オレのモノになればいいのに。

RuuA

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04.いますぐ答えて

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::依織side::

スマホの電源ボタンを押す。

画面に表示されるのは変わらず『充電してください』と訴えるように点滅するバッテリーマーク。

「はあ……」

最悪だ。

天を仰ぐ。

天仰いでもあるのは電車の天井。

今日は葵唯とのデート当日。

朝から普段あまりつけないワックスで髪を整え、自分の中ではオシャレだと思う服を着た。

葵唯とデート……。

そう考えただけで顔が熱くなるのがわかる。

なのに、昨日充電器に繋ぐのを忘れたスマホは充電切れ。

葵唯との連絡手段を絶たれた。

ま、あと少しでつくし、大丈夫か……。

そう思ってシートにもたれかけたとき───

─キイイィィィィーーー!!!!

「きゃー!!」

!!

ガンッ。

頭に鈍い感触が走る。

ぅぅぅ……───

* * *

「ん……」

目が覚めた時にはベッドに横たわっていた。

ここ……。

目を開けると白い天井がある。

ゆっくり顔を動かし、あたりを見渡すと清潔感のある白が基調の部屋みたいだ。

この感じからして病院だよな。

「っ!!」

重い体を起こすと頭に痛みが走る。

反射的に俺は頭を抑えた。

なんだ……?

なんで俺病院に……。

俺、電車に乗ってたはずじゃ……。

─ガラガラ。

病室のドアが開く音と共にカーテンの横から顔を出した人。

「三神、起きてたのか」

なんでハゲが……。

いくつも疑問が浮かぶ。

ハゲは見舞いといって机にフルーツの入ったカゴを置き、ベッドの隣のイスにドカッと座った。

「いやあ、ビックリしたよ。ケガもないみたいでよかったなあ」

「俺、何でここに」

「覚えてないのか? 子供が遊んで踏み切り越えて線路に出たらしくてな、お前が乗ってた電車が急ブレーキかけたみたいなんだ」

あのキーってゆう耳に障る音は急ブレーキの音か。

恐らく、俺は急ブレーキの反動で手すりに頭をぶつけたんだと思う。

「学生証を見た病院から学校に電話があってな、慌てて飛んできたよ」

なるほど……。

ってか俺……。

「三神、お前どっかに行ってる途中だったのか?」

あっ……───

俺は急いで周りを見渡す。

時計、時計……。

病室に時計は見当たらない。

あ、ケータイ!

ベッドのそばのチェストにスマホが置いてあった。

スマホは無事だったようだ。

俺は慌ててスマホを手に取り、画面を開く。

しかし、画面には充電マーク。

そーいや、充電なかったんだった!

「は……いや、先生! いま何時ですか!?」

いつもの癖で危うくハゲと言いかけた。

「いま? えーっと、6時だな」

ハゲは腕時計を見て時刻を言った。

6時!?

嘘だろ!?

一気に青ざめた俺は急いでベッドを降りた。

「おい、三神! まだ安静に───」

そんなハゲの言葉を背中で聞きながら病室を飛び出た。

─ズキン。

うっ。

まだ頭に残る鈍い痛み。

ズキズキと一定の感覚で痛むけど、そんなの構ってられない。

ほんと、ケータイないと不便。

走る俺の視界に緑色のものが入った。

公衆電話だ。

一瞬止まりかけたけどまた走り出した。

電話番号交換しとくんだった!!

思えばSNSでしか繋がってないんだな。

くそー!

サッカーで鍛えた体力をフルに利用して駅まで走る。

もういないかもしれない。

いや、いないと思う。

だけど、もしも、まだ葵唯が待っててくれてたなら……。

そう考えると、葵唯の顔が浮かんでスピードが上がっていく。

* * *

「はあ……はあ……」

あの病院から遠すぎんだろ。

公園の入口で息を整える。

葵唯……。

入口から公園の中央にある時計のとこまで行ってみた。

ぐるっと一周見渡しても葵唯の姿はない……。

「やっぱ、遅かったか……」

そりゃ、帰るよな……。

なにも連絡せずに待たせたんだから。

嫌われたよな……。

髪をかきあげてベンチに座った。

「はあ……」

今になってやっと、頭の痛みがひしひしと感じる。

公園の時計は6時30分をさしていた。










::悠雅side::

