4 / 49
始まり
世界の変革《3》
しおりを挟む
「あー……」
――どこだ、ここは。
まず、以前のギルドへの入口である出入り扉は、洞窟の奥に設置しておいた。
だが、俺達がギルド内部から外へと出た瞬間感じたのは、暖かな光。
陽光である。
そして、暗いところから明るいところに出たため、眩む目を一度瞑ってから、再度開いた俺の視界に映ったのは――草原。
見渡す限り、青々とした緑がどこまでも続き、風に揺られて揺れている。
ここが、周辺一帯が森であったナグライトと全く違う場所であることは、一目瞭然であった。
後ろを振り返ると、ポツンと草原の中心に、俺達のギルドへ繋がる扉が立っている。
扉だけが、だ。
目立つことこの上無しだろう。
「……周辺に敵性反応無し。良い景色、です」
「……あぁ」
仮面を被っているので表情はほとんどわからないのだが、少しだけ機嫌が良さそうにそう言う隣の少女に、俺は曖昧な返事を返す。
……俺は、こんな地形を知らない。
こんな、遠くまで緑が続き、遠くに山脈や青空の見えるマップを、俺は知らない。
何よりわかりやすいのは――見上げた青空には、太陽が二つ存在していることか。
あのゲームの中で、太陽は一つだけだ。
つまり、何が言いたいのかと言うと、ここはアルテラの世界ですらない、ということである。
……何か、決定的におかしなことが起こっているのはわかっていたが……もはや、アルテラの世界ですらないとはな。
俺が犯罪者プレイヤーとして指名手配されている可能性は無くなっただろうが……その場合であっても、依然として危険性に変わりはない。
一応これでも、俺はあのゲームの中ではトッププレイヤーの一人として数えられていた身だ。
故に、それはもう膨大な量の敵や地形などの攻略情報が脳内にインプットされており、ここが仮にアルテラの世界であれば、最高難易度鬼畜ダンジョンの最奥に住まうボスすらポーション類も無しに屠ってみせるが……ここが全く知らない未知の場所であると、その知識が俄然通用しなくなってしまう。
言わば、何にもわからず、チュートリアルもなく、初めてやる知らないゲームをやれと言われているようなものだ。
「こりゃあ……どうしたもんかな……」
「これでは、近くの街にお買い物も行けませんね。どういたしますか?」
少しずれた感想を返して来るセイハだが……いや、彼女にとっては、これぐらい大した出来事ではないのだろう。
実際、ギルドホーム自体は、俺達が拠点とする街を移すごとに移動させていた。
アップデートのごとに、最前線となる街は変わって行くからな。
恐らくは今回に関しても、その程度のことだと彼女は思っているのだろう。
「……そうだな。とりあえず、人里を探すところから始めるべきか。セイハ、近くにそれらしい反応は無いんだな?」
「ございません。探索に出掛け――マスター、敵性反応が一つ出現しました」
話している途中で、彼女はスッとどこからともなくダガーを取り出し、一つの方向へと顔を向ける。
その彼女に釣られ、俺もまた同じ方向に視線を向けると――視界に映ったのは、少し離れた位置にいる、一匹のモンスター。
猪にマンモスを掛け合わせた生物、という表現が一番近いか。
かなり図体がデカく、口元からは凶悪な鋭い牙が幾本か生えており、そしてすでにこちらを敵として捉えているようで、鼻息荒く俺達のことを見ている。
「初めて見る魔物です。新種でしょうか」
「……この距離で気が付くか。相変わらず、お前の索敵能力は凄まじいな」
「マスターの薫陶のおかげです」
……まあ、彼女を育てたのは確かに俺なんだけどさ。
レベル上げとスキル振りをね。
というか、そうか。
やはり、彼女のこの広大な索敵範囲を見る限り、俺達の能力はアルテラ準拠である可能性が高いか。
「……試す必要があるな。セイハ、少し確認したい。お前は手を出すな」
「ハ、了解いたしました」
構えたダガーを下ろすセイハを横目に、俺は自身の腰のベルトから小太刀、幻刀『妖華』を片手で抜き放ち、もう片方の手でハンドガン、『銀桜』をズボンのホルスターから取り出す。
あの猪は、図体はデカいようだが、魔力をほとんど感じない。
恐らく、見た目通り物理攻撃を得意とするのだろう。
Mobとの対戦時、相手をするのに一番楽な手合いだ。
初見の敵だが――やれるか。
「グルルルァァァッッ!!」
と、俺が武器の準備をしていると、一足先に動き出した猪が、その筋肉の塊みたいな巨体を震わせ、吠え声を上げながら大地を揺らし、こちらに迫り来る。
「さて、それじゃあ――この身体の性能でも、試してみますか」
――まずは、脳天に二発。
