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同窓会の夜に
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「何言ってるの?冗談やめてよ」
これ以上話したくなくてその場を離れようとすると、松山は紫恵の体を抱き寄せた。
「冗談じゃないって。紫恵、もう一度俺と付き合わない?」
「やだ……離して」
紫恵が身をよじってその手から逃れようとしても、松山は更に強い力で紫恵を抱き寄せる。
「お互い結婚してるから、そこは割りきった関係でさ。紫恵もそろそろ結婚生活に飽きて刺激が欲しくなる頃だろ?」
逸樹以外の男になんて触れられたくない。
執拗に紫恵を抱きしめる松山の手の感触と、顔のすぐそばで感じる酒の匂いと息遣いに、吐き気がしそうなほどの嫌悪感が込み上げた。
「離して!!」
紫恵は松山の腕の中で、酔って力の入らない体をよじって必死にもがく。
「紫恵、酔っちゃったのかぁ?なんなら、これから二人きりになれる所にでも行く?」
松山は強引に紫恵の手を引いて歩き出した。
強い力で掴まれた腕を振りほどくことができず、紫恵は引きずられるようにして歩く。
「イヤだ……離してよ……」
どうしていいのかわからなくなった紫恵の目から涙がこぼれ落ちた時、後ろから背の高い誰かの腕が伸びてきて、紫恵を抱きしめた。
そしてもう片方の手で松山の腕を強く掴む。
驚いて振り返った松山が目を見開き青ざめた。
「紫恵に触るな」
振り向いて見上げた紫恵の目に、また涙が溢れた。
「いっくん……」
逸樹は松山の手から奪い返した紫恵を強く抱き寄せた。
「二度と俺の紫恵に近付くな」
松山に向かって吐き捨てるようにそう言うと、逸樹は紫恵の手を引いて歩き出した。
逸樹は何も言わないけれど、紫恵にはその背中が怒っているように見えた。
路上パーキングに停めた車の前まで来ると、逸樹は立ち止まり黙って車の鍵を開けた。
そして助手席のドアを開け、紫恵に向かって乗れと無言で促す。
紫恵が助手席に座りシートベルトを締めると、逸樹は何も言わずに車を発進させた。
車は実家へは向かわず自宅へと向かっている。
車内に広がる重い沈黙の中、紫恵のすすり泣く声だけが響いた。
しばらくすると逸樹はコンビニに立ち寄った。
戻ってきた逸樹は黙ったまま紫恵にミネラルウォーターを差し出した。
紫恵も黙ってそれを受け取り、キャップを開けて水を口に含んだ。
「……いっくん、疑ったりしてごめんね」
「……俺もひどいこと言ってごめん」
逸樹は紫恵の頭をポンポンと軽く叩いて、照れくさそうに笑った。
「簡単に他の男に連れ去られそうになってんじゃないよ。しーちゃんは俺の大事な奥さんなんだから」
「ごめん……。ありがとう、助けてくれて……」
「帰ろうか」
「うん……」
逸樹は車のエンジンを掛け、ゆっくりと車を発進させた。
前を向いて運転しながら、逸樹は左手でそっと紫恵の手を握った。
「しーちゃん……どこにも行くなよ」
逸樹の大きな手の温もりと甘く優しい言葉に、また紫恵の目から涙が溢れて頬を伝う。
「うん……行かない……。ずっといっくんのそばにいる……」
逸樹は前を向いて運転しながら、涙で濡れた紫恵の頬を左手の甲でそっと拭った。
「泣くなよ、しーちゃん……」
「だって……いっくんが……」
紫恵は両手で涙を拭う。
「泣くのは俺が抱きしめられる時にして。今はこれくらいしかしてあげられないから」
逸樹は左手で紫恵の頭を優しく撫でた。
「家に着いたら……思いきり泣かせてくれる?」
「いいよ。しーちゃんの気が済むまで」
逸樹は誰に対しても優しい。
だからモテるのも仕方ないのかも知れない。
そんな優しい逸樹だから好きになったのは紫恵も同じだ。
逸樹はいつも紫恵にだけは特別甘くて優しい。
