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恋と喧嘩は一人でできぬ
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帰り道から少しだけ外れた道沿いにある公園に足を踏み入れた。
頼りない外灯にぼんやりと照らされ静まり返った真夜中の公園は、真っ暗な夜の海にぽっかりと浮かぶ名もない小島のようだ。
今日はマスターがいるから大丈夫だけど、この時間に一人でここに立ち入る勇気はない。
私はマスターと並んでベンチに座り、公園の手前にある自販機でマスターが買ってくれた缶コーヒーを飲んだ。
あったかいな。
コーヒーのあたたかさまでもが身に染みる。
「順平と同居始めてもうじき1か月だっけ?うまくやれてる?」
急にキスされたり、押し倒されて襲われそうになったなんて、さすがに言えないな。
当たり障りなく返事しておこう。
「お互いに干渉しないという点ではうまくやれてると思いますよ。順平はずっとあんな感じで、家でもほとんど会話しません。だけどそれくらいがちょうどいいのかなって」
「順平は掴み所がないと言うか、人に心を開かないからね。自分をさらけ出すような事もしないし執着もしない。おまけに素直じゃない」
「確かに素直じゃないですね。いつもえらそうでわがままで、基本的に上から目線です」
私の好きだった順平とは正反対だな。
なのに順平はなぜ『順平』を名乗っているんだろう?
順平のふりをするつもりなら、少しくらい本物の順平に似せればいいのに。
「朱里ちゃん、意外と順平の事わかってるんだなぁ」
マスターがポツリと呟く。
昔はともかく、今の順平の事は私にはよくわからない。
それなのにマスターはなぜそう思ったんだろう?
「そうですか?順平の事なんて全然わかりませんよ。ろくに話しもしないし」
「そうかぁ。朱里ちゃんにはなんでも話せる相手はいるの?」
私はコーヒーを飲みながら考える。
なんでも話せる相手はいるだろうか?
思えば私はいつも、どんなに親しい友人にも自分の気持ちをすべてさらけ出すような事はなかったと思う。
部分的には話せても、どこかで自分を隠してきた気がする。
「なんでも、って言われると……いないかも」
「朱里ちゃんはなんでも一人で溜め込むタイプなのかな。今日も何かあっただろ?」
マスターはいつも私を気にかけてくれているんだと思うと嬉しい反面、心配をかけてしまった事が申し訳ない。
今日知ってしまった事を話すともっと心配をかけてしまうかも知れないけれど、自分の胸の内に秘めておくのは苦しくて、気が付けば私はマスターに壮介と紗耶香の事を打ち明けていた。
マスターは何度もうなずきながら真剣に話を聞いてくれた。
すべてを話し終わると、なんとなく胸のつかえが取れたような気持ちになった。
頼りない外灯にぼんやりと照らされ静まり返った真夜中の公園は、真っ暗な夜の海にぽっかりと浮かぶ名もない小島のようだ。
今日はマスターがいるから大丈夫だけど、この時間に一人でここに立ち入る勇気はない。
私はマスターと並んでベンチに座り、公園の手前にある自販機でマスターが買ってくれた缶コーヒーを飲んだ。
あったかいな。
コーヒーのあたたかさまでもが身に染みる。
「順平と同居始めてもうじき1か月だっけ?うまくやれてる?」
急にキスされたり、押し倒されて襲われそうになったなんて、さすがに言えないな。
当たり障りなく返事しておこう。
「お互いに干渉しないという点ではうまくやれてると思いますよ。順平はずっとあんな感じで、家でもほとんど会話しません。だけどそれくらいがちょうどいいのかなって」
「順平は掴み所がないと言うか、人に心を開かないからね。自分をさらけ出すような事もしないし執着もしない。おまけに素直じゃない」
「確かに素直じゃないですね。いつもえらそうでわがままで、基本的に上から目線です」
私の好きだった順平とは正反対だな。
なのに順平はなぜ『順平』を名乗っているんだろう?
順平のふりをするつもりなら、少しくらい本物の順平に似せればいいのに。
「朱里ちゃん、意外と順平の事わかってるんだなぁ」
マスターがポツリと呟く。
昔はともかく、今の順平の事は私にはよくわからない。
それなのにマスターはなぜそう思ったんだろう?
「そうですか?順平の事なんて全然わかりませんよ。ろくに話しもしないし」
「そうかぁ。朱里ちゃんにはなんでも話せる相手はいるの?」
私はコーヒーを飲みながら考える。
なんでも話せる相手はいるだろうか?
思えば私はいつも、どんなに親しい友人にも自分の気持ちをすべてさらけ出すような事はなかったと思う。
部分的には話せても、どこかで自分を隠してきた気がする。
「なんでも、って言われると……いないかも」
「朱里ちゃんはなんでも一人で溜め込むタイプなのかな。今日も何かあっただろ?」
マスターはいつも私を気にかけてくれているんだと思うと嬉しい反面、心配をかけてしまった事が申し訳ない。
今日知ってしまった事を話すともっと心配をかけてしまうかも知れないけれど、自分の胸の内に秘めておくのは苦しくて、気が付けば私はマスターに壮介と紗耶香の事を打ち明けていた。
マスターは何度もうなずきながら真剣に話を聞いてくれた。
すべてを話し終わると、なんとなく胸のつかえが取れたような気持ちになった。
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