村八分、塩

おこめニスタ

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第1章

このくくり、イヤ。

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 勇者ソルトとその仲間達…
「このくくり、イヤ。」
と、ミントが不満のようなので、言いなおしましょう。
 勇者ソルトと、シフォン、ミントの三人がこの村に着いたのはそれから一時間後ぐらいのことでした。なにやら村の様子が沈んでいるため、三人は事情を聞き、村長の孫娘がさらわれたことを知ります。
「ひどい…。」
「うん…。え、ソルト?」
シフォンとミントが顔をくもらせて会話する中、ソルトは走り出しました。行き先は村長の家です。
 ばたん!
ドアを開ける大きな音と、
「村長!」
と言うソルトの大きな声に、孫娘を失った悲しみにくれる村長は驚いて
「なんだね君は。」
と困った表情を浮かべます。勇者は気にせず、言葉を続けました。
「お孫さんは、お孫さんは必ず俺が助け出します!」
「え?」
「だから、安心してください。」
ばちーん。
大きな音がして、こぶしをにぎって高らかに宣言したソルトは頭に打撃を受け、体を折りました。
「い・き・な・り・暴走しない!」
 慌てて追いかけてきたミントの右手には、どこから取り出したのやら、ハリセンがにぎられています。その後ろでシフォンがオロオロしています。
「止めないでくれ、俺は決めたんだ。」
 ばちーん!
先ほどより強くハリセンで後頭部を殴られたソルトは床に倒れてしまいました。たまらず、
「ミントさーん。」
とシフォンが声をあげます。ミントはため息をついて、ソルトを見下ろして、こう言いました。
「誰が止めるって言った?」
「え?」
シフォンはローブを踏まないように手で押さえ、しゃがみました。体を起こすソルトと、目の高さを合わせるためです。
「勇者さま。『俺が』ではなくて、『俺達が』ですよ。」
「そーゆーコト。」
さっとどこかにハリセンをしまい、ちょっと目線をそらしながらミントも同意します。
「シフォン、ミント、ありがとう!」
立ち上がってうれしそうに笑うソルトを見て、シフォンも一緒に立ち上がりながら、こっそり、つぶやきました。
「結局私達って、勇者さまを甘やかしているんですよね。」
 それから、村長に向き直りました。
「突然押しかけて、あいさつもなしで失礼しました。」
身構えている老人に、やわらかく笑いかけます。
「聞いてのとおり、私達はこれからお孫さんを助けに向かいたいのですが、」
どちらの方角に、と言いかけたその言葉と、
「そうと決まれば、今行くぞ!」
と、ソルトの大声が重なりました。
ばたん!
シフォンの背後でまたドアの音がします。勇者はどうやら村長の家から飛び出して行ったようです。
「またか、あのバカ!」
慌ててミントも後を追って、家を出ました。
 シフォンは心の中で、大きな大きなため息をつきました。そして、ぽかーんとしている村長に、何事もなかったかのように、
「で、どっちの方角に行かれたのでしょう?」
と、人の良い笑みを浮かべながらそう聞きました。
「向こうの山のほうに飛んで行きました。」
何が起こっているのか理解出来ないながらも、村長はそう言って北の窓から見える山を指差しました。結構距離がありそうです。急ぐ必要があるなと、シフォンは思いました。
「では、私たちでオリーブさんは無事に助けてきますので。」
「あの、」
一礼して、先に出て行った二人を追いかけようとドアに手をかけたシフォンを、村長が呼び止めます。
「あんた達は一体?」
「自己紹介も忘れるなんて、失礼しました!」
再び村長に向き直って、シフォンはにっこり笑いました。
「勇者さま御一行です。」
村長はシフォンの言葉を理解するのに、少し時間がかかりました。
 そしてやっと、
「は?」
と口にしたのですが、その言葉を聞く前に、シフォンは二人を追って家を出ていました。後に残ったのは嵐が去った後の静けさだけ。
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