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同窓会の夜に
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家に着くと二人はしばらくリビングで抱きしめ合った。
ただ抱きしめ合っているだけで、お互いの体温や体に響いてくる鼓動に安心する。
紫恵は逸樹の胸に顔をうずめて『他に何もなくても、いっくんがいてくれるだけで幸せ』と涙を流した。
逸樹は紫恵の髪を優しく撫でながら『しーちゃんがいるから俺は生きていけるんだよ』と言った。
他の誰でもなく、逸樹は紫恵を、紫恵は逸樹を深く愛し、必要としている。
特別なことのない平穏な日常は、二人に幸せを与えてくれる。
これ以上の幸せがどこにあるだろう?
つらいことも悲しいことも一緒に乗り越えてきた温かい手を離したくないと、紫恵は改めて思った。
それから二人で入浴を済ませベッドに入った。
逸樹は紫恵を腕枕して、紫恵が気になっていたこれまでのことを順を追って話した。
残業が終わった後、会社帰りに相談に乗って欲しいと円に言われ仕方なくカフェに入ったことや、その相談の内容。
希望を公園へ連れていった時に偶然香織と出会い、一緒にりぃの散歩をしたことや、香織から聞いた遠距離恋愛中の彼氏の話。
そして大阪へ出張している時に、先輩たちにいかがわしい店に連れ込まれそうになったこと。
店先で客引きをしていた若い女性に、腕に抱きつかれたこと。
必死で断って一足先に宿泊先のホテルへ戻ったこと。
そんな先輩たちがいると話すと、この先また紫恵を不安にさせてしまうのではないかと思い言い出せなかったこと。
事の真相を知った紫恵は、少しばつの悪そうな顔をしていた。
「若くてかわいい女の子がすごいサービスしてくれるって……。いっくんはその店に入りたいとは思わなかったの?」
紫恵がためらいがちに尋ねると、逸樹は紫恵を抱きしめた。
「俺がそんなことしたいのはしーちゃんだけ。他の子には触れたくもないし触れられたくもない」
キッパリと言い切る逸樹に、紫恵は嬉しそうに笑ってキスをした。
「そういういっくんだから好き」
「俺もしーちゃんが好き」
逸樹は満足そうに笑って、紫恵を強く抱きしめた。
「しーちゃんは?さっきのあいつ、誰?」
逸樹に尋ねられ、紫恵は同窓会が終わる間際に起こった出来事を話した。
松山が結婚した理由、妻と子供への愛情が感じられない松山のひどい言葉、そして今でもナナより紫恵が好きだから付き合おうと言われたこと。
酔って思うように力が入らず、どこかへ連れて行かれそうになっても逃げ出せなかったこと。
紫恵の話を聞きながら、逸樹は顔をひきつらせている。
「お互いに結婚してるから割りきった関係で、だって。私が結婚生活に飽きて刺激を欲しがってる頃だなんて言うの。ひどいでしょ?」
「あいつは許せん……。俺の大事なしーちゃんに勝手に触りやがって……」
「抱きしめられてすごくイヤだった。お酒のせいとかじゃなくて、気持ち悪くて吐きそうだった」
紫恵がげんなりした顔でそう言うと、逸樹は勝ち誇った顔をした。
「当たり前だよ。しーちゃんに触っていいのは俺だけだもんな」
「うん、いっくんじゃなきゃイヤだよ」
「俺もしーちゃんじゃなきゃイヤだ」
手を握り見つめ合って優しいキスをした。
ほんの少し照れくさくて、二人して思わず笑ってしまった。
「私はいっくんが好きだから結婚したし、いっくんに触れられるのも幸せだけど……結婚してもそうでない人もいるんだね」
紫恵の意味深な言葉に、逸樹は首をかしげた。
「結婚してもそうでないって、どういうこと?」
「うん……。同窓会の前に、特に仲良しだった4人でランチに行ったんだけど、その時にね……」
ただ抱きしめ合っているだけで、お互いの体温や体に響いてくる鼓動に安心する。
紫恵は逸樹の胸に顔をうずめて『他に何もなくても、いっくんがいてくれるだけで幸せ』と涙を流した。
逸樹は紫恵の髪を優しく撫でながら『しーちゃんがいるから俺は生きていけるんだよ』と言った。
他の誰でもなく、逸樹は紫恵を、紫恵は逸樹を深く愛し、必要としている。
特別なことのない平穏な日常は、二人に幸せを与えてくれる。
これ以上の幸せがどこにあるだろう?
つらいことも悲しいことも一緒に乗り越えてきた温かい手を離したくないと、紫恵は改めて思った。
それから二人で入浴を済ませベッドに入った。
逸樹は紫恵を腕枕して、紫恵が気になっていたこれまでのことを順を追って話した。
残業が終わった後、会社帰りに相談に乗って欲しいと円に言われ仕方なくカフェに入ったことや、その相談の内容。
希望を公園へ連れていった時に偶然香織と出会い、一緒にりぃの散歩をしたことや、香織から聞いた遠距離恋愛中の彼氏の話。
そして大阪へ出張している時に、先輩たちにいかがわしい店に連れ込まれそうになったこと。
店先で客引きをしていた若い女性に、腕に抱きつかれたこと。
必死で断って一足先に宿泊先のホテルへ戻ったこと。
そんな先輩たちがいると話すと、この先また紫恵を不安にさせてしまうのではないかと思い言い出せなかったこと。
事の真相を知った紫恵は、少しばつの悪そうな顔をしていた。
「若くてかわいい女の子がすごいサービスしてくれるって……。いっくんはその店に入りたいとは思わなかったの?」
紫恵がためらいがちに尋ねると、逸樹は紫恵を抱きしめた。
「俺がそんなことしたいのはしーちゃんだけ。他の子には触れたくもないし触れられたくもない」
キッパリと言い切る逸樹に、紫恵は嬉しそうに笑ってキスをした。
「そういういっくんだから好き」
「俺もしーちゃんが好き」
逸樹は満足そうに笑って、紫恵を強く抱きしめた。
「しーちゃんは?さっきのあいつ、誰?」
逸樹に尋ねられ、紫恵は同窓会が終わる間際に起こった出来事を話した。
松山が結婚した理由、妻と子供への愛情が感じられない松山のひどい言葉、そして今でもナナより紫恵が好きだから付き合おうと言われたこと。
酔って思うように力が入らず、どこかへ連れて行かれそうになっても逃げ出せなかったこと。
紫恵の話を聞きながら、逸樹は顔をひきつらせている。
「お互いに結婚してるから割りきった関係で、だって。私が結婚生活に飽きて刺激を欲しがってる頃だなんて言うの。ひどいでしょ?」
「あいつは許せん……。俺の大事なしーちゃんに勝手に触りやがって……」
「抱きしめられてすごくイヤだった。お酒のせいとかじゃなくて、気持ち悪くて吐きそうだった」
紫恵がげんなりした顔でそう言うと、逸樹は勝ち誇った顔をした。
「当たり前だよ。しーちゃんに触っていいのは俺だけだもんな」
「うん、いっくんじゃなきゃイヤだよ」
「俺もしーちゃんじゃなきゃイヤだ」
手を握り見つめ合って優しいキスをした。
ほんの少し照れくさくて、二人して思わず笑ってしまった。
「私はいっくんが好きだから結婚したし、いっくんに触れられるのも幸せだけど……結婚してもそうでない人もいるんだね」
紫恵の意味深な言葉に、逸樹は首をかしげた。
「結婚してもそうでないって、どういうこと?」
「うん……。同窓会の前に、特に仲良しだった4人でランチに行ったんだけど、その時にね……」
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