断罪の暗殺者~なんか知らんが犯罪ギルドのトップになってた~

流優

文字の大きさ
21 / 49
世界の様子

突撃! 隣のギャング屋敷!!《3》

しおりを挟む


「な、な、何だ貴様は!?護衛はどうしッ――」

「うるさい黙れ。ツバが飛ぶ。口を開くな」

 そう吐き捨て俺は、躊躇なく妖華を振るうと、ブタの片手の指を正確に一本だけ斬り飛ばす。

「ッ!?アガああァッ!?」

「オイ、黙れと言った。二度目だ」

 と、再び妖華を振るい、もう一本別の指を斬り飛ばす。

「イぐッ――!!」

 ブタは表情を激痛に歪ませ、脂汗をダラダラと垂らしながらも、こちらに容赦がないことを理解すると、悲鳴を上げそうになっていたその口を閉じる。

「よし、そのまま黙ってろ。いいか、よく聞け。俺の許可なく口を開くな。俺の知りたいことに全て答えろ。嘘を吐いたり喋るのを躊躇う素振りを見せたら、一つずつお前の身体の部位をおさらばさせてやる」

「き、貴様ッ、私を誰だと思っている!!こんなことをしてただで済むと――」

「なあ、俺の話を聞いていたか? 余計なことを喋るなっつっただろ」

 俺はアイテムボックスから使い捨ての安物ナイフを取り出すと、やはり学習能力が乏しいらしく、再びわめき始めたブタの股座またぐらに生えている、見るのも汚らわしいソレに向かって、勢いよく投げつける。

「ッッ、イギャアああァああアアぁァ――ッ!?」

 狙い違わずナイフがソレに突き刺さった瞬間、ブタの口から漏れ出る絶叫。

 妖華を使わなかったのは、流石にアレをこの愛用の武器で斬るのが嫌だったからだ。

 流石に、男のイチモツなんぞ、斬りたくもないしその感触を味わいたくもない。

 ――と、どうもブタは、そのままあまりの痛みから失神してしまったようなので、俺は再びアイテムボックスを覗いてその中から一番効果の弱い下級ポーションを取り出すと、男のソレにぶっ掛ける。

 ナイフが突き刺さった状態のままだが、とりあえず傷が修復したようなので、ブタの顔面を蹴り飛ばして無理やり意識を覚醒させる。

「起きろ。勝手に寝るな。いいか、もう一度言うぞ。黙ってろ。そして、俺が聞いたことには全て、すぐに答えろ。わかったか?」

 眼から涙をダラダラと流し、顔中汗まみれで、コクコクと何度も何度も首を縦に振るブタへと、俺はようやく最初の質問を投げかける。

「お前が勢力拡大に使っている武器。フルーシュベルト。それは今どこにある?」

「ち、ち、地下だ。地下、そ、倉庫の一番、奥にしまっ、しまってある」

「倉庫ってんなら、鍵を掛けているだろ。それはどこだ?」

「か、か、鍵は、隣室の、わた、私の書斎にある」

「いいだろう。それじゃあ次だ。そのフルーシュベルトはどうやって入手した?」

「…………」

 一瞬口をつぐんだブタの指を、俺は無言でもう一本、即座に斬り飛ばした。

「ンぎウグゥゥッ、わ、わぎゃっ、わがっだ!!ごだえる!!ごだえるから!!」

 無様に泣き喚きながら、そう捲し立てるブタに、俺は再度質問を投げかける。
 
「最初からそうしろ。どうやって入手した?」

「もらっだんだ!!どあるお方がら!!」

「……へぇ?」

 ピク、と眉を反応させた俺を見て、まるで死中に活を見出したかのように、ぺらぺらと喋り出すブタ。

「顔はわがらない!!だが、相当に高位の方なのはだしがだ!!ぞの御方の指示で私は動いでいだ!!」

 ブタの言葉に、俺はふと脳内に、この王都へ来る前色々と教えてもらった野盗の姿が過ぎる。

 ……あくまで勘でしかないが、いつかの野盗が言っていた仕事の依頼人と、このブタが言っているその指示していた者ってのは、同一人物であるような気がするな。

 ――待て、そういや確か、今の王都の情勢についてジゲルが面白いことを言っていた。 

 何でも、現在ここセイローン王国を統べる国王はかなりの高齢で、崩御するのは時間の問題であると言われているのだそうだ。

 そのため、次期国王を狙う派閥争いが激化しており、裏では暗殺やら何やらの、結構物騒なことが頻発しているらしい。
 
 このブタにフルーシュベルトをくれてやった者もまた、その派閥争いの一角を担う者であり、影から操って自分の配下の勢力を増させ、発言力を拡大させようとしていた……?

