運命の番にはならない

S_U

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買い物ついでに姉に命令された事前予約特典付きのCDを受け取って帰ろうとした時だった。

ふと周りから甘い匂いが漂ってきた。すれ違った香水にしてはずっと良い匂いがすると思っていると段々と甘さをましていく香りで身体が絡め取られるように重くなっていった。

姉が付けている心地よい爽やかな匂いとは真逆な心地悪い甘ったれた匂い。

思考が鈍くなる感覚…火照るような身体…考えれば分かる事だ。自分は発情したのだと。自分はΩなのだから。

確か…Ω保護所がある。とりあえずそこに行こう…

ヨロヨロと身体を引きずるように保護所を目指す。幸いにも数十メートルの距離にあった。周りからジロジロと見られているのがわかる。フェロモンが漂っているのだろうか…

近くにαがいないこと、それだけを祈りながら早早足で進む。

はやく…!はやく入らないと

背後から甘い匂いが強くなってくるのがわかる。

匂いから逃げるために早く…早く

肌身離さず持っているようにと言われたカードキーを通す。

扉が開き切るのもまたずに中へ入る。

「はぁ…はぁ」

心臓がドクドクと速くなっているのがわかる。

けれどあの甘い匂いが遮断されたせいかもう焦りはない。

施設は外から一切見ることが出来ないように窓がない。

施設には在中する人はおらず、AIが施設を取り仕切っている。

壁にもたれかかって火照った身体を冷まそうとゆっくり深呼吸していると

『貴方の運命の番だと名乗る人物がいます。何か話されますか?』

AIが人口音声とは思えないほど人間らしい声で尋ねてくる。

Ω保護所にはΩしか入れないが外にはパートナーを心配して声かけが出来るようにとマイクがついている。

「…何も話すことはない。それより薬をくれ。」

『かしこまりました。薬をご用意しますので1号室の部屋にお入りください。』

薬を飲んで発情が引くのを待ちながらさっきの出来事を考える。

運命の番…出会う確率はそう高くないと聞いている。意図せずに惹かれ会ってしまう決められた運命。身体が本能が求めてしまう…

「俺が急に発情したからアイツはフェロモンに当てられたんだ…そうに決まってる。運命の番なわけない…」

もし、もしまた会ってしまったら…万が一運命の番だったら…

俺は運命の番に惑わされて生きるなんてまっぴらごめんだ




初めての発情から1ヶ月後、抑制剤が販売された、俺は抑制剤を服用し、βとして生きることを決めた。

運命の番に縛られるくらいなら一生1人で生きていく。そう決めたから。

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