村八分、塩

おこめニスタ

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第5章

爆発音がやみました

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 十数回と続いた爆発音がやみました。
 ソルトは地面にひざと手をつけて、荒い呼吸をくり返します。そんな彼を見下ろして
「もうこれ位でいいじゃろうか?」
シルヴェーヌは扇を胸元にさし、脱ぎ散らかしていた洋服を拾いました。すすで汚れています。すべてお気に入りだったので、シルヴェーヌは悲しくなりました。
 原因である彼を振り返れば、また立とうとしているではありませんか。扇がモンスターの手から離れたことにより重力は元に戻ってはいますが、人間が立ち上がれる程度の怪我ではないはずです。
 青い瞳の中にまだ戦意が残っているのを見て、
「しつこいのう。」
彼女は服を簡単にたたみ、灰が舞って黒くなった地面にそっと起きました。扇をかまえます。
「重力三倍。」
 ソルトはなんとか立ち続けました。しかし体が重いだけでなく、肺が押しつぶさせて呼吸も難しくなります。ゆらゆらと視界がゆれました。灯りに照らされた扇の赤色も、ゆらゆらゆれます。ソルトはふと、この扇を日の下で見たらどんな色になるのだろうかと思いました。その赤が悲しい色に見えました。なぜでしょう。彼に理由までは、わかりません。
 ひらり、ゆれました。今度はシルヴェーヌが動かしたからです。彼女の唇が動きます。
「重力五ば」
その時でした。
「どこだ、ソルトお!」
「へ?」
どこからか、ガナッシュの声がしました。
「ちくしょう、俺様が怖いからって、かくれやがって。」
彼の独り言をみとめたくなくて、自分の状況を忘れてソルトも思わず
「かくれてなんかない!」
と叫び返します。
「そっちか。 あー、いたいた!」
右手に剣を持ったガナッシュがひょこん、と姿を現しました。ソルトには、暗闇から突然出てきたように見えました。シルヴェーヌがあわてます。
「貴様、どこから入ってきた。」
彼女の記憶では、侵入者が出てきたその方向に道はないはずでした。ガナッシュはきょとんとして、
「裏口?」
と答えた後、ガナッシュはずんずんとソルトめがけて歩いてきます。
「さっきはよくもやってくれたな!」
「裏口とはなんだ、わらわは知らぬぞ。」
「お、なんだなんだ、ソルト、お前怪我してんのか。チャンス!」
「聞いておるのか!」
「やっと、やっと俺が真の勇者になる日が来た…!」
シルヴェーヌを無視し自分の世界に入るガナッシュと、無視されるのが不満で、ガナッシュのまわりを飛びはねるシルヴェーヌ。その様子がおかしくて、ソルトの口元に微笑みが浮かびます。本当は声に出して笑いたかったのですが、重力三倍の場では立っているだけで精一杯です。
 あれ?とソルトは不思議に思いました。どうしてガナッシュは平気なんだろう、と。
「えーい重力五倍じゃ!」
とうとう怒ったシルヴェーヌが開かれた扇を思いっきり振り、かろうじて立っていたソルトはまたもや、くずれ落ちてしまいました。
「お、なんだ?」
ガナッシュはまだ平然とした顔で立っています。
「ソルト、俺の前にひれふして、命ごいか。安心しろ、命まではとらないぜ。」
「なんでじゃ?」
シルヴェーヌの顔にあせりが浮かびました。
「ああ、長かった…。 どんなに、この日を待ちわびたことか…。」
「どうして重力を五倍にしたのにお前は動けるのじゃ?」
「今日から俺が真の勇者だああああ!」
「聞けええええ!」
べしん!
シルヴェーヌから背中を扇で叩かれたことで、ガナッシュはやっと、そちらを向きました。女性を指差しつつ、ソルトの方をむいて、口を開きます。
「ソルト、これ、なに?」
シルヴェーヌが、まるでこおったかのように、見事に固まりました。
「こ、こここ…」
ショックのあまり言葉になりません。ガナッシュは首をかしげて、
「コケコッコー?」
と聞き返します。
 シルヴェーヌが、ソデのこすれる音が聞こえる位大きく手を振り上げ、
「これ、とはなんじゃあ!」
ビシっと扇でガナッシュを指し、
「重力、十、倍!」
魔法をかけます。それでもやはりガナッシュは表情を変えません。シルヴェーヌは知らず知らず、彼から一歩あとずさりました。
「そうか。」
ふふふとガナッシュは笑い、
「こいつ、悪いやつだな! 勇者ガナッシュ様が成敗してやる!」
右手に持っていた剣を両手でにぎり直します。後ろにいるソルトを振り返らずに言いました。
「見てろよソルト、お前が倒せなかったやつを倒すかっこいい俺の姿をな!」
そして、彼の剣がすばやく、くり出されます。シルヴェーヌは扇で受け流しますが、
「すきありっ。」
足払いをかけられバランスをくずました。それを見逃さず、ガナッシュは一気に攻撃をしかけました。
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