断罪の暗殺者~なんか知らんが犯罪ギルドのトップになってた~

流優

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異世界生活

緊急依頼《2》

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 ――陽が頂点に昇る頃。

 中心に馬車、その周囲に冒険者という布陣で、森の中を進む調査隊の一団。

 すでに王都を出発してから三時間程は経過しており、魔物は時折現れるが、しかし流石に魔物討伐を生業とする冒険者達らしく、特に苦戦することもなく堅実にそれらを倒している。

 まあ、やはりこれだけ大きな一団であるためか、セイハの索敵結果と俺のパッシブスキルの方の索敵結果を見るに、大体の魔物は野生生物らしく気配を察知してこちらから逃げているようだ。

 エンカンウトするのは大体が鈍いヤツか、脳みその容量が足りないゴブリンのようなアホばかりなので、大した被害も出さずに歩を進めることが出来ている。

 その調査隊の一団の中では、俺達は中央より少し後方で馬車の左側面を守っており、我がギルドの三人――そして、もう一人の少女の四人のパーティで森の中を進んでいた。

「……申し訳ないです、私だけこんな、楽をさせてもらっちゃって……」

「気にすんな。出番が来たら、頑張ってくれりゃあいいさ」

 馬車の後ろに腰掛け、揺れに合わせて足をプランプランさせながら、そう申し訳無さそうな様子で話し掛けて来る、俺達に臨時要員として組み込まれた少女――イルに、俺は肩を竦めて言葉を返す。

 彼女は黒いローブに黒いとんがり帽子、光る淡い水色の宝玉が埋め込まれた古い杖という、見るからに魔術師然とした恰好をしており……というかまあ、実際に魔術師クラスで、支援や遠距離攻撃を得意としているのだそうだ。

 彼女もまた冒険者であり、俺達と同じⅦ級であるため馬車の護衛組の方に組み込まれたのだが、単独で参加していたため、その危険性を考慮され俺達のところへ臨時で編成されることになった。

 三人組のパーティは他にもいくつかあったのだが、その中で俺達のところへ組み込まれたのは、やはりネアリアとセイハがいるからだろう。

 戦闘を行う冒険者の職務上、やはり内訳としては男の方が圧倒的に多く、そこに臨時パーティとして彼女を組み込んでしまった場合、色々と問題が発生する可能性を冒険者ギルド側が懸念したのだろう。
 そのため、編成の時にわざわざギルド職員の一人から声を掛けられ、歳若い女冒険者が二人いる俺達のところへ、彼女が来ることになった訳だ。

 まあ、この緊急依頼においてもパーティを組まず一人でやっている冒険者もいるようだし、やはり彼女が突出して若いということが考慮された結果なのだろう。

 ちなみに彼女だけ馬車に乗っているのは、やはり魔術師という後衛職であるためか体力はあんまりないようで、歩き始めて二時間ぐらいのところでゼエゼエ言い始めたためだ。

 このままだと実際に何かと遭遇した際、疲れ果てて何も出来ない未来が予想出来たので、彼女だけ馬車に乗って有事の際に備えてもらうことにしたのだ。

「なあオイ、イルっつったか?」

「ひゃいっ、な、何ですか?」

 と、ネアリアの言葉にビクッと少し肩を跳ねさせ、ちょっとビビりながら返事をするイル。

「……ネアリア、脅かしたら可哀想です」

「あ? いや、普通に話し掛けただけなんだが……」

「貴方は口が悪いので、普通にしていても脅しているように聞こえます」

「そうかよ」

 苦笑いを浮かべ、ガシガシと首の後ろを掻いてから、魔術師の少女へと再び口を開く。

「あー……怖がらせたなら悪ぃ。アタシは学がねぇから、口が悪いのは勘弁してくれ」

「あ、は、はい! す、すみません、私も、失礼な態度を……」

「いや……それよりアンタ、魔術師なんだろ?」

「はい、そうです。まだ学園に通っている、見習いの身ですが……」

 コクリと頷いてそう言うイルに、ふと俺が横から口を挟む。

「へぇ? 学園か。そんなのもあるんだな」

「ユウさん達は旅団の方達なんですよね? この王都セイリシアの魔術学園はかなり大きく、一般の方の見学なども受け付けていますので、興味がおありでしたら、是非遊びに来てください」

 ふむ、面白そうだな。

 彼女の言う通り、今度子供組を連れて見学に行ってみようか。

「と、悪い、口を挟んだな。んで、ネアリアは何を聞こうと思ったんだ?」

「別に大したことじゃねぇけど。こっち――あー……アタシは魔術ってモンに疎いからよく知らねぇんだが、そりゃ、どうやって発動するんだ?」

 恐らくは、こっちの世界、と言いかけたのを言い直して、イルへとそう問い掛けるネアリア。

 ――あぁ、なるほど、ネアリアはこの世界の魔法に興味がある訳か。

 確かにそれは、俺も興味がある。

 クソブタの屋敷で、魔術師とは何人か戦ったが……いや、あれは戦ったとは言えないな。
 全員魔法を発動する前にぶっ殺してしまったので、俺はまだこの世界の魔法というものを見たことがない。 

 知っているのは、こっちでは魔法を『魔術』と呼ぶことだけだ。

「魔術の発動ですか? そうですね……では、僭越ながら、少しだけ。『火よ。我が道を照らせ』」

 そう、彼女が呪文のようなものを唱えた瞬間、彼女の杖を持った反対の掌の上に、ボッ、と火の玉のようなものが出現する。

「おぉ……そりゃ、やっぱり魔力的な何かで発動しているのか?」

「はい、体内に有する魔力を燃料として魔術を発動します。呪文が長くなったり、魔導具の類が必要にはなりますが、自身の体内の魔力を使わず空間に漂う魔力を用いて魔術を放つことも出来ます」

