5 / 36
第2章
うわ、出た。
しおりを挟む
「もう、ソルトのせいでご飯食べそこねたじゃないの。」
というミントの文句を聞きながらも先を急ぎます。
村を出てしばらくすると街道はケモノ道となり、人影はなくなりました。草はのび放題、シフォンの腰のあたりまで高さがあります。歩きにくいのと見通しが悪いのとで、思うように進めません。何からもおそわれることなく、山道へと続く街道に出られた時、シフォンはほっと胸をなで下ろしました。
遅れを取り戻そうと急いでいると、行く先に人の姿を見つけたのです。
「うわ、出た。」
近付くにつれ、どんとかまえて立っているその人があまりによく見知った顔だとわかって、ミントは顔をしかめました。
「ここから先は通さないぜ!」
ブラウンの髪はソルトより長く、こげ茶の瞳は強気な性格をそのまま表わしています。身に着けている服と剣は高価なもので、どことなく育ちの良さも感じられます。
「ガナッシュ!」
ソルトにそう呼ばれた彼は、自分のことを勇者だと名乗り、ソルトのことを一方的にライバル視する青年で、
「ここを通りたかったら、この俺様を倒すんだな!」
このように、いつも三人のジャマをするのでした。
「お前にかまっているヒマはないんだ。早く、どいてくれ。」
ソルトはオリーブを助けるために先を急ぎたいのですが
「嫌だね。」
ガナッシュは動こうとしません。そして、勝手に話し出しました。
「長かった。長かったぜこの三日間。お前らがここを通ると信じて待ち続けた三日間…。」
「待っていてくださったんですね。」
小さな声でシフォンがそう言い、
「てか向かってくればいいのに。」
わりと大きな声でミントがそう言いました。
「バカかお前は。」
ガナッシュはミントを鼻で笑い、
「待ち伏せしているほうが、かっこいいだろうが!」
「バカはお前だ!」
ガナッシュが、さも自分が正しいかのように自信たっぷりに言うものだから、ミントはそう叫んで頭を抱えました。シフォンは苦笑して、
「あれ、勇者さまは…」
いつもならガナッシュに向かっていくソルトがいないことに気づいて、目で探しました。彼はガナッシュを無視して先に進んでいます。
ガナッシュもやっと気づき、
「無視するな! くらえ、新・必殺技、ソードすろおー !」
と、技をくり出しました。
「えっと…。」
シフォンは反応に困り、ミントに言葉をゆずります。
「剣投げただけじゃん!」
ミントは彼女の意思をくみ取って、きちんとつっこみました。
しかし意外にも、剣は一直線にソルトへと飛んでいきます。ソルトは振り向きざまに剣を抜き、ガナッシュの長剣を叩き落しました。
「だから、俺は急いでいるんだ! かっこいい必殺技使ってもだめだって!」
「かっこよかったんかい!」
ミントはきちんとソルトの言葉にも反応します。シフォンは拍手を送りました。
「そんなこと言って、俺に負けるのが怖いんだろ?」
とガナッシュが言いました。
「なんだって!」
「勇者さま、落ち着いて下さい。」
シフォンはなだめようとしますが、ソルトの耳には聞こえてないようでした。
「ほら、かかって来いよ!」
ガナッシュの言葉に剣を抜いてこたえたソルトを見て、シフォンは早く終わるのを待とう、とあきらめることにしました。こうなると止められないと、知っているからです。
「バカだ…。」
こいつに従うという選択はやっぱり間違っていたかもしれないと、ミントもまたうなだれました。
女性二人が視界に入ってないのか、男性二人はお互いににらみ合っています。ソルトは抜いた剣をガナッシュへ向け、ガナッシュも自分の剣をかまえようとします。
「あれ?」
愛用している長剣は、先ほど自分が投げてから、そのままソルトの足元に転がっています。
シフォンは苦笑しました。
「回収方法を考えていなかったんですね…。」
この無意味な戦いを、ミントは
「バカ対バカ。」
と表現しました。
その後は、シフォンが望んでいた通り、とても早く片付きました。
「よし、先を急ぐぞ。」
ソルトが走っていきます。
「ごめんなさい。今日は時間がないので、手当ては自分でしてくださいね。」
いつもは手当てをしてあげるシフォンも、ソルトの後を追っていきました。
ところが、ミントは動かず、じーっとガナッシュを見つめています。
「なんだよ?」
「私さ、お腹空いたんだよね。」
ミントはにっこり笑いました。
「食べ物ちょうだい。」
言うと同時に彼女はガナッシュの持ち物からパンを三人前取って、
「いっただっきまーす。」
二人を追って走り去りました。
「悪魔か…。」
痛みで動けないガナッシュの言葉を聞いたのは、風だけでした。
