様、朗報です。つい先刻、勇者パーティが魔王の討伐に成功したと、シシリアから連絡を受け取りました」
「遂に勇者がやりましたか!」
「ただ喜んでばかりはいられません……勇者が魔王の魔石を持ったまま、どこかに旅立ったそうです」
「勇者の命を二人が取り損ねたというのですか!」
唖然とした顔でカトリーヌが声を張り上げる。その事実をすぐには受け止められまかった僕は、一瞬、彼女が何を言っているのか理解出来なかった。
「詳しい話はまだですが、勇者と魔王の間で約定があり、我が国と一年間連絡を取れない状態になっているそうです」
「ちっ……早くからシシリアとクリスタルを勇者に付けたというのに、彼らは何をしていたのかしら!!」
王女が柄にもなく舌打ちを洩らす。
「申し訳ありません……一年後に会うと約束したらしいので、あの真面目馬鹿な男なら、必ず連絡をしてくると思います」
「そうですね……そのときは私の手を汚してでも……今は魔王を討伐したことを喜びましょう」
僕は二人の話を聞いて身体から力が抜け去った。そうして近くにあった花瓶を揺らしてしまう。「コトリ」と部屋の中で小さな音が鳴り、二人はその音に驚いて辺りを見回した。
「何か音がしましたよね」
「はい……私の耳にも聞こえました。ただ姫様の部屋には、魔法に対して防御結界が張られているので、侵入者が入ってきたとは考えにくいです。たぶんネズミの足音だと思いますが、一応魔法衛兵を呼びます」
「そうして下さるかしら」
王女は眉間にしわを寄せ、ナービスに命じた。
しばらくすると魔法衛兵がやってきて、部屋中を丹念に調べた。もちろん僕の隠密魔法が、衛兵たちに気が付かれることは全くなかった。彼らが退出する際、僕は部屋から逃げ出した。
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