無造作に構えた銀桜の引き金を引き、内部で爆発を生じさせ、装填された銃弾を連続で解き放つ。
ハンドガンとは思えない、強烈な反動が腕に伝わるのとほぼ同時に、銃声。
放たれた銃弾は、狙い違わず飛んで行き――猪マンモスの脳天に、突き刺さる。
猪マンモスはガクンと頭部を仰け反らせ、デカイ風穴を開けた頭部から血を垂れ流すが……しかし、それでもなお、止まることはなくそのままこちらへと突っ込んで来る。
まあ、想定内だ。
あの大きさが相手だと、例え脳みそにクリーンヒットしても、簡単には倒れないだろう。
迫る、猪マンモスの巨体。
俺は、セイハを巻き込まないようにただその場から数歩だけ前に出ると――交差の一瞬、少しだけ身を捻って突進を躱しながら、その首筋に、刃を一閃。
血飛沫が舞い、肉を断つ感触が腕を伝う。
――幻刀『妖華』は、図体のデカい猪マンモスの首回りより圧倒的に刀身が短いのにもかかわらず、その首を確かに両断し、命を絶つ。
ドシン、と地響きが鳴り、突進途中で首を無くした猪マンモスが地面を大きく削りながら倒れ――やがて、動かなくなった。
「お見事です、マスター」
セイハの賞賛に、俺は何も言えずに、ただ妖華の刀身にこびり付いた血糊をビュッと払って落とす。
調子は……悪くない。
というか、メッチャ良い。
銀桜の狙いの精度も良く、妖華の刀身の走りも良く、ゲームの頃以上に身体が俺の命令通りに動き、スムーズに攻撃が繰り出せる。
……アルテラ・オンラインが、圧倒的なまでにリアルなゲームであったことは確かだ。
確かなのだが、しかし、所詮はゲームであった。
「こうしたい」という人間の意思を完全にトレースすることは叶わず、微妙なラグがそこにはどうしても存在した。
ゲームの中では、現実には出来ないような動きも確可能ではあったが、しかしその人外の動きをしようとする身体に対する命令と、実際に身体が動くまでにほんの少しだけ、現実にはない時間差が生じていた。
だが、それに比べると、今のこの滑らかな身体の動きには、そんなタイムラグなど全く存在していない。
脳内が命令を発し、そしてその通りに身体が動き、まるでゲーム染みた動きでありながらも、敵を倒すことが出来た。
そのことから導き出せる答えは――この身体は、アルテラ準拠でありながら、歴とした現実の俺の身体なのだ。
「……倒したMobも、血痕も消えない……もう誤魔化せないな」
……やはりまだ頭のどこかで、これが夢やゲームの中である可能性を考えてしまっていたが、今の戦闘でもう、誤魔化しの余地が無い程に確信した。
半ばわかっていたことだが、ここは、現実。
それも、俺が全く知らない、未知の世界である。
「…………」
――今後どうするべきか、考えなければならないだろう。
元の世界で俺は、どうなっているのか。
死んでいるのか、行方不明の失踪者となっているのか、はたまた「俺」という存在自体が消失しているのか。
この世界は何なのか。
いわゆる異世界か、あの世か、それともやっぱり俺の妄想の中なのか。
誰か、地球出身の俺のような者はいるのか。逆に、世界に地球出身は俺しかいないのか。
この世界でどう生き、何を為すのか。
元の世界への帰還の糸口を探して生きるのか、この世界に骨を埋めるつもりで生きるのか。
そして――何故、俺はこんなところに、来てしまったのか。
偶然だったのか、必然だったのか。
神様でもいて、どこかの勇者サマらしく、世界を救えとでも言われるのか。
何もわからず、何が出来るのかもわからない。
そうである以上、今の俺は、全てにおいて自分で行動の指針を決めなければならない。
「……? マスター、楽しそうですね」
不思議そうに首を傾げてそう言うセイハに、俺はニヤリと笑みを浮かべる。
「ハハ、わかるか?」
――そう。
この状況となって、まず最初に俺が感じたのは、恐怖でも不安でもなく――未知に対する、限りない高揚だった。
どこかのマンガの主人公染みた、子供っぽい感情だと思うが……確かなその想いが、俺の胸の内を満たしたのだ。
やはり俺は、犯罪者プレイを心から楽しんでしまうぐらい、どこか常人とは頭の構造が違うのかもしれない。
だが、まあ……そんなことは、どうでもいい。
人間とは、元来未知を好む生物だ。
未知を好むが故に、前世においても大航海時代が訪れ、果てしない大空へと飛び立つ野望を抱き、新たな大陸への夢を抱いて世界中へと進出して行った。
この、全く何もわからない、未知の世界にやって来てしまった俺が、この世界にやって来たことに対して大いなる魅力を感じてしまっても、まあ、人間として当然の反応であると言えるんじゃないか?