というミントの文句を聞きながらも先を急ぎます。
村を出てしばらくすると街道はケモノ道となり、人影はなくなりました。草はのび放題、シフォンの腰のあたりまで高さがあります。歩きにくいのと見通しが悪いのとで、思うように進めません。何からもおそわれることなく、山道へと続く街道に出られた時、シフォンはほっと胸をなで下ろしました。
遅れを取り戻そうと急いでいると、行く先に人の姿を見つけたのです。
「うわ、出た。」
近付くにつれ、どんとかまえて立っているその人があまりによく見知った顔だとわかって、ミントは顔をしかめました。
「ここから先は通さないぜ!」
ブラウンの髪はソルトより長く、こげ茶の瞳は強気な性格をそのまま表わしています。身に着けている服と剣は高価なもので、どことなく育ちの良さも感じられます。
「ガナッシュ!」
ソルトにそう呼ばれた彼は、自分のことを勇者だと名乗り、ソルトのことを一方的にライバル視する青年で、
「ここを通りたかったら、この俺様を倒すんだな!」
このように、いつも三人のジャマをするのでした。
「お前にかまっているヒマはないんだ。早く、どいてくれ。」
ソルトはオリーブを助けるために先を急ぎたいのですが
「嫌だね。」
ガナッシュは動こうとしません。そして、勝手に話し出しました。
「長かった。長かったぜこの三日間。お前らがここを通ると信じて待ち続けた三日間…。」
「待っていてくださったんですね。」
小さな声でシフォンがそう言い、
「てか向かってくればいいのに。」
わりと大きな声でミントがそう言いました。
「バカかお前は。」
ガナッシュはミントを鼻で笑い、
「待ち伏せしているほうが、かっこいいだろうが!」
「バカはお前だ!」
ガナッシュが、さも自分が正しいかのように自信たっぷりに言うものだから、ミントはそう叫んで頭を抱えました。シフォンは苦笑して、
「あれ、勇者さまは…」
いつもならガナッシュに向かっていくソルトがいないことに気づいて、目で探しました。彼はガナッシュを無視して先に進んでいます。
ガナッシュもやっと気づき、
「無視するな! くらえ、新・必殺技、ソードすろおー !」
と、技をくり出しました。
「えっと…。」
シフォンは反応に困り、ミントに言葉をゆずります。
「剣投げただけじゃん!」
ミントは彼女の意思をくみ取って、きちんとつっこみました。
しかし意外にも、剣は一直線にソルトへと飛んでいきます。ソルトは振り向きざまに剣を抜き、ガナッシュの長剣を叩き落しました。
「だから、俺は急いでいるんだ! かっこいい必殺技使ってもだめだって!」
「かっこよかったんかい!」
ミントはきちんとソルトの言葉にも反応します。シフォンは拍手を送りました。
「そんなこと言って、俺に負けるのが怖いんだろ?」
とガナッシュが言いました。
「なんだって!」
「勇者さま、落ち着いて下さい。」
シフォンはなだめようとしますが、ソルトの耳には聞こえてないようでした。
「ほら、かかって来いよ!」
ガナッシュの言葉に剣を抜いてこたえたソルトを見て、シフォンは早く終わるのを待とう、とあきらめることにしました。こうなると止められないと、知っているからです。
「バカだ…。」
こいつに従うという選択はやっぱり間違っていたかもしれないと、ミントもまたうなだれました。
女性二人が視界に入ってないのか、男性二人はお互いににらみ合っています。ソルトは抜いた剣をガナッシュへ向け、ガナッシュも自分の剣をかまえようとします。
「あれ?」
愛用している長剣は、先ほど自分が投げてから、そのままソルトの足元に転がっています。
シフォンは苦笑しました。
「回収方法を考えていなかったんですね…。」
この無意味な戦いを、ミントは
「バカ対バカ。」
と表現しました。
その後は、シフォンが望んでいた通り、とても早く片付きました。
「よし、先を急ぐぞ。」
ソルトが走っていきます。
「ごめんなさい。今日は時間がないので、手当ては自分でしてくださいね。」
いつもは手当てをしてあげるシフォンも、ソルトの後を追っていきました。
ところが、ミントは動かず、じーっとガナッシュを見つめています。
「なんだよ?」
「私さ、お腹空いたんだよね。」
ミントはにっこり笑いました。
「食べ物ちょうだい。」
言うと同時に彼女はガナッシュの持ち物からパンを三人前取って、
「いっただっきまーす。」
二人を追って走り去りました。
「悪魔か…。」
痛みで動けないガナッシュの言葉を聞いたのは、風だけでした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる