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第4章
3年ほど前
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シフォンが彼に出会ったのは、三年ほど前の春でした。
師匠につれられて、今から自分が仕える勇者に想像をふくらませ、どんな相手であろうと全力でサポートしなければならないのだからと自分をいさめたりして。
実際目の前にした勇者は、ただの少年でした。小さい頃から訓練を強いられてきたシフォンと違い、伸び伸びと育てられてきた彼は、どこまでも自由でした。
天気がよかったら、うれしそうに笑って、
雨が降ったら、ぬれるのも気にせずにはしゃぎ、
野にゆれる花にあいさつをして、
空を行く鳥に手を振り、
動物の群れに飛び込んで行き、
彼の笑顔はどうしてか自分と違う気がして、シフォンは目がはなせませんでした。
ある日。彼は言いました。
「勇者さまって呼ぶの、やめないか?」
シフォンは首を傾げました。だって、彼は勇者で、お仕えする人で、世界を平和に導くそのお手伝いをするのが彼女の役目でした。
「俺はまだ勇者じゃないから。」
と、ソルトは笑いました。そして、空を見上げ、ぽつり、つぶやきました。
「本当は、勇者にならなくたっていいんだ。」
彼が指差した先には、大きな白い雲がぷかぷか浮いていて、
「平和だったら、それでいい。誰かが泣いてなかったら、いいよ。」
そう言って、あの雲の形おもしろいよなって笑うのです。
シフォンにとって、世界を守ることは使命でした。彼は、違うのです。世界を守りたいから、誰かの笑顔を守りたいから、守るのです。
彼女の瞳にもちゃんと映っています。きれいなきれいな青い空でした。
空の色なんて知らなかったのです。この世界が美しいと、知らなかったのです。
「勇者さま。」
シフォンは微笑みました。
「私はこれからも、そう呼んでいいですか?」
この世界をすばらしいと私に思わせてくれた彼を勇者にしたいと、
私がそばで、最後まで見届けようと、
心からそう思いました――。
今は笑われたっていい。ただ、信じ続けよう。ソルトという名の勇者が世界を救うその日を。
奥へと一人進んで行った彼はまだ帰ってきません。
「どうか、ご無事で。」
あなたを待っている人がいることを、どうか忘れないで。そう祈りながら、シフォンは足を引きずって、彼の元へと向かうのでした。
師匠につれられて、今から自分が仕える勇者に想像をふくらませ、どんな相手であろうと全力でサポートしなければならないのだからと自分をいさめたりして。
実際目の前にした勇者は、ただの少年でした。小さい頃から訓練を強いられてきたシフォンと違い、伸び伸びと育てられてきた彼は、どこまでも自由でした。
天気がよかったら、うれしそうに笑って、
雨が降ったら、ぬれるのも気にせずにはしゃぎ、
野にゆれる花にあいさつをして、
空を行く鳥に手を振り、
動物の群れに飛び込んで行き、
彼の笑顔はどうしてか自分と違う気がして、シフォンは目がはなせませんでした。
ある日。彼は言いました。
「勇者さまって呼ぶの、やめないか?」
シフォンは首を傾げました。だって、彼は勇者で、お仕えする人で、世界を平和に導くそのお手伝いをするのが彼女の役目でした。
「俺はまだ勇者じゃないから。」
と、ソルトは笑いました。そして、空を見上げ、ぽつり、つぶやきました。
「本当は、勇者にならなくたっていいんだ。」
彼が指差した先には、大きな白い雲がぷかぷか浮いていて、
「平和だったら、それでいい。誰かが泣いてなかったら、いいよ。」
そう言って、あの雲の形おもしろいよなって笑うのです。
シフォンにとって、世界を守ることは使命でした。彼は、違うのです。世界を守りたいから、誰かの笑顔を守りたいから、守るのです。
彼女の瞳にもちゃんと映っています。きれいなきれいな青い空でした。
空の色なんて知らなかったのです。この世界が美しいと、知らなかったのです。
「勇者さま。」
シフォンは微笑みました。
「私はこれからも、そう呼んでいいですか?」
この世界をすばらしいと私に思わせてくれた彼を勇者にしたいと、
私がそばで、最後まで見届けようと、
心からそう思いました――。
今は笑われたっていい。ただ、信じ続けよう。ソルトという名の勇者が世界を救うその日を。
奥へと一人進んで行った彼はまだ帰ってきません。
「どうか、ご無事で。」
あなたを待っている人がいることを、どうか忘れないで。そう祈りながら、シフォンは足を引きずって、彼の元へと向かうのでした。
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