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第7章
また…負けた…
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「また…負けた…。」
「あの…、」
「やっぱり、ソルトが勇者なのか?」
「えっと…」
「今日こそ勝てると思ったのに…。」
「あのっ!」
独り落ち込んでいたガナッシュにオリーブが声をかけます。手には薬箱と、彼女の体の大きさに合わない長剣を持っています。
「これ、あなたのですよね?」
「俺の剣!」
ガナッシュは自分の相棒(あいぼう)を見て、ガバッと顔をあげました。そして、急に動いたために血の気がひいて、横に倒れます。
「大丈夫ですか?」
慌ててオリーブがその体を支えてあげました。
「くらくらするーちくしょうーソルトめー。」
ガナッシュの出血量は、それはひどいものでした。オリーブは剣を置き、薬箱から包帯を取り出します。
「あの、止血、しますね。」
「あー。」
「その、助けてくれて、ありがとうございました…。」
なんだか彼は不機嫌です。オリーブの言葉も段々自信がなくなっていきます。
「別に、あんたを助けに来たわけじゃないし、それに、」
ガナッシュは口をとがらせて、言いました。
「結局、あんたを助けたのはソルトだ。俺じゃない。」
「そ、それでも…、私のせいでこれだけ傷ついたんです。」
そう言うと、オリーブの目に涙がにじみました。
「え、泣くなよ?」
「ごめんなさい、私のせいで。」
「別にあんたのせいじゃないから!」
大きな声で言うと、びくりとオリーブは体をすくませました。居心地が悪そうにガナッシュも視線をそらして、だまります。
「あの、私、思うんです。」
沈黙が怖くて、またオリーブは話し始めました。
「あなたはさっきからずっと負けた負けたと言っていますけど、それは剣が使えない状態にあったからですし、」
あの時、剣がミントによって移動していたために、ガナッシュは反応が遅れたのです。それをオリーブは見ていました。だから、拾っておいたのです。
「ソルトさんが勇者だというのなら、あなただって、勇者じゃないかと思います。」
だって、私を助けようとしてくれたのだから。と、そう続ける前に、
「ホントか?」
「ひゃっ!」
ガナッシュがオリーブの両手をにぎりしめ、彼女を見つめます。
「俺も、勇者なのか?」
オリーブはなんだか、ガナッシュの目を見ることができなくて、下を向きます。
「は、はい…。」
戸惑いながらも首を縦に振りました。
「そうか。俺はソルトに負けたわけじゃないんだな…!」
とてもうれしそうな声に、オリーブはそっと視線を上に戻しました。手をとったまま、ガナッシュは彼女に笑いかけます。
「あんた、いい人だな!」
「いや、あの…」
オリーブはそれっきり何も言えなくなってしまいました。ただ、心臓がドキドキして、なんだか顔が熱くて。とりあえず手を放してもらわないと手当てを続けられないのですけど、彼女に振りほどくことは出来ませんでした。
ガナッシュはそんなオリーブに気づかずに、
「ソルトに負けてない…。俺は勇者!」
とくり返し唱えていました。
「あの…、」
「やっぱり、ソルトが勇者なのか?」
「えっと…」
「今日こそ勝てると思ったのに…。」
「あのっ!」
独り落ち込んでいたガナッシュにオリーブが声をかけます。手には薬箱と、彼女の体の大きさに合わない長剣を持っています。
「これ、あなたのですよね?」
「俺の剣!」
ガナッシュは自分の相棒(あいぼう)を見て、ガバッと顔をあげました。そして、急に動いたために血の気がひいて、横に倒れます。
「大丈夫ですか?」
慌ててオリーブがその体を支えてあげました。
「くらくらするーちくしょうーソルトめー。」
ガナッシュの出血量は、それはひどいものでした。オリーブは剣を置き、薬箱から包帯を取り出します。
「あの、止血、しますね。」
「あー。」
「その、助けてくれて、ありがとうございました…。」
なんだか彼は不機嫌です。オリーブの言葉も段々自信がなくなっていきます。
「別に、あんたを助けに来たわけじゃないし、それに、」
ガナッシュは口をとがらせて、言いました。
「結局、あんたを助けたのはソルトだ。俺じゃない。」
「そ、それでも…、私のせいでこれだけ傷ついたんです。」
そう言うと、オリーブの目に涙がにじみました。
「え、泣くなよ?」
「ごめんなさい、私のせいで。」
「別にあんたのせいじゃないから!」
大きな声で言うと、びくりとオリーブは体をすくませました。居心地が悪そうにガナッシュも視線をそらして、だまります。
「あの、私、思うんです。」
沈黙が怖くて、またオリーブは話し始めました。
「あなたはさっきからずっと負けた負けたと言っていますけど、それは剣が使えない状態にあったからですし、」
あの時、剣がミントによって移動していたために、ガナッシュは反応が遅れたのです。それをオリーブは見ていました。だから、拾っておいたのです。
「ソルトさんが勇者だというのなら、あなただって、勇者じゃないかと思います。」
だって、私を助けようとしてくれたのだから。と、そう続ける前に、
「ホントか?」
「ひゃっ!」
ガナッシュがオリーブの両手をにぎりしめ、彼女を見つめます。
「俺も、勇者なのか?」
オリーブはなんだか、ガナッシュの目を見ることができなくて、下を向きます。
「は、はい…。」
戸惑いながらも首を縦に振りました。
「そうか。俺はソルトに負けたわけじゃないんだな…!」
とてもうれしそうな声に、オリーブはそっと視線を上に戻しました。手をとったまま、ガナッシュは彼女に笑いかけます。
「あんた、いい人だな!」
「いや、あの…」
オリーブはそれっきり何も言えなくなってしまいました。ただ、心臓がドキドキして、なんだか顔が熱くて。とりあえず手を放してもらわないと手当てを続けられないのですけど、彼女に振りほどくことは出来ませんでした。
ガナッシュはそんなオリーブに気づかずに、
「ソルトに負けてない…。俺は勇者!」
とくり返し唱えていました。
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