 ……有り得そうだな。

「……ふむ。何を指示された?」

「狙っだ組織の壊滅!!要人の政治的不祥事の捏造!!誘拐に脅迫!!ぞれぐらいだ!!」

 思った通りか。

 例の野盗と同じ雇い主かどうかはわからないが、やはりコイツも、政争の道具として使われていたらしい。

「……お前、一応はこの商会のトップなんだろ? それも、かなり大きい。だったら、ある程度雇い主の正体には目星が付いているんじゃないのか?」

「……い、言えない」

「そうか」

 ジャギ、と妖華から肉と骨を断つ感触が伝わり、再びブタの指が宙を舞う。

 寝室に響き渡る、悲鳴。 

 みっともなく叫ぶブタに、俺は言い聞かせるようにして、ゆっくりと言葉を放つ。

「幸い、お前の指はまだ残り十六本も生えている。これが全部無くなったら、お前のために上級ポーションを使って、もう一度全て生やしてやろう。それで、もうニ十本だ。俺としても面倒だから、早めにギブアップしてくれると助かるんだがな」

「ぞッ、ぞれを言っだら、わだじはごろざれる!!ごろざれでじまう!!」

「どっちにしろ、ここで言わなくても殺されるぞ。俺に」

「……じ、じがじ――」

「それじゃあ、もう一本。おし、これで残り十五本だ」

「ギィあァァッ!!わがっだ!!ずうきぎょうだ!!ごのぐにの教会に属ずる!!どの方なのがはほんどうにわがらない!!」

 ……枢機卿?

 痛みからか、涙声でかなり聞き取り辛いが、確かにコイツは今、枢機卿と言った。

 ……呆れたもんだな。

 つまりは、聖職者だろう。

 それが、己が権力を握りたいがために人を陥れているとは、とんだお笑い草である。

「ごれで、わだじがじっているごとは全部だ!!だのむ、みのがじでぐで!!」

「……そうだな……よし」

 とりあえず聞きたいことは全て聞けたと判断した俺は――幻刀『妖華』の、を発動させる。
  
 その瞬間、刀身の血のような紅色が、名に冠するように妖しく輝き始め、波打つ波紋がまるで生きた血管であるかの如く、ドクン、ドクン、と脈動を始める。

「――なぁ、聞いてくれよ。この武器さぁ、ゲットするのに相当時間が掛かって。ホント、何度心が折れそうになったわかんないぐらい時間を費やした結果、ようやくドロップしてくれた小憎らしいヤツでな。まあ、その分だけ、同じくらい愛着も沸いているんだけど」

 マジであの時は、もう何度こんなクソゲーやめてやる!!と思ったことか。

 この武器がゲット出来るダンジョンに徘徊する敵は、吐き気を催す程の鬼畜モンスターばかりだし、何百回宝箱空けてもドロップしねぇし。

 ゲームで精神崩壊しそうになったのは、あの時が初めてだったわ。

「んでまあ、やっぱり超レア武器だから、その苦労に見合った凄まじい威力は持っていてな。まず耐久が物凄いから、鉄鎧とか斬り付けても刃が全然欠けないし、というか斬れ味も攻撃力も物凄いから、鉄ぐらいだったら全く苦も無く斬り裂けるんだ」

「な、何を……っ?」

 突然語り出した俺に、状況の読めないブタがおどおどした様子の、困惑の声を漏らす。

「特にヤバいのは、この武器に設定されているエクストラスキルだ。『煉獄』っつってな。MP消費は激しいが、一度発動すればしばらく発動しっ放し。んで、その発動にはまず、この刃で敵を斬り付ける」

 俺は妖華の刀身を走らせ、ブタの上胸の辺りを横一文字に浅く斬り裂く。

「いグッ……!!」

「するとな、斬り付けた相手に『幻覚』、『猛毒』、『昏倒』、『麻痺』の四つの効果を全て、即座に及ぼすんだ。しかも、結構長く」

「……? ――ッッ!!カッ、ハッ――!!」

 突如、ブタは呼吸困難に陥ったかのように過呼吸染みた息遣いになると、でっぷりと太ったその身体をエビの如く仰け反らせ、白目を剥く。

「実は俺、この武器を見つけてから、一対一だと数えられるぐらいしか負けたことがないんだ。ぶっ壊れ性能だと俺も思うが……まあ、入手条件がキチガイ染みた難易度だったからな。多少は許してくれよ?」

「あッ、うっ、ダう、だウげ、だウげで……!!」

「悪い、何を言っているのかさっぱりわからん。――それじゃあな、ブタ野郎。フルーシュベルトは、ありがたく貰って行くぞ」

 そう言い残して俺は、ビクビクと痙攣し始めたソイツから顔を逸らし――ベッドの上に、虚ろな目で横たわる双子の少女達の方へと視線を向ける。

 ……流石に、こんなクソどもの巣窟に置いていけないよな。

 連れて来た二人が何て言うかちょっと怖いが……いや、むしろ、置いて行った方が怖いか。

 その未来を想像して、思わず苦笑いを浮かべた俺は、ゲーム時代に有り余る程ため込んでいた上級ポーションをアイテムボックスから取り出すと、身体の至るところに傷がある彼女らの身体へと、その中身を少しずつ振り掛けていった――。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...