転生草の約束

おにぎり

文字の大きさ
10 / 10
第二章、試練

10、怪物とか電撃

しおりを挟む
 反応できない……

 目の前に迫る怪物。

 ヒレを大きく広げ、その中に白銀に光るもの。
 いくつもの刃が、俺を狙っている。


 体が動かず、ただ見ることしかできない。

 だが、無理矢理に思考を動かし、スティーヌを怪物に衝突させた。

 突然上空から現れた巨岩に驚いたらしい。

 魚の怪物は距離を取り、こちらを観察し始めた。


 川底が深すぎる。ここではまともに避けることもできない。

 俺は急いで森の方へ戻り、なんとか浅瀬まで戻ることができた。

 怪物はこちらを睨み、唸り声を上げている。
 まるで魚とは思えない声。
 低く響くそれ野獣にも似ていた。


 その時、バサリと音がして、上から葉の塊が落ちた。
 まさか……

 俺は体に異常がないかすぐに確認した。

 するとどうだろうか。
 あの怪物に触れてもいないのに、枝が斬られていたのだ。

 斬られたのは、大きさにして10メートルほど。

 ちょうど目の上の辺りの枝葉を一気に斬られた。

 一体、どうやって刃をいれたんだ。
 何も見えなかった。

 もし反射的にスティーヌを動かさなかったら、今頃俺は……


 というか、あいつはなんなんだ?
 森の中にに生き物なんて、何もいなかった。

 動くものといえば風に揺れる木々だけ。

 それなのに、どうして急にこんなヤバいやつが現れるんだ!
 あいつ、めっちゃデカくないか?

 俺を横にした時と、ほぼ同じ大きさじゃないか。


 怪物は俺をじっと見ていたが、少し体勢を低くした。

 その時見えたのは、まるで蛇のように長い胴体。それを、まるで蛇のようにくねらせている。

 あれは、魚じゃない……蛇に見える。

 いや、キメラかもしれない。


 何か、嫌な予感……
 この形って、蛇が攻撃する時と同じ……


 そう考えた時には遅かった。

 怪物は弾けたように体を伸ばして、俺の根に噛みついた。

 鋭き牙が根を砕き、ヒレの刃が再び白銀に光った。
 怪物は体を捻り、根を俺の体から引き抜こうとしている。

 俺は咄嗟に他の根を振り上げ、怪物の頭に向けて振り下ろした。
 しかしそれでやられるような相手ではなかった。

 素早く俺の攻撃を躱すと、俺の背後に回り込んだ。


 再び根に噛みつこうとするその牙に、俺はスティーヌを振り下ろした。

 まるで腕に止まる蚊を叩き潰すような勢い。

 直後、地震のような地鳴りとともにスティーヌが川底に衝突した。

 波は大荒れ、大河の対岸にまで高い波が打ち上がった。


 これでどうだ!
 怪物よ、この一撃に耐えられるはずがない!


 俺はスティーヌを慎重に引き上げた。だが案の定、あの怪物の姿はなかった。

 クソ。
 逃したか!


 例えあの怪物がどれだけ大きくても、まるで氾濫したようなこの川で、その姿を捉えることは難しい。

 俺は一旦体の状態を確認することにした。



 砕かれた根はその一部が大きく欠損している。もう一度噛まれたら千切れてしまいそうだ。

 枝葉も被害多数で、先ほどよりも多くの枝葉が下流に流れていった。


 まずいな……

 俺が持っている太い根は12本。

 川底で体を支える根が4本として、ケリーの実を持つのが1本。
 この時点で、既に5本が使えない。

 そして砕けた根が1本、その他傷付いた根は3本。


 ということは、攻撃に使える根は4本。多くても7本だ。

 それに攻撃といっても、ただ振り下ろすだけ。
 そんな単純な攻撃で叶う相手か?

 スティーヌはいるが、既に攻撃を避けられている。


 どうする……
 俺は、どうすればいいんだ!

 雷でも降ってくれ!
 きっと感電して死んでしまうだろうに!


 雷……カミナリ?

 そうか、俺は、魔法が使えるじゃないか!
 どうしてもっと早く気づかなかったんだ!


 急いで使えそうな魔法を探した。

 その時、遠くで低く唸る声。
 あの怪物が、ゆっくりとこちらに近づいて来る。

 目は俺を捉えて離さない。次の攻撃で仕留める。そう告げているようであった。


 突如、なんの前触れもなく怪物が水面に潜り込むと、波紋を残して姿を消した。

 だが、それは攻撃中止の合図ではなかった。

 一瞬足元に黒い影が現れたと思った瞬間、大きな牙が、激しく目の前に現れた。


 まずい!
 やられる!


 俺は咄嗟に身を逸らし、なんとかその一撃を逃れる。だがバランスを崩し、体が傾いた。

 それでも、俺は使える限りの根を水面より高く掲げ、怪物に向けて伸ばした。


 再び襲いにかかる怪物。
 牙を剥き出しにし、ヒレを広げた。


 今だ!

 俺は使える限りの魔力を根に集める。

 全ての根の先に魔力が収束していき、やがて臨界点を超えた。
 熱く燃えるような痛みを感じた後、俺は唱えた。


 いっけぇぇ!!【大黒紫雷撃・最上位】!!!


 一点に収束した魔力の塊が7つ!俺が高く掲げた7本の根から、一気に放たれた!

 体を捻り俺に最後の一撃を喰らわせようと襲いかかる怪物。

 怖い。その感情に襲われた瞬間、上空に7つの魔法陣が現れた。



 中央に光の球。

 それが瞬時に収束して消滅したかと思った途端、膨大な量のエネルギーを放出しながら閃光を放つ。

 魔法陣に揺らいだように見えた瞬間、黒紫色の稲妻が飛び出し、怪物の胴体を貫いた。

 空気が叫び、時間が貫かれるような衝撃。
 水面に黒紫色の稲妻が走り、四方八方に広がっていく。


 怪物は悲痛の叫びを上げる。浅瀬でのたうち回り、大きくヒレを動かしている。

 雷鳴は魔法陣の魔力が尽きるまで永遠と繰り返され、怪物が動かなくなってもしばらく降り注いだ。


 全てが終わった時、怪物の表皮は電撃の紋様が浮かび、白目を剥いて死んでいた。


 終わった……のか?

 安堵からか、俺は体を支えるのも忘れ、水面にが折れ込んだ。


 そして、叫んだ。

「よっしゃゃゃー!!倒したぞ!!」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

処理中です...