断罪の暗殺者~なんか知らんが犯罪ギルドのトップになってた~

流優

文字の大きさ
22 / 49
世界の様子

突撃! 隣のギャング屋敷!!《4》

しおりを挟む


「お? 頭領――頭領、そりゃいったい何だ?」

「察せ」

 怪訝そうにこちらを見るネアリアに、俺は何とも言えない表情でそう答える。

 ――双子の少女の傷を治し、アイテムボックスに入っていた適当な替えのTシャツをそれぞれ着せてから俺は、片腕ずつで彼女らを担ぎ上げ、下へと降りて来ていた。

 この二人はどうやら、こちらの世界で『魔族』として定義されている種族であるらしい。

 頭からは羊のような捻じれ角、腰からは悪魔らしい黒の尻尾が生え、彼女らが人間ではないことを主張している。

 人間の国とは戦争中という話だし、恐らくはどこかで捕まって奴隷にでも落とされたのだろう。

 その首には首輪が巻かれ、先程の寝室の端に二本分の鎖が壁から伸びて床に垂れていたのを見るに、普段はそこに繋がれていたのだと思われる。

 ……今の彼女らは、上級ポーションと共に上級解毒ポーションも併用して使ったので、ただ穏やかに寝息を立てて眠っているが……クソ、嫌なものを見ちまった。

 ここまで胸糞悪い思いをしたことが、今までにあっただろうか。

 そんな俺の胸中を汲み取ってくれたのか、ネアリアは特にそれ以上双子に関して問い掛けて来ることなく、別の問いを口にする。

「……んで、何でこっちに? もう目標物、見つけたのか?」

「見つけてはないが、ここのボスを締め上げて居場所を聞き出して来た。地下倉庫にしまってあるってさ」

 そう言って俺は、双子を抱えたまま、彼女に書斎から盗って来た鍵束を見せる。

「それがその鍵ってか?」

「そういうこと。セイハは?」

「今アンタが言ったヤツを見つけて、確認に行った。アタシはここで見張り。まあ、多分全員敵は殺したけど。――お、噂をすれば」

 彼女が見ているのと同じ方向に視線を向けると、ちょうど一つの扉の奥から、こちらにヒョコッと頭を覗かせるセイハ。

「ネアリア、扉がありましたが、鍵が閉まって――? マスター?」

「その扉の鍵を見つけたから降りて来たんだとよ。んじゃあ、さっそく下降りてみっか。――頭領、アンタはどうする?」

 チラリと俺の抱える双子の方へ視線を送ってから、そう問い掛けて来るネアリア。

「……マスター、その子達は……」

「ちょっとな。……俺も行こう。元より目的はそっちだ」

 セイハの問いを誤魔化してから俺は、少し周囲を見渡して華美なソファを見つけると、そこに双子を横たえ、アイテムボックスから家具アイテムの『毛布』を取り出して彼女らに掛ける。

「よし、さっさと回収して、さっさと帰ろう。……なんか、つい最近もこんなこと言ったな」

「森でな。――あぁ、そういや頭領、冒険者のランク、アタシら上がるってよ」 

「へぇ? 何て言われたんだ?」

「熊の功績と、例のルーキー狩りのヤツらがルーキー狩りをやったっつう証拠が挙がってな。んで、アタシら三人ともⅩ級から一気にⅦ級だとよ」

「そりゃ、冒険者ギルドに行けば更新してくれんのか?」

「あぁ。近い内来てくれって」

「了解、明日にでも行こう」

「ランクは、皆様揃えておいた方がよろしいのでは? それに差が出ると、同じパーティ内でも受注が不可能になる依頼がある、とのことですが……」

「あー……そう言えばそんなことも言ってたっけか。そうだな、他のヤツらにも暇を見て受けさせておくか」

 そう会話を交わしながら、地下倉庫への階段を降りて行くと、すぐに底に辿り着き、目の前に扉が現れる。

 俺は、先程の鍵を再びポケットから取り出すと、それを扉の鍵穴に通し、扉を開く。

 中は真っ暗だったので、お洒落アイテムとしてアイテムボックスに入っていたジッポライターを用いて、置かれていたオイルランプに火を灯し――。

「――あった」

 数多の武器が壁に立てかけられ、様々な形式の鎧が所せましと置かれた、武器庫らしい地下倉庫。

 その中心に設置された台の上にあるのは、厳重に鎖が巻かれている、毒々しい紫色の刀身を持つ一本の剣。

 『禁剣フルーシュベルト』。

 その外見はやはり、ゲームで存在したソレと、全く同じものである。

 ……これがここにある可能性として考えられるのは、俺と同じようなヤツがこの世界にもいて、コイツを何らかの理由によって手放したか。

 もしくは……、俺達と同じようにこの世界へと漂流して来たか。

 事実を知るためには、この武器を入手した者に、直接話を聞くしかないだろう。

 ――次の方針は決まったな。

 俺は今しがた使った鍵束を再度使い、鎖を固定している南京錠を解くと、フルーシュベルトの柄をヒュッと掴み上げる。

「あ、お、おい頭領。そんな無造作に触っていいのかよ」

「装備しなきゃ大丈夫だ」

 ちょっと焦った声を漏らすネアリアに、何でもないようにそう答える。

 武器や防具は、持っているだけじゃダメ、というヤツだ。

 あのゲームにおいても、例えばこのフルーシュベルトは『両手剣』に分類される武器であるため、両手で柄を握って、両手で構えなければ武器を装備したことにはならず、その効果も発動しないのだ。

 そのため、両手剣を片手ずつの計二本持って、などをしてもゲーム時代では何一つ効果を発揮せず、初心者が双剣でもないのに武器を二本構え、そして殺される、ということがよくあったものだ。俺です。

 フルーシュベルトを握ったまま、次にアイテムボックスを開いた俺は、いつもゲームでやっていたように、それをヒョイと画面に向かって投げ入れる。

 すると、まるでその画面に吸い込まれるようにしてフルーシュベルトはこの場から消え去り、アイテムボックスメニューに表示されているアイテム欄の一番新しいところにその名前が表示されていた。

「――よし、回収完了。お疲れ、お前ら。撤収するぞ」

「マスター、他は回収なさらないのですか?」

「やめとけやめとけ。どれも質が悪いったらありゃしねぇから、潰して鉄にするぐらいしか使い道はねぇぞ。レア金属も無さそうだし」

「……確かにそうですね。すみませんマスター、何でもありません」

 そうネアリアに窘められ、前言を翻したセイハに手をヒラヒラと振ってから、俺は口を開く。

「ネアリア、よろしく。

 その俺の言葉に、彼女は一瞬ピク、と眉を反応させると、今度はニィ、と口端を笑みの形に変える。

「ヘヘ、あいよ、ボス。すぐに準備してやる」

 そう言ってネアリアは、メニュー画面を開くと、何がしかの操作――恐らく、『整備士』である彼女しか使えない『整備メニュー』をしばらく操作してから、やがて出現させたソレをポンとこちらに投げ渡す。
 
「とりあえず四つ作った。まだいるか?」

「十分だ。適当に設置しながら帰ろう。お前ら、万遍なく設置して来てくれ」

「了解」

「わかりました」
 
 その言葉に二人は、俺より先に倉庫を出ると、二手に別れて屋敷の内部へと散って行った。

 俺もまた、彼女らに続いて地下を出ると――先程ソファに横たえた、少女達の下へと向かう。

 ――まあ、もうギルドに連れ帰るしかないよな。

 双子の少女のいる部屋に辿り着き、俺は未だ眠ったままの二人を見下ろす。

 その後の身の振り方に関しては、彼女らが意識を取り戻してから考えるしかない。

 帰る場所があるのであれば、そこまで送って万事解決だが、しかし仮に、どこにも行き場が無いようであれば……あそこで見捨てずに、回復させたのは俺である。

 ならば、俺がトップを務める、ウチのギルドで面倒を見てやるってのが、筋というものだろう。
 幸い、二人ぐらいメンバーが増えたところで、生活の余裕という点に関しては全くの無問題だしな。

 小さく息を吐き出してから、俺は近くにあった一番大きい柱の根本にネアリアから貰ったC4を設置すると、双子の少女を両肩に抱え、入って来た正面扉から屋敷の外へと出る。

 それから少し待つと、セイハ達の方も無事設置が終わったようで、数分もせずに各々別のところから姿を現し、俺の隣に並ぶ。

「終わったか。帰るぞ」

「ほら、頭領」

 三人並んで歩きながら、ネアリアがヒョイとこちらに伸ばしたソレ、を受け取った俺は、屋敷の敷地から出たところで――そのスイッチを、押し込んだ。



 ――轟く、爆発音。



 一瞬にして夜の闇が真っ赤に染め上がり、発生した激しい爆風と熱が、距離を取った俺達のところにまで届く。

 ――少ししてから、チラリと背後に視線を送った俺の視界に映るのは、轟々と燃え上がり、その形を大きく崩して、天高く煙を上げる、クソどもの巣窟。

 ゲームにあった、特殊爆薬――『魔塵』。

 これは、十数種類ある爆弾系統アイテムの威力を著しく上昇させることが可能な仮想爆薬で、整備士系クラスのみが扱うことが出来る。

 これの良いところは、爆弾を『魔塵入り爆弾』として造り変えると、威力が上昇することの他に、その爆発を指向性にすることが可能となり、味方を巻き込まないなどの余計な被害を出さずに使用出来るようになるところだ。

 爆弾系アイテムは威力が高いんだが、その威力故に自分達のいるフィールドの設置オブジェクトも破壊してしまうので、場合によってはさらに不利になってしまうことがあったんだよな。

 この『魔塵』というアイテムが実装された当時は、一時期ゲームの街の中に整備士クラスがメチャクチャ増えたものだ。
 使用可能武器がかなり限られるので、すぐに消え去ったが。

 他人から搾取し続けた汚い金で、贅の限りを尽くした悪徳商人の最後を飾るには、これぐらい派手に吹き飛ばしてやるのが、良い塩梅だろう。
 
「――で、頭領。結局連れて来ちまったのか、その双子。どうすんだ?」

「……どうしようね」

「オイ」

 ジト目をこちらに向けて来るネアリアに、俺は慌てて弁明するように口を開く。

「……い、いや、どこにも行き場がないようなら、ウチでメイド見習いとして雇おうかなー、とは考えてるけどよ」

「どんだけ使用人を増やすつもりなんだよ。今の状態でも十分ウチは回ってんぞ。シャナルにセイハ、ジジィもいるし」

「……ダメですかね?」

「いやまあ、頭領のギルドなんだから、好きにすりゃいいけどよ……。オイ、セイハ、この行き当たりばったりなボスに、アンタも何か言ってやれ」

「私は、マスターの命に従うのみ。共に置いていただけるのであれば、私が言うことは何もありません」

「……あぁ、うん。アンタはそういうヤツだったな。聞いたアタシがバカだった」

 苦笑を浮かべ、やれやれと言いたげに首を左右に振るネアリア。



 ――そんな会話を交わしながら、俺達は。

 少しずつ騒がしくなっていく周囲の喧噪を全く気にした様子もなく、王都の闇の中へと溶け込んでいく。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...