「……じゃあその、体内に有する魔力を使って魔術を発動する時って、身体から魔力が抜けていく感覚、みたいなものはあるのか?」

「ありますよ。魔力が少なくなって来ると、何だか力が抜けていくような感覚がありますので、慣れれば体感で後何回魔術が放てるのか、ということがわかるようになります」

 なるほど……じゃあやっぱり、俺達が魔法系スキルを発動する時に使用するMPと、この世界の魔力というものは、別物なんだろうな。

 だって、MP消費しても、そんな身体から何かが抜けていく感覚なんて無いので。 

 あのゲーム、HPもMPも視界には表示されず、完全にプレイヤースキルで、どれだけ攻撃を食らうとどれだけHPが減る、ということを把握しておくのが重要となるゲームだったからな。
 MPの場合は、消費スキルの値を暗記して、大体の感覚でその減り具合というものを把握していた。

 ……俺、魔法系スキルはあまり覚えていないのだが、もしかすると、こちらの世界にあるという魔力を使って、魔法を放つことが出来るかもしれんな。

 少し、検討しておくとしよう。




 そうして、談笑しながら馬車の側面を守っていると――ピク、と、いつものようにセイハが身体を反応させる。

「――マスター」

「あぁ、わかってる」

 俺は、彼女にそう答えると、ゆっくりと妖華を腰から抜き放ち――イルに向かってヒュッと飛翔する、岩の礫のようなものを刀身で弾き飛ばす。

「グルルルゥッ!!」

 その攻撃に少し遅れ、森の奥からこちらに向かって襲い来るソイツ――へと、素早くセイハがダガーを数本同時に投げ放つ。

 狼はその攻撃を避けることが出来ず、正鵠を貫いたセイハのダガーにやられ、ズササと地面を削るように倒れ動かなくなる。

「ひうっ……!?」

 突然の攻撃に、イルの口から漏れる小さな悲鳴。

「来たな?」

「そうです、ネアリア。備えてください」

 セイハの言葉に、ネアリアはずっと背負っていたソレ――銃ではなく、連射式のボウガンを取り出し、俺達が捕捉していた魔物どもの方へ向かって構える。 

 アレは、ゲームオリジナルのボウガンで、結構えげつない発射レートで矢を撃ち出すことが出来る武器だったはずだ。

 今回、俺とネアリアの主武器である銃系統の武器は、使ってしまうと嫌な目立ち方をしてしまうことが容易に考えられたため、ネアリアの方は主武器としてボウガンと短剣、俺は妖華と短剣の二刀流という超厨ニ的装備を身に付けている。

 と言ってもまあ、ネアリアの持っているボウガンも相当珍しいモンだろうし、それに命には代えられないので、二人とも後ろ腰にハンドガンは隠して持っているのだが。

 本当にヤバくなったら、人目のあるところではセイハ以外使わないと決めているアイテムボックスもバンバン使って、本来のスタイルでもうなりふり構わず戦うことにしよう。

「――敵襲!!南東方向!!ロックウルフどもだ!!」

 と、俺達が態勢を整えたところで、調査隊全体に発されるその警告。

 すぐに一団全てが前進を止め、左側面に人が集まり出すのとほぼ同時、今しがた俺達に突っ込んで来た狼と同じ種族の狼どもが一斉に森から姿を現し始め、調査隊の一団へと襲い掛かり始める。

「グルルルァッ!!」

 狼の正体は――ロックウルフ。

 茶色の毛並みをした大型犬程のサイズの狼で、人間の手足ぐらいなら余裕で噛み千切ることが出来る強靭な顎を有している。

 その厄介なところは、ソイツらから放たれる「土魔術」と、そして「数」だ。

 大規模な群れを形成し、それが連携を保ちながら土魔術を発動して攻撃して来るため、外での遭遇ではかなり気を付けなければならない危険モンスターなのだと、出発前におっさんが説明していた。

 実際に、俺の索敵に引っ掛かっている範囲でも二十数匹程の群れが調査隊一団の七時方向に展開されており、かなり緊密な連携を保って攻撃を仕掛けていることがわかる。

 ……まあ、魔物が周囲に潜んでいる、ということ自体は、

 なんせ、ウチには広域レーダー染みた性能の索敵能力を有する、セイハがいるので。

 それを、襲われるまで黙っていたのは、俺達にそんな高性能の索敵能力があるということを隠しておく目的と……まあ、うん、ある程度の実力を示して、どこかのタイミングで馬車の護衛組から周囲一帯の調査組へと鞍替えしようと考えていたためだ。

 そのためには、誰にも見られていないところで一団を討伐するより、派手に活躍して注目を集める必要があったので、良いタイミングで現れた狼君達のことは、黙っていたのだ。

 わざわざ武器を変更したのも、その辺りに理由があったりする。

 未知の優れた武器を使用しているから強い、ではダメなのだ。
 ハンドガンという、こちらの世界にない武器の特異性から、仮面を被って行動している時の俺の正体がバレても嫌だしな。

 完全に利己的な目的で他人を危険に晒しているが……まあ、奇襲の最初の一頭は使俺達のところへおびき寄せたんだし、死人が出る前に決着はつけるから、勘弁してくれよ。

「イル、皆の支援を頼むぞ。ネアリア、セイハ、お前らはここで迎撃な」

「ひゃ、ひゃいっ!」

「了解しました」

「頭領、アンタはどうすんだ」

「俺は、殲滅して、くるっ――!!」

 言葉尻と共に俺は、思い切り大地を蹴り飛ばし、その群れの只中へと、身体を躍らせたのだった。
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