─シャー……。

シャワーの音がここまで聞こえてくる。

家に帰る途中、雨の中トボトボ歩く女を見つけた。

こんな雨の中であんなチマチマ歩いてたら風邪ひくし、第一、ソイツは建物で雨宿りをしようともしてなかった。

見かねた俺はソイツをココの軒下に連れてきた。

ソイツはずぶ濡れで泣いてた葵唯で……。

葵唯も俺に驚いたようだった。

クシャミしてたから温まろうと思ってとりあえずチェックインしたものの……。

「へくしゅん!」

風邪引くの、コッチのほうだわ。

葵唯を先にシャワーに行かせ、残った俺は全部脱いでバスタオル1枚。

服濡れたし、最悪だろ。

乾燥機ないからエアコンの前で乾かしてるけど。

「はあ……」

ひっさびさのラブホ。

多分。

いや、絶対葵唯は初めてだ。

ゴムって言葉にも照れるんだから処女だろ、絶対。

─ガチャ。

「あ、あがったよ……って!」

─バタン。



開けたと思ったらすぐ閉めた葵唯。

わけわかんねー。

俺はズカズカとドアに近づき、開けた。

「わわっ!」

俺を見るなりほんのり頬をピンク色にして照れる葵唯。

なぜに?

「な、な、な、なんで服着てないのー!!!」

「タオル着てんだろ。大体、コッチは葵唯が風呂上がるの寒い思いして待ってたんですけど」

さっさと風呂入んねーとマジでシャレになんないんだけど。

俺は脱衣所に入り、タオルを外した。

「きゃああ!!」

葵唯が後ろでギャーギャー喚く。

ぜってー処女じゃん。

「見たくないなら早くでろよ。それとも一緒に入る?」

顔だけ振り返った俺の質問に照れながら怒った葵唯。

「だ、誰がアンタなんかの裸見たいのよ!! バカ!!」

─バタン!!

うー怖い。

気強すぎだろ。

気の強さが表に出て、行動に出てるし。

* * *

─ガチャ。

「はあ、生き返った」

冷えてた体を風呂であっためて、逆に少し暑いくらいだ。

頭をタオルで拭きながらふと視線をあげた。

「まじかよ……」

俺の視線の先にはタオル1枚のままベッドでまるまって寝てる葵唯。

スキありすぎ。

襲われても文句言えねーぞ。

タオルを首にかけてエアコンの前に掛けてた服に近づく。

なんだこれ?

俺が干した時には無かった服。

葵唯の服か。

これだけか、乾いてんの。

俺の服を一つ一つ触って乾き具合を確かめた。

一番かわいて欲しかったから、エアコンの真ん前に掛けてた黒のボクサーパンツ。

とりあえず、これだけ履いとくか。

タオルだけだとスースーして気持ち悪い。

そう思ってパンツを履いた時──

……これ……。

今まで隠れて分かんなかった。

ふと、視線を向けた先には女物の下着。

葵唯、こんな下着きんのかよ……。

白のヒモブラ、ヒモパン。

処女のくせに意外とエロい。

だけど、白ってゆーのが葵唯っぽいって思った。

「ん……」

急に声がして後ろのベッドを振り返る。

葵唯はベッドの上で目を擦りながらゆっくり起き上がっていた。

「あれ……私……」

そう言って、周りを見渡す葵唯。

もちろん、コッチも見て、目をぱちくりぱちくり。



なんだ?

葵唯の目はみるみる大きく見開かれ、顔は徐々に赤くなっていく。

「あ……あ……!」

「あ?」

そう声に出し、葵唯は息つく間もない速さでここまで一直線。

あまりの勢いに、少し圧倒。

すげー速ぇ。

来たかと思うと、バッと下着をとり、胸に抱きしめた。

あー、そーゆーこと。

「見てないけど」

「見たでしょ、絶対! 」

「見たくなくても視界に入るんだっつーの」

「なっ!」

ムッと口をつぐんで頬を膨らませた葵唯。

これは計算?

