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オマケの転生前
出逢ってすぐの頃はきゃんきゃん吠えられていました
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部隊員が、
毎日のように、俺に向かって
「嫌いです。大嫌いです!」
と言う。
近づくなとでも言うように、
口を開けば、そればかり。
今のところ任務に支障はないが、
その様子は、まるで、
きゃんきゃんと吠える犬のようだ、と
内心、そう思っている。
思考回路も単純な阿呆犬。
悪口は毎回同じワード。
すでに聞き飽きているし、
それを気にする、情というものは捨てた。
ただ、
その日は暇だったから、
何気なく、言ったのである。
「違う悪態はつけないのか?」
淡々とした口調は
圧迫感を醸し出すらしい。
「毎回同じだと、『阿呆です』と言っているようなものだぞ」
「阿呆ってなんですかっ!」
「もっと賢くなってもらわないと、隊のリーダーとして、俺は、困るんだが」
机越し、目の前の女性が体をふるふると震わせて俺を睨み付けているのが
視界の端に映った。
「わかりましたよ!」
彼女が机を両手で打つので、
ばん、と音があがったが、俺は作業中の書類に目を落としたままだ。
もう慣れきっている。
「じゃあ、隊長が、うーんと嫌がること、言ってやりますから!」
口では勇ましい部下は、そう啖呵をきった。
俺はペンを取って、書類に修正を加えていく。
彼女の提出したものは、ひどく誤字が多いので、困りものだ。
胸中でため息をつく。
どうしてこの部隊は、こうも難ありな人材が多いのか。
そして、またため息をつく。
ここは、どこにも属せなかった隊員等が集まる場所。
その筆頭が、自分ではないか。
目の前の彼女は、諸刃の剣である。
ちらと盗み見たら、一生懸命考えているのだろう、
腕を組んで、口を固く結んでいる。
こうしていれば、ただの阿呆であるし、
着飾って黙っていれば、それ相応の淑女にも化ける。
「いつまで待てばいい?こっちは添削終わったぞ」
「すぐです!もう、すぐですから!」
彼女は、戦いの場においてその能力を発揮する。
戦いのセンスが、ずば抜けているのだ。
幼少時より叩き込まれた生きる本能。
それは、暴走すればどこまでも、
相手が死ぬという、絶対的安心が保証されるまで続く。
無駄な雑念を払えば、人はどこまでも強くなれる。
一定以上の能力を持てば、なおさら。
本当に、
鋭利な牙を内に秘めた犬のようだ。
手綱さえ上手に取ることが出来れば、使い勝手はよい。
その点はうまくいっている様で、
任務に入ったら吠えることも少なく、
指示は順守するようになった。
瞬間的な判断は、こちらも一目置いている。
「隊長!」
「ん?」
顔をあげれば、
彼女は真剣な顔で、
ああ、そういう顔してたら美人なのに。
中身が伴わない、残念美人。などと思う。
「大好きですっ!」
「そうか」
なんとなく頷いて、
いつもの如く、受け流した。
大嫌いの反対を言ってきたか。
と解釈し、
「これが、やり直し分」
手に持っていた書類を机に乗せる。
違和感。
いつもならあと1、2言吠えるところなのに。
「聞いてるか?」
覗き込めば、
彼女は顔を真っ赤にしていて、
その反応に、
とても不覚なことに、
俺もまた、固まる。
放心していた瞳に光が宿って、
見られていることに気づいた彼女は
書類を取って、
壊れたおもちゃのように、
ドアに激突し、
部屋を出ていった。
完全に忘れていた。
いくら犬のようだとは言っても、
彼女は、女性だ。
「そこで赤くなるなよ、あの阿呆…」
これだから、
こうやって、心を乱されるから、
自分は女嫌いなのである。
毎日のように、俺に向かって
「嫌いです。大嫌いです!」
と言う。
近づくなとでも言うように、
口を開けば、そればかり。
今のところ任務に支障はないが、
その様子は、まるで、
きゃんきゃんと吠える犬のようだ、と
内心、そう思っている。
思考回路も単純な阿呆犬。
悪口は毎回同じワード。
すでに聞き飽きているし、
それを気にする、情というものは捨てた。
ただ、
その日は暇だったから、
何気なく、言ったのである。
「違う悪態はつけないのか?」
淡々とした口調は
圧迫感を醸し出すらしい。
「毎回同じだと、『阿呆です』と言っているようなものだぞ」
「阿呆ってなんですかっ!」
「もっと賢くなってもらわないと、隊のリーダーとして、俺は、困るんだが」
机越し、目の前の女性が体をふるふると震わせて俺を睨み付けているのが
視界の端に映った。
「わかりましたよ!」
彼女が机を両手で打つので、
ばん、と音があがったが、俺は作業中の書類に目を落としたままだ。
もう慣れきっている。
「じゃあ、隊長が、うーんと嫌がること、言ってやりますから!」
口では勇ましい部下は、そう啖呵をきった。
俺はペンを取って、書類に修正を加えていく。
彼女の提出したものは、ひどく誤字が多いので、困りものだ。
胸中でため息をつく。
どうしてこの部隊は、こうも難ありな人材が多いのか。
そして、またため息をつく。
ここは、どこにも属せなかった隊員等が集まる場所。
その筆頭が、自分ではないか。
目の前の彼女は、諸刃の剣である。
ちらと盗み見たら、一生懸命考えているのだろう、
腕を組んで、口を固く結んでいる。
こうしていれば、ただの阿呆であるし、
着飾って黙っていれば、それ相応の淑女にも化ける。
「いつまで待てばいい?こっちは添削終わったぞ」
「すぐです!もう、すぐですから!」
彼女は、戦いの場においてその能力を発揮する。
戦いのセンスが、ずば抜けているのだ。
幼少時より叩き込まれた生きる本能。
それは、暴走すればどこまでも、
相手が死ぬという、絶対的安心が保証されるまで続く。
無駄な雑念を払えば、人はどこまでも強くなれる。
一定以上の能力を持てば、なおさら。
本当に、
鋭利な牙を内に秘めた犬のようだ。
手綱さえ上手に取ることが出来れば、使い勝手はよい。
その点はうまくいっている様で、
任務に入ったら吠えることも少なく、
指示は順守するようになった。
瞬間的な判断は、こちらも一目置いている。
「隊長!」
「ん?」
顔をあげれば、
彼女は真剣な顔で、
ああ、そういう顔してたら美人なのに。
中身が伴わない、残念美人。などと思う。
「大好きですっ!」
「そうか」
なんとなく頷いて、
いつもの如く、受け流した。
大嫌いの反対を言ってきたか。
と解釈し、
「これが、やり直し分」
手に持っていた書類を机に乗せる。
違和感。
いつもならあと1、2言吠えるところなのに。
「聞いてるか?」
覗き込めば、
彼女は顔を真っ赤にしていて、
その反応に、
とても不覚なことに、
俺もまた、固まる。
放心していた瞳に光が宿って、
見られていることに気づいた彼女は
書類を取って、
壊れたおもちゃのように、
ドアに激突し、
部屋を出ていった。
完全に忘れていた。
いくら犬のようだとは言っても、
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「そこで赤くなるなよ、あの阿呆…」
これだから、
こうやって、心を乱されるから、
自分は女嫌いなのである。
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