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飛び込むかたち
しおりを挟む「いってぇ、何すんだよ」
突然僕の目の前に長方形が飛び込んできた。
「あんたがぼーっとしてるから先生に目つけられないように起こしてあげてんのよ!
感謝してよね!」
彼女は言った。ズキズキ痛む、額を押さえながら足元を見るとそれは英語の参考書だった。僕らの高校は大学へエスカレータ式の学校だ。もう高3の秋にもなるのに、その長方形はいまだに小1のランドセルみたいな光沢を放っている。
「ふっ」
思わず吹き出すと彼女は今度小さな円柱形をヘリコプターの羽のように回転させ、僕の額へ飛ばした。クルクルと回転したそれは意外にも、あっけなく直ぐに僕の足元に着地した。と同時に授業終了のチャイムが鳴った。彼女はまだ言いたいことがありそうだったが、さっきまでの悪態じみた表情はどこへ行ったのだろうか、他のクラスメイトとキラキラした笑顔を浮かべながら音楽室へ移動していった。
「何ぼーっとしてんだよ。次の授業遅れんぞ?」
そう話しかけてきたのは僕の唯一の友人まるえつである。本名は円山 悦哉。ここで僕がどんなイントネーションで彼を読んでいるかは問題にしないということにしよう。
「わりぃー。今ちょっと授業とかそういう気分じゃねんだわ。」
「授業の出欠を気分なんかで決められたら苦労しねーよ。ってか次、音楽だぞ?」
ハッとした。そうだ、今日は火曜日。1週間のうちにたった1回だけの音楽の日だ。忘れてた。
「ほら、チャイム鳴り出した。
急がないと怒られんぞ。」
僕らは急いで音楽室へ走った。
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