頬を膨らませた顔は、可愛いーってゆあれるのを求めてるのか素なのか。

……素だよな、葵唯だし。

「葵唯もそんなん着んだな」

「こ、これは……! しょ……」

語尾をもごもごして言う葵唯。

「ん? なんて言ってるか聞こえないんだけど」

「しょ、勝負……し、たぎ……」

また語尾をすぼめ、恥ずかしそうに俯いた。

勝負下着って、今日、デートの日だったのかよ。

ってか、葵唯彼氏いるんじゃん。

襲わなくてよかった。

バレたら修羅場だ。

……この状況もやばいけどな。

「ふーん。葵唯も彼氏いるんだな」

「へ?」

今までの葵唯とは打って変わり、目をまん丸にして間の抜けた声を出した。

なんで、驚いてんだよ。

「私彼氏いないよ?」

「はあ? 勝負下着履いてんだからデートだったんだろ?」

「デートだけど、彼氏じゃなくて依織くんだよ」

三神か……。

やっぱあいつ葵唯のこと狙ってるな。

この前も俺が葵唯と話してただけで怒ってたし。

彼氏じゃねーのに、独占欲強すぎんだろ。

……おもしれー。

俺は葵唯の手首を掴んだ。

「!? ちょ、ちょっと!!」

そのままベッドまで歩く。

─ストン。

葵唯は俺が押した勢いでベッドの縁に座った。

困ったような怒ったような驚いたような葵唯の複雑な顔。

「なにすんの! ば───んっ……」

なにすんの、バカ!

葵唯はきっとそう言おうとした。

その葵唯の口を塞いだ───

薄く目を開けると、葵唯は驚いた顔をしたあとギュッと目をつぶった。

嫌がんねーんだ。

満更でもないんだな。

「んっ……ふぁ……」

キスの途中に漏れる葵唯の声。

普段の喋り声とちがう甘い声。

そっと唇を離し、目を開けると───

「? ……お前何やってんの?」

「んはあーー!!! はあ、はあ、はあ……」

どうやら葵唯は息を止めてたらしい。

雰囲気ぶち壊すわぁ……。

意味わかんねー。

………ってか。

「初めてじゃないよな?」

まさかだよな?

高2で初キスとか。

「久々にしたから、どんなのか忘れてて気がついたら息止めてて……」

まだ息を切らして説明する葵唯。

あぶねー。

ファーストキスだったら、俺、すげー罪悪感。

俺は息を整えた葵唯を横抱きにしてベッドの真ん中へ。

「え!? 何!?」

葵唯を寝かせ、葵唯の顔の両側に肘をついて覆いかぶさる。

顔を真っ赤にして驚いたまんまの葵唯。

こんなに照れまくるやつ初めて。

他の女は照れたりなんかしない。

慣れてるやつばっかだったからだろうな。

「嫌なら本気で拒めよ」

「んっ……」

葵唯の唇にキスを落とす。

そう言っても葵唯は本気で引き離そうとしない。

ただ、小さい手で俺の腕を掴むだけ。

耐えるようにギュッと力を加える葵唯。

葵唯の力じゃ痛くも痒くもない。

だけど、その小さい手から緊張がひしひしと伝わってくる。

緊張されるのなんか初めてで、どう接したらいいかなんてわかんねー。

優しくなんかできない───

「オレとエッチしよ」

そっと唇を離し、俺は葵唯にそう言った。

「へ……」

「いますぐ答えて」

潤んだ瞳が俺の罪悪感を掻き立てる。

こんな純粋なやつ扱ったことない。

葵唯は驚いたあと目を伏せ、少し迷ってるようだった。

そりゃそうだよな。

付き合ってもないオトコから誘われたらフツーはこの反応なんだけどな。

オレ、どんだけフツーじゃない女、相手にしてきたんだよ。

逆にこの反応が新鮮だわ。

「うん……」

は……?

いま、なんて……。

ビックリして葵唯を見ると、頬を赤らめて潤んだ目を俺に向けていた。

不安そうに揺らぐとろんとした瞳。

まじかよ……。

自分から誘っておいて、Yesの答えに驚きを隠せない。

だけど───

「悠雅くん」

俺の名前を呼ぶ葵唯。

葵唯の唇をまた塞ぐ。

さっきより深く。

さっきより甘く。

初めて悠雅って呼んだ葵唯。

「んっ」

俺が愛撫する度に喘ぐ葵唯。

だけど……

このセックスに愛なんかなくて──

付き合ってないやつ同士がただ欲を満たすためだけの行為。

相手が誰であっても変わらない。

好きなやつなんかいない。

セフレは全員、ただのトモダチ。

誰にも恋心なんてない。

タオル1枚で……

濡れた髪で……

火照った体と顔だったから……

葵唯がセフレって感じでもないのに、抱いたんだと思う。

三神のお気に入りの葵唯をオレのものにしようっていうのも一理あるかもしれない。

葵唯だって、三神のことが好きなんだと思う。

でも、俺に気を許すところ、好きで好きでたまらないわけでもないらしい。

ま、関係ないけど。










::葵唯side::

「葵唯、ほんとごめん!!」

教室が一瞬静まり返った。

「い、依織くん……! そんなに謝らないで!」

「でも……」

また騒がしくなった教室。

あの怒涛の土曜日の2日後の今日。

週が明けて月曜日。

あの日の夜、SNSで待ち合わせ時間に間に合わなかった理由を話してくれた依織くん。

そのメッセージを見たのは次の日の朝だけど……。

何度も謝ってくれて、今日だって、会って初めての言葉が、ごめん!だったし。

ほんとに誠意が伝わってくる。

それなのに……。

「大丈夫だよ! ……あのあと、すぐ帰ったし!」

私は嘘をついてる。

依織くんは嘘偽りなくすべて話してくれたのに。

言いにくいってゆうのもある。

悠雅くんとのこと。

2人はすごく険悪ムードっぽいから。

こないだの2人の様子を見て、言えるはずがない。

* * *

「どーだったの? 三神とのデートは」

昼休み、教室で一息つきながら凛は尋ねた。

「それがさ、してないんだよねー、デート」

「はあ? すっぽかしたの?」

凛は手に持ってる飲み終わった野菜ジュースのパックをギュッと握った。

「いや、された方……」

「へー。あの三神がボイコットねー」

驚いたようなイラついたような凛。

そりゃそーだよね。

凛がデートのためにコーディネートしてくれたんだし……。

「でも、乗ってた電車が事故起こしかけて頭打って病院に行ってたみたいだから、悪意があったわけじゃないし……」

「そっか……。で、そのあとちゃんと日が落ちる前に帰った?」

「……うん」

「よし、なら文句ない」

そう言って凛は席を立ち、ジュースパックを捨てに行った。

言えない。

凛でさえも言えない……。

反応が怖い。

彼氏でもない人と……しかもクラスメートとエッチしただなんて……。

言ったところで私はスッキリしても、凛は相当気まずいよね?

クラスメートの顔見る度に変なこと思い出すんだし。

それに、あれは一度きり。

次の日の朝も平然と精算して帰っていった。

むしろ、あれは夢じゃなかったのかな、とさえ思う。

夢だと信じたい。

思い出す度に火照る顔。

あんな甘くて深いキスしたことない……。

思い出すだけなのにドキドキが止まらないって重症。

「いやーやっぱ悠雅には叶わねーな!」

「あんなんよゆー」

“悠雅”

彼の名前を聞くと、反射的に向いてしまう。

視線の先には友達とグラウンドから帰ってきた悠雅くん。

昼休みは友達と制服のままサッカーをしてるみたい。

この間、渡り廊下を歩いてるとグラウンドでボールを追いかける彼を見かけた。

少年みたいに笑顔でボールをける彼はカッコよくて爽やかだった。

いつものイジワルっぷりとは大違い。

そんなことを考えながら悠雅くんを見つめてると───

─バチッ。

目が合った。

その瞬間に反らす。

目が合うだけで心臓が痛いくらいに締めつけられる……。

なんなのよ、もー!!

私……こんな気持ち……。

「葵唯?」

「は、はひ!! ──痛っ!」

驚きのあまり勢い良すぎて舌を噛む始末。

凛は首をかしげて不思議そうに私を見る。

「またおかしくない?」

悠雅くんのこと意識しすぎた4月当初から平然を装ってきたのに、また再発してしまった。

「大丈夫だよ!」

苦笑いでどーにか心臓を抑え込む。

じゃないと、目の前の凛まで鼓動が聞こえそうで。

凛の後ろに視線をやると悠雅くんが机に座って突っ伏してた。

その姿だけで、なんだか胸がキュンってなって……。

私、ヘンだ───
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