何より――。
チラリと、隣の少女を見る。
俺が創り上げ、娘のように愛して育て、NPCとして比類無き強さを得た、この少女。
――何より俺は、この世界において、一人ではない。
俺が生み出し、そして仲間が生み出し、長い時間を掛けて育てた、ギルドとその住人達がいる。
ならば、やれる。
コイツらと一緒であれば、どんな困難であっても、突破出来るはずだ。
「――よし」
――決めた。
今後、何をするにしても、俺はこれから、この世界を本気で生きて行こう。
俺が、俺として生きて行くために、この世界を思う存分に満喫して、好きに生きて行くとしよう。
何となく、それが、俺がこの世界においての、為すべきことだと思った。
「――セイハ。俺はこれから、今までとは全く違う、新たな世界に飛び込もうと思う。お前も、付いて来るか?」
「……はい。この身は全て、我が主のもの、あなた様の、思う通りに」
こちらに向かって頭を下げ、確かな忠誠を示す少女に、俺はニィと頬を吊り上げ、周囲に広がる広大な世界へと向かって、視線を向けたのだった――。
――どこだ、ここは。
まず、以前のギルドへの入口である出入り扉は、洞窟の奥に設置しておいた。
だが、俺達がギルド内部から外へと出た瞬間感じたのは、暖かな光。
陽光である。
そして、暗いところから明るいところに出たため、眩む目を一度瞑ってから、再度開いた俺の視界に映ったのは――草原。
見渡す限り、青々とした緑がどこまでも続き、風に揺られて揺れている。
ここが、周辺一帯が森であったナグライトと全く違う場所であることは、一目瞭然であった。
後ろを振り返ると、ポツンと草原の中心に、俺達のギルドへ繋がる扉が立っている。
扉だけが、だ。
目立つことこの上無しだろう。
「……周辺に敵性反応無し。良い景色、です」
「……あぁ」
仮面を被っているので表情はほとんどわからないのだが、少しだけ機嫌が良さそうにそう言う隣の少女に、俺は曖昧な返事を返す。
……俺は、こんな地形を知らない。
こんな、遠くまで緑が続き、遠くに山脈や青空の見えるマップを、俺は知らない。
何よりわかりやすいのは――見上げた青空には、太陽が二つ存在していることか。
あのゲームの中で、太陽は一つだけだ。
つまり、何が言いたいのかと言うと、ここはアルテラの世界ですらない、ということである。
……何か、決定的におかしなことが起こっているのはわかっていたが……もはや、アルテラの世界ですらないとはな。
俺が犯罪者プレイヤーとして指名手配されている可能性は無くなっただろうが……その場合であっても、依然として危険性に変わりはない。
一応これでも、俺はあのゲームの中ではトッププレイヤーの一人として数えられていた身だ。
故に、それはもう膨大な量の敵や地形などの攻略情報が脳内にインプットされており、ここが仮にアルテラの世界であれば、最高難易度鬼畜ダンジョンの最奥に住まうボスすらポーション類も無しに屠ってみせるが……ここが全く知らない未知の場所であると、その知識が俄然通用しなくなってしまう。
言わば、何にもわからず、チュートリアルもなく、初めてやる知らないゲームをやれと言われているようなものだ。
「こりゃあ……どうしたもんかな……」
「これでは、近くの街にお買い物も行けませんね。どういたしますか?」
少しずれた感想を返して来るセイハだが……いや、彼女にとっては、これぐらい大した出来事ではないのだろう。
実際、ギルドホーム自体は、俺達が拠点とする街を移すごとに移動させていた。
アップデートのごとに、最前線となる街は変わって行くからな。
恐らくは今回に関しても、その程度のことだと彼女は思っているのだろう。
「……そうだな。とりあえず、人里を探すところから始めるべきか。セイハ、近くにそれらしい反応は無いんだな?」
