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世界の様子
王都『セイリシア』
しおりを挟む――我が家の老執事と戦士が拉致ってきた情報源君に、協力を求めてから早数日。
「おー、着いた着いた」
俺達はとうとう、目指していたセイローン王国の王都――『セイリシア』に辿り着いていた。
「そんじゃあ、ジグ、レグドラ。前に話した通り、ギルドで待機していてくれ。何かあったらまた呼び出すからよ。ここまでありがとな」
そう言いながら俺は、二匹の身体のポンポンと叩き、馬車と彼らを繋いでいた固定を外す。
『グルルゥゥ』
『ギギウゥゥ』
俺の言葉に、二匹はそれぞれ了承らしい鳴き声を上げると、見る見る内に身体を小さくさせていく。
やがて、大型犬ぐらいのサイズにまで縮んだ二匹は、とことこと馬車の内部を進んで行き、ギルドへの扉が設置された馬車二階へと上がる階段を昇って行った。
……なんか、見た目は恐ろしいのに、二匹が並んで大人しく階段を昇る様子は、随分可愛らしい構図だったな。
「よし、お前ら、準備はいいなー?」
「はーい!」
俺の言葉に、巫女服から旅人風の服装に着替えた燐華が元気良く返事をする。
現在、我がギルドの面々の内、セイハとジゲルにシャナル、燐華と玲はいつもの服装から着替え、全員無難な旅人風の恰好へと変わっている。
彼女らのいつもの服装だと、確実に浮くだろうからな。
特にセイハとジゲル、シャナルのメイド服と執事服は目立つことこの上無しだろう。
目立つと言えば、馬車もそうだ。
今俺達は、王都をぐるりと囲っているらしいデカい防壁から伸びる街道より、少し離れた位置に馬車を止めており、出入りの活発な正面大門の様子を窺っているのだが、俺達が乗っていたようなサイズの馬車など一台も無い。
これを動かすのもペット達がいないと無理だし、そしてペット達に馬車を引かせてあの大門まで乗り込んで行った場合、通行どころか討伐隊とか組まれてしまう可能性も重々に考えられたため、ペット達はギルドで留守番、馬車はアイテムボックスにしまい、俺達は徒歩の旅人を装って大門に向かうことにした。
「リュックの準備は、万端です」
そう答えるのは、メイド服から着替え、素朴な服装を身に纏いながらも、仮面だけは被ったままであるため微妙に怪しい風貌のセイハ。
俺はアイテムボックスが使え、配下達も容量は少ないが同じものを使えるため、リュックの必要性は全く無いのだが、旅人が手ぶらだと流石に怪しいだろうということで、偽装のために中身の軽いリュックをそれぞれが背負っているのだ。
「おかしの準備も出来たよ!」
「お、いいな。後でシャナルに茶でも入れてもらおうか」
「フフ、わかりました。後程ご用意いたしましょう」
「ピクニックじゃねぇんだからよ……ほら、さっさと行こうぜ。急がねーと、宿が取れなくなっちまうぞ」
呆れたようにそう言うネアリアに、ジゲルが同意しながら言葉を続ける。
「ふむ、確かにそうですな。すでに日は真上を過ぎている以上、早めに宿の確保をしておいた方がよろしいでしょう」
「了解了解、そんじゃあ、行くか」
* * *
ギルドに入るための扉を消し、馬車をアイテムボックスにしまってから街道を進み、大門の前に出来ていた列に並ぶこと数十分程。
「――次!」
その声に従い、俺達は門の横に設置された、衛兵の詰所のようなところの前に立つ。
「む……異人種の旅団か。ここまで種族がバラバラだと珍しいな。通行証は持っているか?」
その衛兵の問いに、代表して俺が答える。
「持っていない。通行税を払えば、通してもらえると聞いているが」
「その通りだが、通行証を持っていない場合、いくつか規則が設けられている。それを守らなければ、罰金を払ってもらうことになるから、覚えておけ。その罰金も払えないとなると、奴隷に落とされて鉱山行きだからな」
「あぁ、わかった。肝に銘じておくよ」
その後、規則とやらに関する説明を色々としてもらったが、そう厳しいものではないようだ。
王都入りしてから一か月以内に、何かしらの理由で衛兵のご厄介になった場合、仮通行証は剥奪、王都を追い出されるらしい。
また、一か月以上の滞在をするつもりであるならば、何かしらの身分証を中で発行する必要があるらしく、ちゃんと職に就いているということの証明をしなければならないそうだ。
この辺りは、情報源君にも聞いたな。
ちなみに衛兵のオススメ身分証は、冒険者証とのこと。
一か月も王都にいない場合であっても、簡単な仕事の紹介をしてもらえたり、他の都市でも使える身分証であるそうなので、持っておいて損はないそうだ。
……うん、やっぱりあるのか、冒険者の職って。
「――これで手続きは終了だ。それでは、良い滞在を!」
――その後、特に問題もなく至って普通に所定の手続きを終え、俺達は大門の内側へと足を踏み入れる。
「……思っていた以上にあっさり入れたな」
そう、思わず苦笑を溢す。
ザルというか、何と言うか。
結構親切に色々教えてくれたけどさ。
俺達の人種があんまりバラけているもんだから、奇異な視線は送られたものの、概ね問い詰められることもなく普通に入ることが出来た。
ちなみに情報源君に聞いたところ、ここ『セイローン』王国自体は人間の治める人間のための国であるそうだが、人間以外の異人種――『獣人族』、『亜人族』などといった種族も普通に暮らしているそうで、王都へそれらの人種の者達がやって来ることはよくあることなのだそうだ。
また、人間ではない異人種に『魔族』がいるそうだが、魔族だけはこの国と戦争中であるため、全面的に入国禁止とのこと。
ウチのメンツだと、それに分類される者はいなかったため、大丈夫だったのだろう。
「そんなもんだろ。一応犯罪者かどうかの顔の確認はしていたみてーだし、通行証が無くとも金が払えりゃ、犯罪を起こしやすい貧乏人は街ん中に入れねー訳だかんな」
肩を竦め、そう答えるネアリア。
まあ、そうか。
こう言ってはアレだが、所詮は馬車が移動のメイン手段であるような文明世界だしな。
ファンタジー的であると言えば聞こえは良いが……まあ、有り体に言って金があれば大概のことは何とでもなる世界なのだろう。
そんなことを考えながら俺は、周囲の様子へと視線を向ける。
人、人、人。
大通りを無数の人々が闊歩し、店の売り子が積極的に呼び込みを行っており、かなり活気に満ち溢れている。
大門から真っすぐ伸びる大通りは、そのままこの王都の中心に位置するデカい王城にまで繋がっており、網目状に都市が広がっているようで、かなり綺麗に区画整備が為されている。
悪くない。
ゲームのやり始めを思い出す、なかなかにワクワクする光景だ。
「それじゃあ、予定通り二手に別れようか。ジゲルとシャナルは、衛兵が言っていたオススメの宿を取りに行ってくれ。残りのメンツは、このまま冒険者ギルドに向かおう。燐華と玲は……お前らも冒険者になるか?」
子供は別に、俺達が保護者として身分証を持っておけば、そういう身分証の類はいらないそうだが……。
「冒険者になるー!」
「ウチも、一応持っておいた方が良いかと」
「わかった、それじゃあ一緒に行こうか。ジゲル、シャナル、そっちは頼んだぞ。何かあったら『念話』を使え」
「了解いたしました」
「お任せください」
『念話』とは、ゲームにおいてマップで離れてしまった味方NPCを呼び出すためのコマンドであったのだが、確認してみたところ、今では双方向で意思の通達を行う、電話のようなスキルとなっていた。
俺だけではなく、NPCの方からもこちらに念話を送ることが出来るのは確認済みだ。
そのことを試してわかった際、「マスターと、いつでもお話を……」とセイハが嬉しそうに呟き、誰も見ていないと思ってクネクネしていたのだが、俺に見られていることに気が付いた瞬間、仮面越しでもわかる程に動揺し、そして無言でポコポコと小さく胸を叩いて来たのが、超可愛かった。
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