村八分、塩

おこめニスタ

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第5章

ちょっと説明

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 さてここで、シフォンとミントの出番があまりにも少ないので、ちょっと説明してもらいましょう。
「きっと皆さん、ガナッシュさんの強さに驚いていらっしゃるかと思いますが、剣の腕前だけで言ったら彼は勇者さまより優れているんですよ。ただ…、」
「バカだからね、変なところで妙な必殺技使おうとするの。」
「勇者さまが相手になると、余計かっこよさをアピールしようとなさるんですよね。」
「そうそう。」

 それでは場面を戻しましょう。
「勇者は…勇者は俺だ!」
ガナッシュの活躍をずっと見ていたソルトが叫び、立ち上がりました。このままでは自分は勇者でなくなる、と気付いたのでしょう。落ちた剣を拾い、にぎり直し、一度後ろに引きます。
「剣よ、きらめけ。」
その声にあわせソルトの剣が光り輝き、
「翔(か)けろ、光の刃!」
彼が大きく円をえがくように振ると、それにあわせ光がシルヴェーヌ、そしてガナッシュへと飛んでいきました。
 ぱしん。光にあたり、シルヴェーヌの扇がはじき飛ばされて高く舞い上がり、その瞬間ソルトにかかっていた重力が消えました。
 ギリギリでよけたガナッシュが叫びます。
「いくら俺様がかっこいいからって、勝負のジャマをするのはどうかと思うぞ!」
「ガナッシュ、なんでお前には重力がかかってなかったんだ!」
「無視か!」
「無視だ!」
「そうか!」
ガナッシュは納得し、
「で、どうしてだ?」
と言うソルトにうながされ、自分の手の中にある剣に視線を落としました。
「こいつのおかげだろ。魔法すべて打ち消すらしいぞ。」
「そんな良い剣持ってるのか?」
言われてみると、確かに柄の部分に埋め込まれた青い石がそれらしい輝きを放っています。ミントがこの場にいたらきっと、
「そんな剣を簡単に投げんなあああああ!」
と大声で叫んでいたに違いありません。実際二人も、いないはずのミントの声が聞こえた気がして、空(くう)を見つめました。
「まあ、」
と、ガナッシュが言います。
「この剣からもわかるだろ。俺が、真の勇者だってことがな。」
「何を言ってる、勇者は俺だ!」
とソルトが返しました。
 二人が言いあらそっている間に、シルヴェーヌは扇を拾いました。その様子を目でとらえたソルトが、
「今度はさせない!」
モンスターに走りこみ、一気に攻撃をしかけます。魔法弾でうけた背中の傷から血が流れ、じんじん痛みますが、
「負けるものか!」
言葉で自分を後押しします。
 遅れてガナッシュも
「なんかソルトの方が勇者っぽいぞ。ちくしょう、勇者は俺だあ!」
剣での攻撃を開始しました。二本の剣を扇一つでうけるシルヴェーヌの方がどう見ても不利です。
「二対一とは、卑怯(ひきょう)だぞえ。」
シルヴェーヌの言葉に、ソルトはそれもそうだな、と思いました。この素直さをミントはバカと呼びますけれど。
「そうだぞガナッシュ、ひっこんでろ。」
「はあ?」
もちろんガナッシュがその意見を聞くわけありません。
「にせ者勇者の、お前がどっか行け。」
「俺が先に到着した!」
「さっきまで寝てたくせに!」
ガナッシュは魔法で動けなかったソルトのことをそう言いました。寝ていたわけではないのですが、寝転がっていたことは事実かもしれないと素直なソルトはそう思って、言い返す言葉を探しました。見つからないので、まわりをきょろきょろと見回しました。
 そこに、シルヴェーヌがいません。
 ソルトはいつの間にか止まっていた剣を持つ手を見下ろして、慌てて耳をすませます。ガナッシュがまだ何か言っているその声に混じって、足音が遠ざかっていきます。シルヴェーヌは、二人の攻撃が止まったのをいいことに、身をひるがえして逃げていったのです。
 ソルトは言い返す言葉を発見しました。
「お前のせいで逃げられたじゃないか!」
そう言って、去っていく音を追って、洞窟のさらに奥へと走り出しました。
「抜けがけすんな!」
ガナッシュも、続いて走り出しました。
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