「ございません。探索に出掛け――マスター、敵性反応が一つ出現しました」
話している途中で、彼女はスッとどこからともなくダガーを取り出し、一つの方向へと顔を向ける。
その彼女に釣られ、俺もまた同じ方向に視線を向けると――視界に映ったのは、少し離れた位置にいる、一匹のモンスター。
猪にマンモスを掛け合わせた生物、という表現が一番近いか。
かなり図体がデカく、口元からは凶悪な鋭い牙が幾本か生えており、そしてすでにこちらを敵として捉えているようで、鼻息荒く俺達のことを見ている。
「初めて見る魔物です。新種でしょうか」
「……この距離で気が付くか。相変わらず、お前の索敵能力は凄まじいな」
「マスターの薫陶のおかげです」
……まあ、彼女を育てたのは確かに俺なんだけどさ。
レベル上げとスキル振りをね。
というか、そうか。
やはり、彼女のこの広大な索敵範囲を見る限り、俺達の能力はアルテラ準拠である可能性が高いか。
「……試す必要があるな。セイハ、少し確認したい。お前は手を出すな」
「ハ、了解いたしました」
構えたダガーを下ろすセイハを横目に、俺は自身の腰のベルトから小太刀、幻刀『妖華』を片手で抜き放ち、もう片方の手でハンドガン、『銀桜』をズボンのホルスターから取り出す。
あの猪は、図体はデカいようだが、魔力をほとんど感じない。
恐らく、見た目通り物理攻撃を得意とするのだろう。
Mobとの対戦時、相手をするのに一番楽な手合いだ。
初見の敵だが――やれるか。
「グルルルァァァッッ!!」
と、俺が武器の準備をしていると、一足先に動き出した猪が、その筋肉の塊みたいな巨体を震わせ、吠え声を上げながら大地を揺らし、こちらに迫り来る。
「さて、それじゃあ――この身体の性能でも、試してみますか」
――まずは、脳天に二発。
無造作に構えた銀桜の引き金を引き、内部で爆発を生じさせ、装填された銃弾を連続で解き放つ。
ハンドガンとは思えない、強烈な反動が腕に伝わるのとほぼ同時に、銃声。
放たれた銃弾は、狙い違わず飛んで行き――猪マンモスの脳天に、突き刺さる。
猪マンモスはガクンと頭部を仰け反らせ、デカイ風穴を開けた頭部から血を垂れ流すが……しかし、それでもなお、止まることはなくそのままこちらへと突っ込んで来る。
まあ、想定内だ。
あの大きさが相手だと、例え脳みそにクリーンヒットしても、簡単には倒れないだろう。
迫る、猪マンモスの巨体。
俺は、セイハを巻き込まないようにただその場から数歩だけ前に出ると――交差の一瞬、少しだけ身を捻って突進を躱しながら、その首筋に、刃を一閃。
血飛沫が舞い、肉を断つ感触が腕を伝う。
――幻刀『妖華』は、図体のデカい猪マンモスの首回りより圧倒的に刀身が短いのにもかかわらず、その首を確かに両断し、命を絶つ。
ドシン、と地響きが鳴り、突進途中で首を無くした猪マンモスが地面を大きく削りながら倒れ――やがて、動かなくなった。
「お見事です、マスター」
セイハの賞賛に、俺は何も言えずに、ただ妖華の刀身にこびり付いた血糊をビュッと払って落とす。
調子は……悪くない。
というか、メッチャ良い。
銀桜の狙いの精度も良く、妖華の刀身の走りも良く、ゲームの頃以上に身体が俺の命令通りに動き、スムーズに攻撃が繰り出せる。
……アルテラ・オンラインが、圧倒的なまでにリアルなゲームであったことは確かだ。
確かなのだが、しかし、所詮はゲームであった。
「こうしたい」という人間の意思を完全にトレースすることは叶わず、微妙なラグがそこにはどうしても存在した。
ゲームの中では、現実には出来ないような動きも確可能ではあったが、しかしその人外の動きをしようとする身体に対する命令と、実際に身体が動くまでにほんの少しだけ、現実にはない時間差が生じていた。