いつか逸樹が去っていくかもなどと考え、勝手に不安になって怯えるのはもうやめようと紫恵は思った。
これ以上話したくなくてその場を離れようとすると、松山は紫恵の体を抱き寄せた。
「冗談じゃないって。紫恵、もう一度俺と付き合わない?」
「やだ……離して」
紫恵が身をよじってその手から逃れようとしても、松山は更に強い力で紫恵を抱き寄せる。
「お互い結婚してるから、そこは割りきった関係でさ。紫恵もそろそろ結婚生活に飽きて刺激が欲しくなる頃だろ?」
逸樹以外の男になんて触れられたくない。
執拗に紫恵を抱きしめる松山の手の感触と、顔のすぐそばで感じる酒の匂いと息遣いに、吐き気がしそうなほどの嫌悪感が込み上げた。
「離して!!」
紫恵は松山の腕の中で、酔って力の入らない体をよじって必死にもがく。
「紫恵、酔っちゃったのかぁ?なんなら、これから二人きりになれる所にでも行く?」
松山は強引に紫恵の手を引いて歩き出した。
強い力で掴まれた腕を振りほどくことができず、紫恵は引きずられるようにして歩く。
「イヤだ……離してよ……」
どうしていいのかわからなくなった紫恵の目から涙がこぼれ落ちた時、後ろから背の高い誰かの腕が伸びてきて、紫恵を抱きしめた。
そしてもう片方の手で松山の腕を強く掴む。
驚いて振り返った松山が目を見開き青ざめた。
「紫恵に触るな」
振り向いて見上げた紫恵の目に、また涙が溢れた。
「いっくん……」
逸樹は松山の手から奪い返した紫恵を強く抱き寄せた。
「二度と俺の紫恵に近付くな」
松山に向かって吐き捨てるようにそう言うと、逸樹は紫恵の手を引いて歩き出した。
逸樹は何も言わないけれど、紫恵にはその背中が怒っているように見えた。
路上パーキングに停めた車の前まで来ると、逸樹は立ち止まり黙って車の鍵を開けた。
そして助手席のドアを開け、紫恵に向かって乗れと無言で促す。
紫恵が助手席に座りシートベルトを締めると、逸樹は何も言わずに車を発進させた。
車は実家へは向かわず自宅へと向かっている。
車内に広がる重い沈黙の中、紫恵のすすり泣く声だけが響いた。
しばらくすると逸樹はコンビニに立ち寄った。
戻ってきた逸樹は黙ったまま紫恵にミネラルウォーターを差し出した。
紫恵も黙ってそれを受け取り、キャップを開けて水を口に含んだ。
「……いっくん、疑ったりしてごめんね」
「……俺もひどいこと言ってごめん」
逸樹は紫恵の頭をポンポンと軽く叩いて、照れくさそうに笑った。
「簡単に他の男に連れ去られそうになってんじゃないよ。しーちゃんは俺の大事な奥さんなんだから」
「ごめん……。ありがとう、助けてくれて……」
「帰ろうか」
「うん……」
逸樹は車のエンジンを掛け、ゆっくりと車を発進させた。
前を向いて運転しながら、逸樹は左手でそっと紫恵の手を握った。
「しーちゃん……どこにも行くなよ」
逸樹の大きな手の温もりと甘く優しい言葉に、また紫恵の目から涙が溢れて頬を伝う。
「うん……行かない……。ずっといっくんのそばにいる……」
逸樹は前を向いて運転しながら、涙で濡れた紫恵の頬を左手の甲でそっと拭った。
「泣くなよ、しーちゃん……」
「だって……いっくんが……」
紫恵は両手で涙を拭う。
「泣くのは俺が抱きしめられる時にして。今はこれくらいしかしてあげられないから」
逸樹は左手で紫恵の頭を優しく撫でた。
「家に着いたら……思いきり泣かせてくれる?」
「いいよ。しーちゃんの気が済むまで」
逸樹は誰に対しても優しい。
だからモテるのも仕方ないのかも知れない。
そんな優しい逸樹だから好きになったのは紫恵も同じだ。
逸樹はいつも紫恵にだけは特別甘くて優しい。
いつか逸樹が去っていくかもなどと考え、勝手に不安になって怯えるのはもうやめようと紫恵は思った。
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