捨てられた第三王子は最強です

烏の人

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不変

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 状態が巻き戻ったことによる一瞬の思考のラグ、その隙をついた完全な一撃だった。現に今、こうしてその拳は届いたのだ。そうして、その拳はアオイのその身体を吹き飛ばすに至る。土埃をあげ、数メートル後方まで飛んでいく。さすがにこの程度で死にはしないだろうが、少しやり過ぎたか?
 馬鹿げた発想だった。そのシルエットで驚愕する。

「いやぁ、今のは鋭かったね。奥の手、使ったんだ。」

 アオイはその足で立っていた。

「流石にガードしないとまずかったね、今のは…。」

 あの速度に咄嗟に対応でき、ガードだけで息切れもしていない。目の前に立っているそれがいかに化け物かよく解る。

「やっぱり、アオイは強いや…。」

 落胆したようにそう言った。

「ツカサは不変を封じ込めすぎてるだけだよ。」

 その言葉に、少し疑問を抱く。

「確かに、手の内は明かさない方がいい。その方がいざって時に相手の意表を突ける。でも、ツカサの不変は結構融通が聞くでしょ?」

「融通が聞くって言うのは…?」

「例えば魔法だけを無かったことにするとか。」

「確かに出来るけど、それがどうかしたの?」

「ツカサの不変って言うのは唯一無二の魔法。だから、その能力を誤認させることが出来る。それに、応用すれば瞬間移動みたいに使うことも出来るじゃん?」

「確かに、言われてみればそうだね。」

「皆が言ってた、有るものを伸ばしたほうがいいって言うのはこういうことだと私は思ってるけどね。」

 確かに、僕は今まで不変を毛嫌いしていた節はある。使えば勝ちという認識しかしていなかった。それ故に、不変の他の可能性を見限っていたのだろう。だからこそ、今回僕は防戦一方だった。だからこそ、ガードされるという認識がなかった。
 使えば勝ちだから。その認識はやめたほうがいいかもしれない。

「ありがとう、アオイ。色々教えてくれて。」

「まあ、師匠だからね?」

 そう言って朗らかに笑うアオイの姿が随分と印象に残った。僕の中に引っ掛かっていたものが1つとれたような気がした。

 さて、次の日である。唐突だが今の僕には目標がある。王位を取り戻すのはもちろんだが、それは最終目標だ。ではその道のりに必要なものは何か。実力と経歴である。ポッと出の森で育った野生児が王位につける訳はない。そう言うわけで、僕に必要なもの。経歴である。手っ取り早いのはディゼストにある王立の学園である。そこで上位成績を修めれば充分経歴の1つとしては申し分ないだろう。
 そう言うわけで、僕はハクネからは西洋式魔法、東洋式魔法について色々と教えてもらっている。

「―――――そう言うわけで西洋式の魔法は変換が基本、東洋式の魔法は生成が基本と言う違いがあるのよ。」

「根本的に別物って考えたほうがいいんですかね?」

「そんなことはないわよ。魔力回路が違うだけ。本質はいっしょ。」

「本質?」

「不可能を可能とさせる。まあ、簡単に説明するとこんな感じね。ここから先はだいぶ専門的だから省くわね。それから―――――。」

 ハクネは獣人でありながら街で魔法の勉強をしていたことがある研究者だ。幼い頃からハクネには色々なことを教わってきた。基本的な所作や他の言語、数学なんかまで。最初に、僕の魔力回路が東洋式であることに気がついたのも彼女である。本当に不思議な人だ。

「―――――そう言うわけで獣人のルーツは東洋にあるのよ。」

「な、なるほど。」

「まあ、その辺りの話しは正直民族研究でもしない限りあんまり関わってこないからね。」

「ハクネって本当に物知りですよね。」

「まあ、これでも色々見てきたもんで。」

 魔法の才にも秀でたハクネ。あまりにも非の打ち所がないかに思える。

「そう言えばツカサ、昨日アオイちゃんと手合わせしてたよね?」

「見てたんですか?」

「見てたって言うか…あんな激しい戦闘ができるのアオイちゃんとツカサくらいなもんだから。」

 なんか納得した。

「話を戻すけど、やっぱり属性魔法が使えないの気にしてたりする?」

「…正直、ちょっと気にしてます。」

「うーん、それについてちょっと考えたのよ。」

「考えたって言うのは?」

「まあ、正直血筋的にもそんなことだろうとは思うんだけど、あまりにも現実味がなくてね。」

「現実味がない…?」

 少し間を空けて、ハクネが口を開いた。

「結論から述べると、今のままなら所謂属性を扱えるようになることは無いわ。」

 淡々とそう告げるのだった。
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