だが、それに比べると、今のこの滑らかな身体の動きには、そんなタイムラグなど全く存在していない。
脳内が命令を発し、そしてその通りに身体が動き、まるでゲーム染みた動きでありながらも、敵を倒すことが出来た。
そのことから導き出せる答えは――この身体は、アルテラ準拠でありながら、歴とした現実の俺の身体なのだ。
「……倒したMobも、血痕も消えない……もう誤魔化せないな」
……やはりまだ頭のどこかで、これが夢やゲームの中である可能性を考えてしまっていたが、今の戦闘でもう、誤魔化しの余地が無い程に確信した。
半ばわかっていたことだが、ここは、現実。
それも、俺が全く知らない、未知の世界である。
「…………」
――今後どうするべきか、考えなければならないだろう。
元の世界で俺は、どうなっているのか。
死んでいるのか、行方不明の失踪者となっているのか、はたまた「俺」という存在自体が消失しているのか。
この世界は何なのか。
いわゆる異世界か、あの世か、それともやっぱり俺の妄想の中なのか。
誰か、地球出身の俺のような者はいるのか。逆に、世界に地球出身は俺しかいないのか。
この世界でどう生き、何を為すのか。
元の世界への帰還の糸口を探して生きるのか、この世界に骨を埋めるつもりで生きるのか。
そして――何故、俺はこんなところに、来てしまったのか。
偶然だったのか、必然だったのか。
神様でもいて、どこかの勇者サマらしく、世界を救えとでも言われるのか。
何もわからず、何が出来るのかもわからない。
そうである以上、今の俺は、全てにおいて自分で行動の指針を決めなければならない。
「……? マスター、楽しそうですね」
不思議そうに首を傾げてそう言うセイハに、俺はニヤリと笑みを浮かべる。
「ハハ、わかるか?」
――そう。
この状況となって、まず最初に俺が感じたのは、恐怖でも不安でもなく――未知に対する、限りない高揚だった。
どこかのマンガの主人公染みた、子供っぽい感情だと思うが……確かなその想いが、俺の胸の内を満たしたのだ。
やはり俺は、犯罪者プレイを心から楽しんでしまうぐらい、どこか常人とは頭の構造が違うのかもしれない。
だが、まあ……そんなことは、どうでもいい。
人間とは、元来未知を好む生物だ。
未知を好むが故に、前世においても大航海時代が訪れ、果てしない大空へと飛び立つ野望を抱き、新たな大陸への夢を抱いて世界中へと進出して行った。
この、全く何もわからない、未知の世界にやって来てしまった俺が、この世界にやって来たことに対して大いなる魅力を感じてしまっても、まあ、人間として当然の反応であると言えるんじゃないか?
何より――。
チラリと、隣の少女を見る。
俺が創り上げ、娘のように愛して育て、NPCとして比類無き強さを得た、この少女。
――何より俺は、この世界において、一人ではない。
俺が生み出し、そして仲間が生み出し、長い時間を掛けて育てた、ギルドとその住人達がいる。
ならば、やれる。
コイツらと一緒であれば、どんな困難であっても、突破出来るはずだ。
「――よし」
――決めた。
今後、何をするにしても、俺はこれから、この世界を本気で生きて行こう。
俺が、俺として生きて行くために、この世界を思う存分に満喫して、好きに生きて行くとしよう。
何となく、それが、俺がこの世界においての、為すべきことだと思った。
「――セイハ。俺はこれから、今までとは全く違う、新たな世界に飛び込もうと思う。お前も、付いて来るか?」
「……はい。この身は全て、我が主のもの、あなた様の、思う通りに」
こちらに向かって頭を下げ、確かな忠誠を示す少女に、俺はニィと頬を吊り上げ、周囲に広がる広大な世界へと向かって、視線を向けたのだった――。
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる