バカな元外交官の暗躍

ジャーケイ

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第七章 ロスアンジェルス編

グラミー賞授賞式

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 グラミー賞ノミネートの発表が十二月初旬に行われた。ロスに行ける事となった。

 スライとロビーは何時ものように参加しない。昨夜は、ノミネートされたアーティストのために毎年開催される豪華なパーティーに参加した。

 計算上では千人くらいが招待される。参加費は無料だが、入り口で身分証明書の提示が求められる。アーティスト一人につきゲスト一人を連れていける事になっている。

 ドレスコードはブラックタイ。タヨとページ、叔父さんとガイド役として私の四人がパーティーに参加した。会場でノミネーションのティファニー製記念メダルが渡される。

 会場の中は身動きが取れないほど込み合ってきたので、中庭に出た。私には、ページとタヨだけがこの場にふさわしいスターに見えた。彼らの輝きは際立っていた。みんな、彼らは誰、って顔をしている。

今夜は山田君の代わりに、私がスマホでビデオを撮った。

 一夜明けて授賞式当日。日本側からは、今回のプロジェクトにかかわった全員、ジャマイカ側からはジャッキーとサニーがロスのステイプルセンター真横にある、最高級ホテルのロビーに集まっていた。

 みんな、よくズームで顔を合わせていたが、一堂に会するのは約十カ月ぶりだ。叔父さんとサニーが初めて直接顔を合わせたが、この話は長くなるので、今回省かせて頂きます。

 女性たちは全員胸を大きく開いたドレス姿。メイクは自分たちでやったが、ヘアードレッサーだけは現地で都合がつかず、日本から連れて来た。レッドカーペットまで歩いても数分の距離だが、わざわざ遠回りしてもリムジンで乗り付ける事にした。

 これはまあ、しきたりの様なものだ。ページとタヨはレッドカーペットに案内される権利があった。私は何とかページの父と叔父さんも彼らと一緒にレッドカーペットを歩いてもらいたかった。

レッドカーペットを歩ける権利のシールが貼ってあるチケットを二枚よけいに入手しておいた。残りのメンバーは、ここもまあレッドカーペットの一部ではあるが、真横に設けられたロープ一本で区切られた通路を、ページとタヨの居場所を確かめながら歩いた。

 私はプロジェクトの目的でもあったグラミー賞受賞式への出席がかなえられたことに、安堵の気持ちでいっぱいだった。レッドカーペットでは進行方向に向かって右側にメディアのブースがたくさんあった。

 ページとタヨは、フジテレビをはじめ多くのメディアからインタビューを受けた。レッドカーペットの終点、グラミーの背景をバックに報道陣の撮影会があった。ページとタヨは自然とポーズを取れたが、あとの二人はぎこちなく横に立っていた。ただ、みんな自然な笑顔だった。

 マイクロソフトシアターに場所を移した。最優秀レゲエアルバムの発表は51番目、今年は108のカテゴリーがあったので、だいたい全体の半ばあたりだった。

 いよいよ発表の時間が来た。プレゼンテイタ―はウイナーを呼ぶのに間を空けない。瞬間的に、勝者の名前が呼ばれた。

 「グラミーゴーズツー………」

 テレビ放送の関係でアメリカ東部時間に合わせてすべてが進行していた。

午後四時、全員本会場のステイプルセンターにいた。指定された席は一階ステージに向かって右側の最前列。かなりいい席だった。

 12のメインカテゴリーの受賞者がセレブのプレゼンテイタ―から発表され、各カテゴリーの受賞者は長々とスピーチを行った。最後のカテゴリー、ソング・オブ・ジ・イヤーの発表があり、授賞式のテレビ中継も終わった。

 隣の国際会議場に用意されたアフターパーティーに向かった。ものすごい数の人々が列を作ってセキュリティチェックを待っている。幸い早めにパーティー会場に着けた。

 テーブルと椅子を確保できた。大きなステージが二つ作られ、それぞれ中堅どころのアーティストがパフォーマンスを繰り広げている。数か所に設けられた円形のステージでは、ダンサーたちが妖艶に舞っている。

 千代がステージに上って踊りだしてもおかしくないと誰もが思った。私たちは数に限りのある記念品をもらって、早めにパーティー会場を後にした。歩いてホテルに戻った。

 ページとタヨは直ぐにはホテルに戻らず、祭りの後の寂しさを紛らわすかのように、手をつなぎステイプルセンターの近辺を歩いていた。

 「タヨ、僕達はやっと階段を一段上ったところだ。どうしたいこれから?」

 「ページに任せる。私は看護師に戻ってもいいと思ってる」

 「僕も学校に戻ろうかと思ってる。やっぱり医師免許だけは取っておかないとな。当分は学業に専念したい。だから誰とも会わないと思う、お前も含めてな」

 「私、振られたってことか」タヨは下を向いた。

 「そうは言っていない。当分と言っただけだ」

 これまでにない長いキスをした。

 通りゆく人々からは拍手が起こっていた。

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