村八分、塩

おこめニスタ

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第1章

同じ頃、山奥の洞窟で

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 同じ頃、山奥の洞窟で、まるで白ユリのように美しい女性が手鏡をのぞきこみ、ため息をついていました。
「わらわ、この顔には飽きたのじゃ。」
 彼女の名はシルヴェーヌ。実は自分の気に入った体に入り込み、自由気ままに生活をしているモンスターです。今の体も三ヶ月前に都まで降りてさらってきた、とある名家のお嬢様の体なのですが、
「飽きたー飽きたー飽きたのじゃあ!」
どうやら不満のようです。
 シルヴェーヌは手を打ち鳴らしました。
「およびですか?」
「参上です。」
その音を聞いて現れた二人は彼女の側近(そっきん)で、人間の女性の姿をしていますが、とてもきょうぼうなモンスターです。
「ベリーズ、わらわのために、新しい女の体とってきて。」
「ご希望の女性のタイプは?」
そう聞く紫の髪を一つのお団子でまとめている彼女がブルーベリーで、
「ラズちゃんおまかせコースがいーなぁ。ね、シルさま?」
そうおねだりするのがラズベリー。こちらは赤い髪に、二つのお団子を左右の高い位置に作っています。二人合わせてベリーズと、そう呼ばれているようです。
「そうじゃのう。まかしてみるから、さ、早く行くのじゃ。」
 ブルーベリーとラズベリーは魔法で簡単に山を越え、ふもとにある小さな村に行きました。さっそく村長と話し合いを始めます。ラズベリーが、ただ捕まえるだけでは面白くないと言ったからです。もちろん、村長は断ります。
 ラズベリーは小さく舌打ちをして、窓の外に向かって魔法を放ちました。ガラスの割れる音と爆発音がして、すぐに村人が飛び込んで来ます。
「村長、畑が…。」
「次はどこにしよっかな?」
愛らしい笑顔で、ラズベリーはそう言いました。
「さあ、これ以上村を壊されたくなかったら…。」
と、ブルーベリーも続けます。
「しかし…。」
 村長にとって、この小さな村の村人は皆、家族のようなものです。その中から一人をモンスターに差し出すなんて、考えられないことでした。
「おじいさま。」
そのとき声をあげたのは村長の孫娘、オリーブでした。
「私が行きます。」
「オリーブ!」
「これ以上被害を出すわけには行きません。」
りんとした声で彼女は言って、自ら進んでベリーズの前に立ちました。
「何もおまえが行かなくても…。」
村長の言葉に、オリーブは首を横に振ります。
「村人の生活を守るのが村長、そして村長の家族の仕事でしょう?」
 ラズベリーはオリーブを、上から下までゆっくり見ました。桜色の髪は肩のあたりまであり、毛先はふんわり巻いてあります。きゃしゃな体つきで、村の農作業をしているからでしょうか、少し日に焼けてはいますが、きれいな指をしていました。目じりが下がっていて、髪型と合わせて全体的にやわらかい雰囲気と、瞳の赤には芯の強さが見てとれます。現在のシルヴェーヌは高貴で美人な体を使っているので、おしとやかな外見もいいかもしれないと、ラズベリーは思いました。
「よし、合格!」
ブルーベリーがその言葉にうなずき、
「では、村長、ご協力ありがとうございました。」
と機械的にそう言って、オリーブの手を引きました。
「オリーブ。」
村長が孫娘の名前を呼びます。オリーブは笑顔で言いました。
「行ってきます。」
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