断罪の暗殺者~なんか知らんが犯罪ギルドのトップになってた~

流優

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世界の様子

冒険者ギルド

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 冒険者ギルドへは、簡単に辿り着くことが出来た。

 大門から真っすぐ伸びる大通り上に、デカデカと陣取っていたためだ。

 かなり力を持った組織であるらしく、王城に近い立地や、周囲の建造物より頭一つ抜けた建物のデカさから、その様子が窺える。

 というかまあ、普通に国の一機関であるそうなのだが。

 よくある国家間を超越した超組織なんかではなく、普通に国の援助で成り立っており、安価な労働力、および兵力を確保するための異世界ハローワーク的組織であるらしい。

 その中でもトップの者となると、色んな方面でのエキスパートとなり突き抜けた技術を有する者が多いため、貴族位を貰える程の地位を得ることも可能であるらしい。

 そういうデカい釣り針を垂らしておくことで、就業者を増やそうという狙いがあるのだろう。

 実際、冒険者人口というものはかなり多いようだし、なかなか上手くやっているもんだ。

「よし、入るか」

「お供いたします」

 ジギルとシャナルを抜いた我が配下達を連れて、俺は冒険者ギルドの開けっ放しになっている扉を超え、中へと入る。

 ――まず視界に入ったのは、正面の受付カウンター。

 時間が昼過ぎであるためか人はそこまで多くなく、数人がその受付に並んでいる。

 視線を横にずらすと、内部に酒場が併設されており、こちらも数人の飲んだくれが昼間であるのにもかかわらず酒らしき飲み物を飲んでいる。

 今度は視線を上に向けると、吹き抜けになっている二階の様子を窺うことが可能で、会議用なのか大きめの長テーブルが壁に仕切られて数個設置されている様子が見える。

 ふーん……外から見ても思ったが、やっぱりかなりデカい建物だな。

「お、酒」

「後でな」

 隣の酒場に心を奪われそうになっているネアリアにそう言ってから、俺は冒険者ギルド内部を進み、空いていた受付の前に立つ。

「いらっしゃい。新規か?」

 そう気安く声を掛けて来るのは、スキンヘッドに顔面傷だらけの、一言で言って悪人顔の男。

 人でも殺せそうな笑みをニィィと浮かべ、ゴツい丸太のような腕を組み、カウンターに座っている。

 ……このおっさんのところに並んでいるヤツがいない理由が、よくわかろうものだな。

「うわー、おっちゃん、顔中傷だらけだね!」

「お? 嬢ちゃん、俺が怖くないのか?」

「全然怖くないよ! だって、優しそうなおっちゃんだもん!」

「ワハハハっ、そうか! こりゃ将来が楽しみなお嬢ちゃんだ!」

「ちょ、ちょっと、燐、アンタは黙っていんさい」
 
 ニコニコ顔でおっさんと話す燐華を、玲が慌てて窘める。

 玲はアレだな、お姉ちゃん気質だよな。

「あー、すまん。ウチの子が失礼した」

「ハハ、気にしねぇよ。子供にそう言われて悪い気がする訳がねぇからな」

 快活に笑って――笑った顔は、一層極悪度が増している――おっさんは肩を竦めると、それ以上余分な話をすることもなく、すぐに自分の仕事へと取り掛かり始める。

「さて、それでアンタ達は依頼か? 新規の冒険者志望か?」

「後者だ。さっきこの街に来た。身分証を持っておいた方がいいだろうと思ってな」

「なるほど、旅人か。それなら、最初に説明を受けてもらうぞ。そんなに長くないから、嬢ちゃん達も聞いてくれ」

 それから、簡潔におっさんの説明が始まる。

 まあ、よくある冒険者というものだ。

 雑事もやれば、専門職の仕事もする。
 ただ、やはり普通にモンスター――魔物が闊歩する世界であるためか、基本となるのは戦闘で、魔物討伐を主軸としているそうだ。
 
 ランクはわかりやすく数字制で、『10~1』。数字が若くなる程位が高くなる。
 仕事を熟した量や本人の能力如何で上昇し、偉くなるにつれ冒険者ギルドにおける待遇や国からの覚えも良くなるとのこと。

 また、いくつか禁止事項もあり、

 ・メンバーで喧嘩をするな。
 ・犯罪を起こすな。
 ・ギルドに不利益をもたらすな。
 ・依頼で死んでも、ギルドは関与しない。だから無茶な依頼は受けるな。

 と、小学校の学級目標並みに簡素な規則を伝えられた。

「――以上だ。何かわからないことがあったら聞け」

「随分簡単な説明なんだな」

「そりゃお前、こう言っちゃアレだが、学の無いヤツでもなれるから冒険者ってのは人気なんだ。小難しい話なんかしてみろ、誰も覚えらんねーぞ」

 ……まあ、確かに。

 ランクが数字制という簡易であることも、そういうところを気にしているのだろう。

「それで、説明を聞いたと判断した上で聞くが、冒険者になるんだな」

「あぁ、ここにいる全員分頼む」

「わかった、登録の手続きを……六人分だな」

「むっ、ファームもいるよー!」

 自分がカウントされていないことに気付いたファームが、自分の存在を主張する。

「お? 妖精族か。こりゃ失礼した。んじゃあ、七人分の手続きだな」

 おっさんはカウンターの下から俺達の人数分の羊皮紙らしい紙を取り出すと、それをこちらに渡す。

「それが登録用紙だ。必須と書いてあるところだけは埋めてくれ。そっちのテーブルで書いたらもう一度持って来い。ペンはそこにある」

「あ、すまん、字は…………読めるなぁ」

 読める。知らない言語だが、普通に読める。

 いつの間に俺、ほん〇くコンニャクを食ったんだろうか。

 ――もしかして……。

「……書ける」

 書ける。

 思った言葉を書こうとすると、指が勝手に、知らない言語の言葉を書いている。

 何だこれ。マジで謎。
 便利なのは間違いないが……ここまで来ると、流石に不気味だぞ。

「おい、書くなら向こうで書いてくれ」

「あ、あぁ、わかった」

 言われた通りに俺は、カウンターから離れ、併設されたテーブルに座る。

「マスター、文字が読めるのですか?」

「あぁ。読めるし書ける。どういう訳かな」

 隣に控えるセイハに、そう言葉を返す。

「……これ、多分お前らも読めるんじゃねぇか?」

「……はい。確かに読めます。見知らぬ言語なのですが……不思議です」

『……本当、ですな。私も、読めま、す』

 怪訝そうな表情で答える、セイハにレギオン。

 やっぱりか。
 恐らくは、俺以外の面々も全員、この世界の文字が読めるし書けることだろう。

 ……何と言うか、アレだな。

 俺達の脳みそに、この世界の言語が『インストール』されているようなイメージだ。

 こう、漠然とだが……何か、人為的なものを感じる。

「へぇ、本当だ。アタシも読めるな」

「燐華も!」

「ファームも!」

「ウチもです、主様」

「……まあ、わからないよりはマシだと思うことにしよう。それじゃあお前ら、それぞれよろしく。ファームの分は……誰か書いてやれ」

 そうして彼女らは俺から用紙を受け取ると、それぞれ空いているテーブルに座り、記入を始める。

 色々とおかしな気分だが……ぶっちゃけ、今更だしな。
 俺も、さっさと書くとしよう。

 えー、名前は……まあ、『ユウ』でいいな。
 このゲームの身体だと、本名よりそっちの方が俺の名前として合っているだろう。

 年齢に、出身地は……あー、地球でいいか。
 ちょっとそれっぽく『アース』とでも書いておこう。

 得意武器は、書かないくてもいいらしいから非公開ということにして、最後にクラス……クラスか。

 ……ありがちな『レンジャー』にしようか。

 と、俺が書き終わったタイミングで、隣の席に座って一生懸命に用紙を埋めていた燐華が、元気な声を上げる。

「あんちゃん!書いたー!」

「お、書き終わったか。偉いぞぉ~」

「えへへぇ」

 俺は燐華の頭を撫でながら、彼女に渡された用紙へと軽く目を通す。


 名:りんか
 年齢:覚えてない!
 出身地:あんちゃんのとこ!
 得意武器:まほー
 クラス:わかんない!

 
 ……ま、まあ、名前が分かればいいだろう。

 それ以外は最悪、全部空欄でもいいらしいしな。

「マスター、書き終わりました」

「おう、わかった。……あー、ほ、ほら」

「…………」

 こちらをじっと見つめて何事かを訴えかけて来る少女に負け、彼女の頭を燐華と同じく撫でてやると、相変わらず仮面のせいで表情はわからないが、少し嬉しそうな、機嫌が良さそうな雰囲気を漂わせるセイハ。

 苦笑を浮かべながら俺は、その間に彼女の用紙をチラリと確認し――。


 名:セイハ
 年齢:未把握
 出身地:レガリアータ
 得意武器:ダガー
 クラス:メイド


 『レガリアータ』というのは、実際に俺がセイハと出会った場所の地名だ。
 やはり彼女も、しっかりとその辺りの記憶を有しているのだろう。

 そして、メイドは……果たしてそれは、クラスと言えるのだろうか。

 ゲームならまだしも、このクラスって確実に戦闘において果たす役割としてのクラスを書くのだと思うのだが……。

 私、気になります。
 
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